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感想未満

週に1本は映画を観ようと思い立って早ひとつき。その間に今日まで観たのは「言の葉の庭」のみ。雨降りの季節も悪くないかもと思える作品。梅雨の間に新宿御苑を訪れて、自分ひとりの足で歩いて行く練習をしてみたいなんて思った。いつ買ったのか忘れた原作小説も前半4分の1あたりに栞があるが、それも読んでしまおうと思った。なにせ映画では結構端折られてるっぽいことは小説を冒頭しか読んでなくても分かったから。

でも今年の梅雨は異例中の異例。雨は最初の1週間で終わり、そこからは猛暑猛暑猛暑。バイト行き帰りの交通費をケチって2キロの道のりを歩くのも諦めた。バスが足になった。そして7月の2週目に入り、しばらく雨が続くらしい。現実は映画みたいに行かないものだ。それを教えてくれるのもまた映画。勇気をもらったりインスパイアされるだけではない。だから色々なものに触れる方が良いのだ。

今日は早めに入浴を済ませたので映画を観ることにした。先日半分くらいまででポーズしておいた「2001年宇宙の旅」。めちゃめちゃ有名だが未見で、なんだかすごそうな作品だとはすぐ分かった。この時点で僕の眼がいかに鍛えられていないかは明白になる。

ピアゴで買った120円の淡麗と半額のモツ煮を手に部屋に戻ってアマプラをつける。あれ。ん?あ。配信先月までだったわ。途中で停める鑑賞なんてするべきじゃない。当たり前のこと。とはいえここでYouTubeを開いてしまったらパァになる。適当にサムネを切り替え、選ばれたのは「ファイトクラブ」でした。

この映画を観るのは2回目。前回は去年の暮れだったと思う。なんで観たのかは分からないけど、まあ有名な作品として各種サブスクのホームに顔を出し続けていたからだろう。

本作の感想や考察は出尽くしているはずなのでここではそういったことは述べない。昨年キリスト教の授業で父不在のモチーフについて扱った際に何かの検索で引っかかったし、日本文学の講義でも村上春樹のカエルくん東京を救う的な話が地下と地上を隔てた物語で、その感想を書く時に本作のことを足がかりに何か書いた。そうやって色んな方面から論じることのできる映画だということは確か(いや、それは概ねどの映画もそうだろうが)。

おそらくファイトクラブを観ている時の人間は大抵タイラー・ダーデンに夢中になる。彼の言っていることは本質に聞こえるからだ。我々はライフスタイルの奴隷で、欲しくもないものを次から次へと買わされ、所有が人生の軸になるから失うことを恐れる。今の時代は尚更響くはずだ。そういえば前回この映画を観た際にもうひとつ別でフロムの著作を読む講義を取っていたが、そこでもそういう話が中心だった。どうも昨年度は色々と上手くいっていた気がする。

本作の評価として「マッチョポルノ」というものがよく挙がる。確かにファイトクラブの掲げる理想や価値観はマッチョ的だし、いかにも男だけの世界というところがある。人によってはクラブでの生き様を心地良く感じながら鑑賞するし、殴り合いをしたいと思うかもしれない。人間の根源にあるのは暴力性なのだと確信するかもしれない。会社に敵が居なくなったらどれだけの開放感だろうか。

だがタイラーの計画が行き過ぎだということは一目瞭然だ。大事なのは極端になりすぎないこと。確かにメディアや世間の喧伝する生き方に翻弄されるのは愚かだが、かといってファイトクラブの会員のようになりたいかと言われればNOだろう。そう思いたいが、世界を見るとこういうカルト的集団は現実に存在するように思う。

マトモに観れば本作はマッチョを肯定するものではないはず。テロ集団へと暴走するクラブを観て、我々は初期のクラブの在り方もそもそも良くないのだと悟るだろう。ストレス発散の方法が殴り合いなら、まだ家具を磨いていた方がいい。前者に憧れるなら確かにそれはマッチョであり、それに気づいた時には唸らされる。少なくとも自分はそうだった。まさか二重人格だとは思いもしなかったし。

とはいえ結局爆発するし暴力で解決!これからは上手くいく!で締めてる時点でタイラーの行き過ぎにNOを突きつけてるわけではないのか。たぶん解説に少し当たった方が良い。原作も読むべきだろう(主人公がメルヘム計画に加担してたりと結構映画との違いがあるらしい)が、それより『サバイバー』も途中なので取り敢えずそっちを読まなくてはね。

ところで早川書房が最近このファイトクラブのTシャツを売り出した。タイラー的にはどうなのかと思うだろう。以前本作の名前でパブサした際にも「赤の革ジャン欲しくなったけどこれじゃあライフスタイルの奴隷なんだよなあ〜〜!」的なツイートが。

でもそれで良いんだと思う。欲しいなら欲しいと言えばいいし、それでもこの映画との出会いは何かしらブレーキや判断基準のひとつとして我々の内面に加わる。本当に欲しいのか?誰かになりたいだけじゃないのか?と。それだけのことだ。パラニュークの著書を他にも出版している早川がTシャツを出したのは、そういうことだと解釈している。

さて、ビールを飲んだ上に2時間半の映画を浴びてスマホからnoteを打っている僕の文章は結構マズイものになってると思う。フリック入力のミスもひどい。言いたかったこともまとまってるとは言えなさそうだし、はっきり言ってそれでいいとも思ってる。どうせ本作のレビューなんか出揃っているのだから。

なので最後に身近なファイトクラブっぽいものの話を書いて終わりにする。かなりくだらない話だ。

僕の友人が入居しているとある地方国立大の男子学生寮。そこでの話は彼の入学後からすぐに何度も聞かされた。とにかくイカレてるのだ。ブルーシートの上でローション相撲をとるなんてのはまだ全然フツーに感じられるのだが、「歓迎会」と称して2回生以上の面々が1年生をおもてなしするこれが衝撃的である。

そこでは先輩たちが裸で仰向けになり、腹の上にカレーのルーをかけたり、ちょっとかなりキツイのだがサランラップで覆った局部にヨーグルトをかけたりしてスタンバイするらしい。そして新入りたちに犬食いをさせるという。あれ、これなんかの間違いで本稿が切り取られたら問題になるんじゃないのか?

ともかくまあそれ以外にも近隣のマンションに向けて花火を打ち込んだりとか、そういう馬鹿な真似をひとしきりやる寮らしい。何が怖いって、この洗礼を受けた男子学生達は、すぐに「次の歓迎会」を楽しみにし始めるというところだ。今度は自分たちが「もてなす」側となる。僕の友人もそうだった。(幸い去年度までの2年間は濃厚接触を避けなければならないので実施されなかったらしい。)

というのを聞くと、やっぱ男が集まるとマッチョカルト的になっちゃうのかなあと思ったり。まあ運動部もある種そういうとこあるし。やべぇ場所ではやべぇなりに身を任せて順応してしまった方がラクなこともある。

こういう「儀礼」で「男」になるみたいなのが既にファイトクラブなのだが、最近聞いた話ではどっちかがリバースするまでタイマンで腹を殴り合うみたいなのも日常の一コマだということだ。それを聞いて思わず「ファイトクラブやん…」とこぼすと、場にいた2人とも「それなww」と笑ったので、やっぱ大学生って結構映画観てんだな…と思った次第である。

あ、そういえば2度目の鑑賞ではラストシーンのサブリミナルに気づけました。

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