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11月読書まとめ【面白い本続々登場の月】

どうしても好きな作家さんばかりを読み続ける傾向にある私ですが、人からの薦めや書店の選書に従い、新たなお気に入りを見つけられた11月。

全15冊の中から個人的におすすめの3冊

1. 秘密
2. ガソリン生活
3. キネマの神様

2020年11月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5979ページ
ナイス数:353ナイス


■ガソリン生活 (朝日文庫)
最高!伊坂さん作品の中で所謂メジャーではないのかもしれないが、個人的には上位に入る程好き。
車が感情を持ち会話をし、“車社会”がある。緑デミが主視点となり、隣のザッパや様々な車種が軽快に会話を繰り広げる。持ち主家族への信頼や貨物列車への尊敬と願掛けなど愉快さ満点。登場“人物”もまた個性的で面白く、現代社会の闇の部分といえる事件も車&人間で軽やかに解決する。車と人間それぞれにしか知り得ない部分があるのがお互いの愛情を際立たせる。由紀夫と4人のファーザーが出てくるのも胸熱だし、10年後のエピローグもまた感動。
読了日:11月29日 著者:伊坂幸太郎

■キネマの神様 (文春文庫)
とても良かった。小説の良さがぎゅっと詰まった一冊。それは映画という身近な素晴らしい娯楽と、情景が浮かぶリアルな名画座と、インターネットの世界で起きる奇跡、家族や同僚との関わり合い、全てがあってこそ。
原田マハさんの描く働く女性は本当に格好良い。歩、高峰さん、清音もまさに。管理人として支えた興太や新村も功労者で、テラシンと母も最高。何よりゴウちゃんとローズバッドのやりとりに涙する。キネマの神様を通じて変わっていく彼らが愛おしかった。でもまさかあんな結末になるとは想像していなかったな。何度でも読み返したい。
読了日:11月28日 著者:原田 マハ

■おもかげ (講談社文庫)
浅田次郎さん初読。「涙なくして読めない」との帯の通り温かくて優しい物語。
定年を迎え、送別会の帰りに丸ノ内線内で倒れ搬送された竹脇正一の人生と家族が描かれる。生死を彷徨うとき人生が走馬灯のように思い出されるというが、まさにそれが正一に訪れる。夢(?)の中で出会う女性と彼との関係に気付いたときの感動。戦争の時代を文字でしか知り得ないとしても、鮮明に想い描くことができ辛くなる。そして榊原さんと児島さんの存在感が素晴らしい。
解説まで読み、まだ聞いたことのない両親のこれまでの人生を知りたくなった。
読了日:11月27日 著者:浅田 次郎

■対岸の彼女 (文春文庫)
感動とは違う、前向きになれるとも違う、何とも複雑な読了感。ラストの再出発よりも、作中の人間関係にある鬱々した印象が強く残ってしまったからかも。
主婦の小夜子も社長の葵も、女子校での苦い記憶がり大学も一緒。初めて出会った時はお互いの過去すべては知らないものの、ちょっとした共通点であっという間に距離を縮めることはある。学生時代あんなに仲良かったのに、卒業と同時にいとも簡単に疎遠になる、そんな経験を思い出す。
主人公達は私とは異なる境遇にいるものの身近でリアリティのある内容が、しばらく頭から離れそうにない。
読了日:11月25日 著者:角田 光代

■Mr.Children 道標の歌
Mr.Childrenファンにはたまらない一冊。
本音を言うと、もっとメンバーたちの素顔や曲の解説を期待していたのだけれど、読み進めるうち、彼らの30年近い歴史を一冊にまとめるのは不可能だと納得。名曲の誕生したときのエピソード、世間でミスチル現象といわれていた頃の様子、セルフプロデュースへ至るまで、時間経過を追ってミスチルを改めて知ることができて良かった。
「しるし」のdarlingの件は知らなかった!個人的な出来事をマスに向けてポピュラリティ持たせる桜井さんの詞、4人の音、これからの進化も楽しみだ!
読了日:11月22日 著者:小貫 信昭

■ドミノ (角川文庫)
見事なドミノ!面白かった。
本編前の「登場人物から一言」を見ているだけでまずワクワクした。実際読み始めて最初の段階では、登場人物の多さに少し疲弊したものの、それもあっという間になくなり引き込まれた。
こんなに多い登場人物たちが一気に繋がり絡み合い後半にかけて面白く加速していくので、あれよあれよという間に読了。
とくに好きなのは、加藤えり子、田上優子、そして部長。普通のOLと会社員、定年後の年配者たちが素性(?)を強みにドタバタを解決していく様が痛快!これぞエンタテイメント小説!
続編も読みたい。
読了日:11月21日 著者:恩田 陸

■秘密 (文春文庫)
この読了後の気持ちをなんと表現したら良いのか。感動はもちろん寂しさや切なさ、ある種の充足感がある。
一つの家族を取り巻いた事故と死、被害者としての苦悩、さらには隠された秘密とともに変わる環境と成長。物語にたくさんの要素と見所が詰まっている作品だった。憑依という現象はどこか非現実的なのに、平介と直子の心の機微の描写が繊細で素晴らしく現実味のある家族の物語になっている。直子が必死に藻奈美として生きる姿、藻奈美が出てきてからのラストスパートはただ感動する他なかった。「手紙」に続き心に刺さりまくる一冊だ。
読了日:11月18日 著者:東野 圭吾

