『まんがでわかる LIFE SHIFT』

担当編集者が語る!注目翻訳書 第12回
まんがでわかる LIFE SHIFT
著:星井 博文、リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット
イラスト:松枝 尚嗣
東洋経済新報社 2018年8月出版

切実さをもって受け入れられた「人生100年時代の生き方」

2016年11月の刊行以来、30万部突破のベストセラーとなった『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』。そのマンガ版として、8月に『まんがでわかる LIFE SHIFT』を刊行しました。

マンガ版についてご紹介する前に、まずは、オリジナルである『ライフ・シフト』についての話から始めましょう。

ライフ・シフト』は、「100年時代の人生戦略」とサブタイトルにあるように、長寿化が進むなかで、私たちの人生設計がどう変わるか、どう変えていかなくてはいけないかを論じた本です。

「長寿化」という切り口から働き方を論じた本が、どこまで読者に受け入れられるのか。また、海外の大学の先生が書いた「生き方指南」の本に、どこまで日本人が共感できるのか……という点に、当初は不安を覚えることもありました。

一方で、100年というかつてないスパンで人生を考えることで、私たちは働き方だけでなく、生き方や発想自体も変えなくてはいけない、というメッセージはとても斬新であり、また学者だからこそ書ける冷静な未来展望とあるべきシナリオには、読む者をひきこむ説得力がありました。

期待と不安が同居したなかで編集・プロモーションを進めていきましたが、いざ刊行してみると、当初の不安はまったくの杞憂でした。大阪大学の安田洋祐先生、実業家の小室淑恵さん、ジャーナリストの佐々木俊尚さんをはじめ多くの識者の方が『ライフ・シフト』に言及しながら、日本人の生き方・働き方についてタイムリーで刺激的な提言をしてくださいました。

さらに、「人生100年時代」という言葉は『流行語大賞2017』にノミネートされ、ビジネス書グランプリ2017では総合グランプリを獲得。また著者の一人であるリンダ先生は政府の「人生100年時代構想会議」のメンバー入りをするなど、本書は多くの読者に受け入れられたのです。

各年代の登場人物が直面する「ライフ・シフト」

ライフ・シフト』刊行後、読者の方が主催するいくつかの読書会に参加する機会がありました。そこで率直な意見をうかがうなかで、より日本の実態にあった、よりわかりやすい普及版を作りたい。そうすれば、もっと多くの読者の方に本書のメッセージが届くはずだーーと考えていました。それが形になったのが『まんがでわかる LIFE SHIFT』です。

本書には、大学3年生の主人公美咲と、『ライフ・シフト』のメッセージの代弁者であるエルザというキャラクターが登場します。そして、長く生きることに否定的な美咲に、「私たちは100年生きるのよ」とエルザが伝えるところから物語が動き出します。

就職活動をしながら、自分らしい人生とは何かを模索する美咲。
勢いで大企業を辞めてしまい、自分が本当にしたいことを探す兄。
定年間近となり、いままでの人生を振り返りつつ将来に不安を覚える父。

20代、30代、50代の登場人物たちがマンガのなかで直面する状況は、同世代の日本人にはなじみがあることと思います。人生100年時代、ライフ・シフトに直面するのは(まだ若い)美咲だけではありません。あらゆる世代の人が向き合わざるをえない課題だからです。

自分らしい人生を歩むのに、年齢は関係ない

ライフ・シフト』には主要なメッセージが二つあります。一つは、「教育ー労働ー引退」という既存の「3ステージモデル」が終わり、人生は「マルチステージ」へとシフトしていくこと。もう一つは、家やお金などの「有形資産」と同様、スキルや家族関係などの目に見えない「無形資産」が重要になることです。

こうしたメッセージを貫く上位のメッセージとして、マンガ版では、「自分らしい人生を歩むこと」の重要性を強調しました。オビにつけた「今こそ、自分の人生を生きよう」という言葉がそれを体現しています。

誰かが敷いたレールの上を何らかの「正解」に向けて一斉に走る人生なら、3ステージの人生と変わるところがないですし、何より、そうした受け身で100年という長い時間を過ごすのは、著者たちも指摘するように、「厄災」以外の何者でもないからです。

自分らしく生きることによって初めて、与えられた100年という時間を「恩恵」と見なすことができる。世界に先駆けて人生100年時代に突入する日本は、世界に手本を示せると著者たちは指摘します。

もうすでに『ライフ・シフト』を読まれた方も、そうでない方も、ぜひ書店さんで手にとってごらんいただければと思います。そして、本書を読んだ皆さんで率直に話し合ってみてください。私たち編集者がそうであったように、自分についても、世界についても、きっと新しい気づきが得られると思います。

執筆者:佐藤朋保/宮崎奈津子(東洋経済新報社)


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