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アデリータ@小田急相模原

「アデリータ」はギターの曲名。この曲の愛らしさにあやかってお店の名前をつけたのだそう。

シナモンの香りが匂い立つカフェ・カプチーノを、おばあさんの店員さんが運んできた。

小さなカップに入ったカフェ・カプチーノが仕事で疲れた心と体に沁みていく。
社会はどうにもこうにもならないことが多い。だからこそ、一人で落ち着くための小さな箱に入って一息つく必要がある。

シナモンスティックの使い方がわからなくて、店員さんに聞いた。聞いたら笑って教えてくれた。普通はわかるのかもしれない。初めは、こんなこと誰でも知っているのかもしれないと思って聞くのを躊躇った。
だけど、わからないことは人に聞くなりなんなりして知っていくしかない。それに、世界は意外と優しさに満ちていて、27歳にもなってシナモンスティックの使い方を聞くアホな私に対してちゃんと答えをくれるひとがいる。

シナモンスティックの使い方は別に知らなくてもいいこと。取るに足らないこと。だけど、そんな取るに足らないことが日常の余白を埋めてくれる。
世の中には、まだまだ知らないことがたくさんある。

マッチングアプリを開く。にっちもさっちも行かずにスワイプしては溜息を吐く。
物事はなるようにしかならなくて、今みたいに日常の余白を少しずつ優しさで満たしていけばいつか幸せになれるかもしれないと思っている。

私も「アデリータ」みたいに、愛らしさを身につけたい。拗らせるのではなくて(人生色々あるので拗らせたり腐ることがある)いつも笑顔でいれば、自分自身を強く持っていれば、自分自身を愛していれば、周りの誰かのことも愛せるのだと思う。
「かわいい」って、何だろう。

これから彼氏もいなくて、仕事も変わってどうなるんだろう。
そう考えても仕方がないし、なんだかんだ物事はなんとかなるし、日々はゆるやかに紡がれている。
だから、人生について考えるのは今はやめて、浮かび上がってきたシナモンを見つめてのんびり店内の隅っこでカプチーノを啜ろうと思った。

人生の旅路に迷ったら、喫茶店に来る。

ただただ感じて息を吸って生きていくことが何よりも愛おしく、幸せだと思えますように。
何者にもなれないと感じたら、心の声を整理してこの場所に来れますように。

気がつけば日は暮れなずんでいる。
薄暗い空間で飲む、おばあさんが優しく磨いたカップに淹れられたカプチーノは美味しかった。
店内のアイビーが絡まった照明が、私のことを照らしていた。

物や空間や人、この世のすべてのものに意味は宿っている。

だからこそ、私はすべてを味わって生きていきたい。

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