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和牛の脂肪質について



肉の脂肪酸の研究は古くから行われていて、世界では非常に多くの研究報告があり、脂肪の質が大事だと言う事は世界中で認められていて、飼料や品種によって脂肪の質は大きく変わるので欧米では特に健康との関係で近年特に重要視されています。

本日は当店が良いと考える脂質の要素を3点挙げてみました。

①系統の良い長期肥育未経産牛肉であること

他品種と比べて緩徐収縮筋豊富な系統の良い未経産黒毛和牛は、SCDという遺伝子を多く持つ、https://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/seika/kanto18/03/18_03_27.html
SCDが生産するステアリン酸COA脱飽和酵素は、飽和脂肪酸であるステアリン酸分子をしっかりとつかみ、炭素分子の長い鎖に二重結合しモノ不飽和のオレイン酸に変換させる。
系統の良い長期肥育未経産黒毛和牛の生の脂が手の温度で溶け、温かい水道水で洗い流せるほど柔らかいのは、ステアリン酸COA脱飽和酵素のおかげ。無煙ロースターではわかり辛いけど、焼けた鉄板や網に載せれば、特有の揮発性物質が一瞬パッと広がる。その雰囲気がJapanスタンダードなのだと私も思います。

②モネンシンフリーであること

健康と切っても切れない関係にある脂質をめぐる議論は「飽和」という概念を軸に考えられることが多い。
基本的に、炭素と水素分子の鎖の片端にわずかな酸素があるのが「脂肪」。そして最大限の水素を含んだ脂肪分子のことを、水素で「飽和」していると言う。しかしながら、いくつかの水素原子を欠く脂肪も存在する。それぞれの分子が水素原子を一組欠く脂肪はモノ不飽和、二組以上の水素分子を欠く脂肪はポリ不飽和と考えられている。
あらゆる脂肪の中でも、LDLコレステロール値を上昇させる事で悪名高い「飽和」脂肪。これが、過剰摂取すると心臓発作を引き起こすと言われる「悪玉」コレステロールと言われている。
品種や系統を問わず牛肉には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸という三種類の飽和脂肪が含まれている。
その中で、ミリスチン酸とパルミチン酸はLDLコレステロール値を上昇させるが、水素で飽和しているのに、ステアリン酸はその働きを持たない。 
日本の黒毛和牛はδ9デサチュラーゼ酵素を多く生産する。https://ultrabem.com/protein_gene/d/desaturase
δ9デサチュラーゼ酵素には、ステアリン酸分子をギュッとつかんで水素原子一組を引きはがし、モノ不飽和であるオレイン酸に変換する作用がある。これが系統の良い未経産黒毛和牛の本来の能力と言える。
つまり脂がぷよぷよにやわらかいのが普通なのです。ところがモネンシンを与えた黒毛和牛の脂はなぜか硬くなる(飽和脂肪酸が増え不飽和脂肪酸が減る)。ここからは科学的根拠をまだ見つけていないので私見に過ぎませんが、モネンシンを牛に与えると、上記のδ9デサチュラーゼ酵素の働きを抑制してしまうのではないか?と私は考えています。
事実当店が直近半年間で4頭購入させていただいた倉山名人の黒毛和牛の脂は他の枝肉と触り比べても格段にやわらかいのです。


③穀物だけでなく脱脂米糠、大豆や木の実を食べている牛かどうか

オリーブ粕



上記のような黒毛和牛のもつδ9デサチュラーゼの働きおかげで、飽和脂肪であるステアリン酸は、心臓血管の健康という観点では中立的といえる。
草肥育牛肉における飽和脂肪に対する不飽和脂肪の比率はとうもろこし肥育に比べると低いものの、たいした差ではない。ところが、草肥育にはステアリン酸が多く、ミリスチン酸とパルミチン酸は少ない。だから、より望ましいと言える。穀物だけでなく草類もしっかり食べた牛かどうかは枝肉の脂の色を見ればある程度わかる。草やわらに含まれるベータカロチンはうっすら黄味を帯びた脂肪をつくる。
話は少しそれるけど誤解があるといけないので補足すると、草だけを食べた不飽和脂肪酸(オレイン酸)値の高い黒毛和牛がが美味しいのかと言うと必ずしもそうとは限らない。系統や月例や肥育環境。草や藁の質、水や土の質など美味しい和牛には脂質以外にも様々な条件が関係する。
話を戻して、またオレイン酸を多く含む木の実を食べた牛はオレイン酸値が高い事も証明されている。当店で購入させていただいている倉山名人はオリーブ牛生産者でありオリーブ粕を飼料に配合されている。
https://kakunosh.in/kanzaki-aging-beef/nikuniku-activity-report-no30/

枝肉を吊るした状態でリブロースのカブリ部分が下にズレて段差が出来ているのが柔らかい脂質(軟脂)の証拠


(黒毛和牛の脂肪質評価について)
脂肪質の評価はすでに数値化可能となり、これまでのサシ一辺倒の格付け評価体制から徐々に脂肪質評価への体制も整いつつあるようです。本当に良いものが正しく評価される事で農家さんのやり甲斐も変わる事でしょう。私にとってもそれはとても嬉しい事です。

以下
独立法人家畜改良センター
入江理事長のインタビューより抜粋



〜最近では脂肪酸が食感、多汁性、風味 (呈味や香り、におい)といった食味特性に影響するという研究が進展しています。 現在、そうしたことを総説として取りまとめ、日本畜産学会報に総説として公表しました。
概要としては、 世界的にも実験型や、し好型の官能検査で、 和牛は多汁性や軟らかさ、風味のすべての食味特性に優れた値を示しており、この一番大きな原因は脂肪交雑にあるが、 それだけではなく脂肪質にも関連があり、いままでよくいわれてきた舌触りの良さだけではなく、多汁性の高さや風味にも影響することが分かってきました。これは、和牛肉の脂肪は融点が低いため、口の中で溶けて舌触りが良いのに加え、食べるときに肉汁だけでなく溶けた脂肪が液汁になってジワーッと口の中に広がることで、 高い多汁性、ジューシーさを感じることが科学的に明らかになってきたということ。
また、 ここ2、3年の研究で、 熟成中に遊離したオレイン酸、リノール酸が舌に脂肪味を感じさせる第6の呈味物質となり、甘味、うまみも刺激することが分かってきました。 脂肪はもともと味がないといわれていましたが、 実は味があるということが明らかになってきたということであり、世界的に食関係の学会では、 新たな第6の呈味として非常に注目されています。さらに、 多価不飽和脂肪酸は遊離一価不飽和脂肪酸とともに、 甘い香りのラクトンなどの芳香成分に変化することも分かってきました。つまり、いままでオレイン酸などは単に舌触りの良さといった食感だけがいわれてきましたが、 それだけでなく、多汁性や風味にも関係するという重要な機構があることが明らかになってきました。今後これにより、もっと脂肪質に関するPRが進んでいくでしょう。 科学的な根拠に基づき、 多汁性、風味についてもしっかりと訴求できるようになります〜



(まとめ)
最後に私共が考える良い牛肉の定義の一つはとびきりやわらかい脂であり、オレイン酸値の高い良い和牛肉は新聞紙に載せると脂が溶けて裏側までしみ込むから他の肉と見比べても簡単に違いがわかります。興味がある方は当店の和牛肉のバラやロースをお持ち帰りして試してみて下さい。

(ステーキ!世界一の牛肉を探す旅参照)


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