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『ジョーカー』の感想と映画に主観的な評価点をつける意味

先週の金曜日、友人に誘われ、
『ジョーカー』を公開初日に観てきました。

このところ映画館に足を運ぶのは一年に2、3回しかありませんで、
『ボヘミアンラプソディ』以来でした。 

やっぱり大きなスクリーンで2時間集中しながら観ると迫力が違いますよね。

家でAmazon Primeで映画を観るのとは違って、
その映画のためにお金を払って入場して、その映画のためだけに時間を過ごすということは非日常な体験を作り出します。

『ジョーカー』を観てから3日経ったのですが、
いまだに引きずっています。
それくらいの作品でした。
R15指定ですから暴力性も高く、テーマも重すぎるため、いま世界ではジョーカーの行動に感化されないよう、至るところで警告が出ているようです。

私は10年ほど前から、
IMDbというサイトで、
観た映画は主観的な評価点を10点満点でつけています。

ただの趣味なら点なんてつけなくてもいいのでは。
別に映画に関わる仕事をしているわけでもないのに。
と、思いながらもなんとなくつけ続けていました。
ただ今は、主観的な評価点をつけることには意味があると思っています。 

↑の記事でも以前書いたのですが、
私にとって映画は〈自分自身の定点観測〉になるという意味で、大切な趣味の一つです。

対象としての映画を鑑賞しているようで、
同時に観ている主体としての私の観察もします。
10年前に観た映画を今もう一度観てみると、
心が動くポイントが違ったり、視点が多くなったりしていることに気づきます。

『ジョーカー』を観てない方・観るつもりない方もいらっしゃるかと思いますが、
以下、内容に少し触れていきます。

まず、あの作品はただの“アーサー(主人公)の物語”ではありませんでした。

ネタバレしすぎずに私が感じたテーマだけ挙げると、

差別・分断、
精神病とは何か、
医療や福祉のあり方、
貧困という社会問題、
遺伝因と環境因、
親子関係や愛着形成、
悲劇と喜劇、
集団心理

などです。
今この映画に対して世界で色んな意見が飛び交っているとは思いますが、
私も“危険”だと思いました。
ハロウィン騒ぎに行かない選択を取る人まで出てくるレベルだと思います。

危険な映画ですが、
私はこの映画に10点満点をつけました。
結局は、芸術という視点で観たからです。
ホアキン・フェニックスの演技も音楽もラストシーンも、全て芸術として美しいと思ったし、
何よりこれだけ心を揺さぶられて10点以外をつけることは出来ませんでした。
『ブラックスワン』に10点をつけた時と似ています。

この作品を10年後に私が観たらどうだろう。
10年前に私が観ていたらどうだっただろう。

映画好きなある友人は10点を、
映画好きなある友人は8点をつけていました。

8点をつけた友人は「やはり俺の感性がおかしいのか」と呟きました。

IMDbの全体評価点は現在9.0点です。
(2019/10/7 15時現在。評価ユーザー数 141,116人)

でもそれは人々の評価の総和。
映画を観て自分はズレてるなんて、私はその人に思ってほしくないなと思ってしまいました。

様々な作品にはときに“主張”があるかもしれませんが、
決して社会にとっての“正解”を植え付けてるわけではないと思います。 

私は正直、ジョーカー(というよりアーサーという人間)の境遇に共感してしまった部分は大きいです。
でもそのこと自体が悪なのではない。

そのとき私にはそういう感情体験があったんだということは大切にしたい。

だから私は何年経っても、
IMDbに残したそのときの私の主観的な点数を否定しません。
客観的な指数とは別に、持っておく。

以下、ジョーカーは危険な映画だという論争についてどう思うか質問された主演ホアキン・フェニックスのインタビューを引用します。

ジョーカーほど情緒不安定になっている人間にとっては(映画に限らず)何でも起爆剤になり得ると思う
その人にとって何が起爆剤になるかは誰にもわからないものだ
こういう質問をすることで爆発する人もいるかもしれない

だからといって「悪影響があるかもしれないからこの質問はやめておこう」
というわけにはいかない

僕は他人にそれを求めない

誰にとっても心地よいものではない
そういった問題があることは理解しているし懸念している
だからこそ議論するんだ
問いを投げかけることを恐れてはいけないと思う

ジョーカーについての記事をnoteで書くかどうか迷いました。
でも「悪影響があるかもしれないからこの投稿はやめておこう」という選択は今の私にはそぐいませんでした。

強烈な芸術を観て感じたことを個々人が抑圧して、
議論が全く起きないことの方が私はある意味危険だと思います。

少なくとも貧困問題は他人事(外国の話)ではないからね。

熱くなってしまいましたが、
映画という文化を愛している人にはお勧めしたい作品でした。
ただし、確かに人によってはそれなりの覚悟がいる映画かなと思います。

『ダークナイト』のジョーカーが好きで観る人も多いかと思います。
ヒース・レジャーとホアキン・フェニックスの演技を対比させて観るのも面白いですね。

あと昨日、Amazon Primeで、
『キングオブコメディ』を観ましたが、
『ジョーカー』との類似点多いですね。
どうでもいいけどロバート・デ・ニーロがリチャードホール時代のザキヤマさんに見えました(笑)

バッドマンビギンズ→ダークナイト→ジョーカー→キングオブコメディという順で観るのも面白いかもしれません。
私は次はタクシードライバーとモダンタイムスを観てみようと思っています。

『ジョーカー』を観て引きずり、
結果的に映画熱が再燃したというお話でした。

映画ってスゴい。

喜劇王チャップリンの名言

人生は近くで観ると悲劇だが、
遠くから観ると喜劇である

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