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【読書メモ】『レスポンシブル・カンパニー』(著:イヴォン・シュイナード,ヴィンセント・スタンリー / 訳:井口耕二)

ガンプラのマテリアルリサイクルは、回収に余分な負担をかけず、回収したランナーをそのまま粉砕して再利用することで、世界で一番安価にリサイクルを実現することを目指しています。

出典:「ガンプラリサイクルプロジェクト」
(「バンダイスピリッツ公式ホームページ」より抜粋)

家の片づけをしがてら、ランナーもいっぱいになってきたなぁ、、そういやエコプラも積んであったよなぁ、、なんて考えながら思い出したのが『レスポンシブル・カンパニー』との一冊。

我々は、返せないものを自然から借りてしまった

自然が再生できる範囲に自然の消費を抑える

出典:『レスポンシブル・カンパニー』

題材となるのは、「パタゴニア」という主にアウトドア関連の製品を取り扱っているアメリカの会社です。それ故にか「我々は、返せないものを自然から借りてしまった」として、広い意味での「社会」、、自然、環境、地域、顧客、従業員など、企業活動に関わる「全てに対して責任を果たしていくこと」を、ミッションステートメントとしています。

自分の環境負荷を知る、改善を心がける、得た知識を共有する

出典:『レスポンシブル・カンパニー』

その上で、それを実現していくためには「自分の環境負荷を知る、改善を心がける、得た知識を共有する」必要があるとして、今までの大量生産&大量消費は企業の利益には直結するが、ただそれだけであって、今後はその他の環境(労働、自然、地域等々)へのダメージを考えていかねばならないのではないかと、言われてみれば納得のいく内容です。

簡単な項目では、経験と自信が得られる。大きな問題に挑戦し、挫折や失敗を乗り越えれば、賢く、また、強くなれるし、他者の役に立てるようにもなる。

出典:『レスポンシブル・カンパニー』

といっても、会社のはじまりからその境地に至っていた訳ではなく、そこに行き着くには様々な試行錯誤があり、失敗をしながらも、継続して新しい価値観や知識を入れながら、徐々に形成していったようで、本書はその経緯も踏まえて丁寧に紐解かれています、なるほど。

儲かる会社にしたいのであれば、いまいる社員が一生懸命、喜んで働くようにするのが得策

仕事を通じて元気になりたいと願うものだ

トップだけでなく、現場の力も結集しなければ事業戦略の成功はおぼつかない

出典:『レスポンシブル・カンパニー』

なんて一見すると、なんとも重い「社会的責任」と真摯に向き合っているような会社なのですが、その一方では「仕事を通じて元気になりたいと願う」として、社員をサーフィンに行かせようなんて精神も持つ、なんともフランクな会社だったりもします。どこまで意識しているのかは不明ですが「儲かる会社にしたいのであれば、いまいる社員が一生懸命、喜んで働くようにするのが得策」というのを、ごくごく自然体に実現しているような会社なのかなとも、感じました。

大地の果てが有限である以上、安価な労働力の供給元にも限りがあります。未だに、消費させたいモノは溢れかえり、その消費市場は無限であるかの如く喧伝されていますが、徐々に「いまの生活給はもう少し基準が低く、四人家族を支えられる額の半分をひとりが稼げるようにすべき」と、現実での生活規模の伸び代の限界も囁かれ始めています、、カエサルの言う「人は見たいものしか見ない」とは、全くもって真理なのかなぁ、、なんて。

五つ目のRは、ほかの四つを支える土台のようなものである

「四つのR」の優先順位はリデュース(削減)、リペア(修理)、リユース(再利用)、リサイクル(再生)だからだ

出典:『レスポンシブル・カンパニー』

さてそんな中、大量生産・大量消費の既存ビジネスモデルは合致するのだろうかとの疑問を持ち、「自然が再生できる範囲に自然の消費を抑える」として、「五つのR」、「リデュース(資源消費を削減する)」「リペア(修理して使う)」「リユース(再利用する)」「リサイクル(再生する)」「リイマジン(再考する)」を提唱しているのが、このパタゴニアになります。

財布のひもを締めねばならない場合、尊敬・信頼する会社から買おうとする 

企業は、顧客が心の底から欲しいと思うモノを売るようにすべきである。 

出典:『レスポンシブル・カンパニー』

目先の売上(利益)に囚われがちなコトが多い中、「企業は、顧客が心の底から欲しいと思うモノを売るようにすべきである。」として、長く良いものを継続的に適正な価格で提供し続けようとの理念と、実践できているのが素晴らしいなぁ、と。

そして、そういった積み重ねがあるからこそ「財布のひもを締めねばならない場合、尊敬・信頼する会社から買おうとする」と、自信を持って言い切れるのでしょう、選ばれるのは「私たち(パタゴニア)だと」、、ちなみに私も普段通勤で使用しているリュックはパタゴニアさんの製品です。数年間使用していますが、特に目立った綻び・瑕疵もなくお世話になっています、ありがたや。

あと個人的には、冒頭で述べられている「日本基準」というのがかなり意外でした。また「トリプルボトムライン」、CSRの考え方の延長のようですが、、日本でも会計方法の一つとして浸透してきているのでしょうか、まったくの門外漢ですが、少し調べてみようかな。立場上、事業運営は予算も含めて気にしておかないといけないですし。

この規格では社会的責任の「内容」の中心となる原則と主題を掲げています。組織が尊重すべき社会的責任の7つの原則は、「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」です。

組織が取り組むべき社会的責任の中核主題は、「組織統治」「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」の7つです。これらの中核主題のそれぞれにおいて、男女が異なった形で影響を受ける可能性があることが考慮されています。

出典:「ISO26000(国際標準化機構の社会的責任規格)」
(「一般社団法人 CSOネットワークホームページ」より抜粋)

「五つ目のRは、ほかの四つを支える土台のようなものである」ともあるように、常に考えて、柔軟に対応していく必要があるのかな、、と。なお「企業の社会的責任」の国際規格であるISO26000に、日本も2012年から参加しています。そういった意味でも「企業の社会責任」と真摯に向き合っていく必要があるのだろうなぁ、とあらためて思い出しました。そして、それを遵守していない企業は生き残れなくなっていくのかな、、とも。

それでふと思ったのですが、「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」について、少なくとも日本のオールドメディアさんたちは意識はしてない(できてない?)のだろうなぁ、と。どうして、大谷選手がインスタで発信しているのかとか、考えたこともないのでしょうね、みっともない話です。

ちなみにランナー回収スポットは少し足を延ばさないといけないのでいまだに活用したことはないのですが、車で行けないこともないので、少し意識するようにしてみたいところです、、

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