■手紙 (文春文庫)
これが現実になったとき自分は何をどうすることができるだろう。読後、まず考えたこと。
直貴だったら、由美子だったら、緒方だったら、自分はどうするだろう。そして彼らと会ったとき差別をせずにいられるのか、何が正しい彼らに対する接し方なのか。さらに、どれだけ弟想い、家族想いの“優しい人”でも、咄嗟に強盗殺人を犯す可能性と狂気は誰にでもあるのか。
物語はただ重く苦しい。緒方さんが言う「これで終わりにしよう。お互い、長かったな」という言葉、最後の慰問コンサートの歌い出しのシーン、忘れられない。
読了日:11月16日 著者:東野 圭吾

■アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
再読。
何回読んでもやりきれない。勧善懲悪ハッピーエンドとはいえないところ、そこがこの物語の深さであり面白さなんだけど、やっぱりやりきれない。
河崎が写真の裏に残したメッセージ、琴美が最期に見たドルジの最期、そのどれもに希望を見いだしたい。ブータンの仏教の教えの通り、みんなが生まれ変わることを願っているんだから、どうかまた3人で会っていてほしいな。
ダックスフンドの女性客が、殴られて本当に色々あったのち、麗子さんの店で働くようになった経緯は気になるところ。
読了日:11月14日 著者:伊坂 幸太郎

■罪の声 (講談社文庫)
映画鑑賞後に初読み。映画のシーンを思い出しながら読み進めた。
グリコ森永事件を題材とした本作。実際の事件のことは、当時の印象は年齢的に全く無く、後に未解決事件として知った程度。しかし実際にその事件の概要を知ると、社会への影響力の大きさや異常さに驚く。ましてやこの本で描かれているような、事件に巻き込まれた被害者としての子どもたちの存在に胸が痛くなった。
どこまでが史実でどこからがフィクションか、詳細については分からないが、こういった事件に巻き込まれて人生が変わってしまった人達がいることは確かか。
読了日:11月14日 著者:塩田 武士

■ジャイロスコープ (新潮文庫)
全7作品の短編集。最後の「後ろの声がうるさい」で前6作が少しずつリンクしてくる。
伊坂さんの作品の中では、PKが個人的に理解が難しかったが、「ギア」「二月下旬から三月上旬」もそんな印象。いまいち物語に入り込めなかったからか理解が乏しく終わってしまった自分に残念な気持ちが残る。「浜田青年ホントスカ」は最後のオチに小声ながら声を上げてしまった。
好きなのは「一人では無理がある」「彗星たち」の2作。サンタクロースや鶴田さんの一生という、想像と現実がごちゃまぜになって温かさがある部分が何とも言えず良かった。
読了日:11月08日 著者:伊坂 幸太郎

■極め道―爆裂エッセイ (光文社文庫)
三浦しをんさんのエッセイを初読。本作は三浦しをんさんにとっても初のエッセイ、しかも大学在学中に書いたものも含まれている。
身近な出来事と妄想が繰り広げられた、楽しく明るいエッセイ。20年前はこんな感じだったんだと、何冊か読了した小説からは結びつかない著者のキャラクター。でも学生の頃からこんな引き込む文章を書いていたことや、言葉のセンスがやはり素敵だなと思う。
多くの小説の登場人物たちも、壮大な妄想から生まれたのだろうか。大好きなキャラクターが多いので気になるところ。
読了日:11月07日 著者:三浦 しをん

■総理の夫 First Gentleman 新版 (実業之日本社文庫)
本当に面白くて“心が震える”を体感し、感動した。
かつてのインタビューで原田マハさんがこの本について、「いずれこういう総理が現れてくれるという予言の書」と語ったとある。まさに理想の総理であり女性で、とにかく格好良いのが相馬凛子。原田マハさんが描く女性が本当に好き。
菅内閣が99代、第一次相馬内閣は111代。現実社会で2060年頃、この物語が現実にと願うばかり。
個人的にはスピーチライターの久遠久美の登場に思わず興奮。来年の映画公開も待ち遠しいな。
読了日:11月06日 著者:原田 マハ

■燃える波 (中公文庫)
著者、村山由佳さんのリアリティがありすぎるお話のひとつであろう本作。
「ダブルファンタジー」や「ラヴィアンローズ」のような、おそらく実体験がかなり影響しているのかな、という恋愛かつお仕事小説。
水原瑤子がただただかっこ良く素敵な、憧れる人間性の持ち主。あんな人が近くにいてくれたら良いな。私生活が仕事に及ぼす影響、またその逆も然り、人間関係ってやっぱり難しい。
最後、ラジオの選曲が物語のエンディングにも相応しくとても良かった。Fight Song、大好きな曲。
読了日:11月03日 著者:村山 由佳

■オーデュボンの祈り (新潮文庫)
再読。
やっぱり面白い。他の作品とリンクしてる登場人物たちの世のデビューでもある本作。ものすごく不思議だけど妙に現実社会とも通ずるところがある。優午や桜の存在はどこか現実味がないけれど、城山のサイコパスぶりや音楽を楽しむ性質はやはり人間社会特有のものかな。
この先またふと、荻島に足を踏み入れたく読み返したくなるだろうな。
読了日:11月02日 著者:伊坂 幸太郎


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