見出し画像

スクリーン「チラシ大全集」Part5感想 地球危機頻発と映像革命 マッチョはいずこに 

「チラシ大全集」Part5。90年代後半。「ベルギーの人間コンパス」ジャン=クロード・ヴァン・ダムは己の覇王道を邁進。96年公開の初監督作「クエスト」で刃牙シリーズさながらの異種格闘トーナメントを開催し、日本公開のキャッチコピーで「K-1を超える!」と宣言。この年のK-1はアンディ・フグが踵落としからの必殺技フグ・トルネード(回し蹴り!)でGP初制覇。K-1黄金期到来の始まりを告げ、アンディの人気は不動のものとなった。ヴァン・ダムの立ち位置は変わる事は無かった。

K-1にはジャン・クロードロイド・ヴァン・ダムという選手がいました。

宇宙人襲来、3つのカタチ

この時期の大作映画は「宇宙人襲来」と「隕石接近」モノがとにかく多く、地球存亡の危機という宣伝文句が度々使われていた。主な宇宙人系は3本。ホワイトハウス爆破の絶望から大統領の演説で絶望から希望へと変わる「インデペンデンス・デイ」、何事もノリと楽観性。困った時(ビンタの後とか)はピカッで解決「メン・イン・ブラック」、同じく楽観的でも世界の要人が全員骸骨となったのにトム・ジョーンズ本人の代表曲「よくあることさ」で締めるラストに「いいのか?」となる「マーズ・アタック!!」と。

その頃、ヴァン・ダムは双子シリーズ第2弾「マキシマム・リスク」でお尻を出していた。

遂に認められたブルース

隕石接近は「ディープ・インパクト」、「アルマゲドン」の98年公開2作。ブルース・ウィリスが読者人気投票で9位。「ダイ・ハード」から9年。人気投票に縁がなく、一部の記事で薄毛を弄られる不遇な扱いも「アルマゲドン」で見せた娘への不器用な愛と父性でその魅力に気付いた人が多かったのだろう。遅い!ようやくの初ベストテン。ブルースはアクションスターの中でも作品の幅が広く、翌年は「シックス・センス」で少年を見守る優しさを見せて、5位にランクアップした。

同じ年。ヴァン・ダムが「ノック・オフ」、ジャッキーが「ナイスガイ」でHOLLYWOOD vs HONG KONGが再燃。両作共にサモ・ハン・キンポーが関わっているため、三角関係も出来上がっていた

レオ様vsブラピ 頂上決戦

95年。ブラッド・ピットが初の1位。翌年はレオナルド・ディカプリオが「タイタニック」含めて3連覇。90年代後半はこの2人が2トップを独占。

お前がロミジュリなら、俺はジョー・ブラック
あなたがEDWINなら、僕はオリコカード

と初期AKBでいう前田敦子と大島優子の如く熾烈なトップ争いを繰り広げた。時を経て2010年代。既にアカデミー賞を制していたレオ様は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でブラピと初共演。脇で相棒役を買って出たブラピを座長として支え、初のオスカーに導いた。

ブラピとレオ様が人気票で殴り合いをしていた97年。かつての人気投票1位、ミッキー・ロークとヴァン・ダムが殴り合い(「ダブルチーム」)。「幽遊白書」で幽助と酎が繰り広げたナイフエッジデスマッチを想起させる十字架に足をかけた男のタイマン勝負。「タイガーボムデスマッチ」を繰り広げていた。

ナイフエッジデスマッチとは片足をナイフに密接させゼロ距離で殴り合う逃げ場なしの決闘。
タイガーボムデスマッチは無作為に設置された地雷と動き回る虎を避けての戦闘。
地雷の置き場所に十字架もセットされており、ナイフの形に類似。

残酷。転落したロマコメ女王

サンドラ・ブロック(95年1位)、ナタリー・ポートマン(96・99年1位)よりも長く日本で人気を保持していたのがメグ・ライアン(98年1位)。88年の初ベストテンから20年近く人気をキープ。「ロマコメの女王」と呼ばれる程の愛されキャラだったのだが、数年後に不倫スキャンダルを起こして、おしどり夫婦からの離婚→フルヌード→整形疑惑と日本のワイドショーやネットニュースで見るような転落ぶりにこの世の残酷さを見た。最近は表情が元に戻って落ち着いているように見えるのが救い。

備忘録 1999年ゴールデングランプリ

毎年度の人気投票結果が掲載されるこのシリーズだが、99年のみ未記載のため急遽、当時の古本を購入。ベストテンの顔ぶれを備忘録として記載。

作品1位「シックス・センス」。2位以下「マトリックス」、「スター・ウォーズ エピソード1」、「恋に落ちたシェイクスピア」、「ライフ・イズ・ビューティフル」、「ジャンヌ・ダルク」、「ファイト・クラブ」、「ノッティングヒルの恋人」、「パッチ・アダムス」、「ユー・ガット・メール」。
1位がブラピ、2位がレオ様の男優部門は3位以下、キアヌ・リーヴス、ユアン・マクレガー、ブルース・ウィリス、ブラッド・レンフロー、ジャッキー・チェン、トム・クルーズ、ライアン・フィリップ、リヴァー・フェニックス。
ナタリー・ポートマン2度目の1位の女優部門は2位以下、メグ・ライアン、クレア・デーンズ、キャメロン・ディアス、ジュリア・ロバーツ、ドルー・バリモア、ミラ・ジョヴォヴィッチ、サンドラ・ブロック、オードリー・ヘプバーン、ウィノナ・ライダー。以上が各部門ベストテン。

映像大革命と暴力麻薬

この年の目玉は「マトリックス」。『どうやって撮ったの!?』という驚愕の映像が続出。特にネオの弾避けは芸能人素人問わず、ものまねして腰を痛めた者は数知れずいたであろう、人間離れの動き。登場人物が全員グラサンなのも、子供心をくすぐる。全世界大ヒットの今作を皮切りにVFXとワイヤーアクションが急激に発展する事になった。
もう一本。全身映えまくりのブラピによる「ファイト・クラブ」も公開。ブラピ演じるタイラー・ダーデンのカリスマ性と地下に佇む秘密闘技場の世界観。中毒者が今も絶えず、日本でも「ガチンコ・ファイトクラブ」が誕生。地下格闘技出世頭でBreakingDown主催者の朝倉未来は、日本のタイラー・ダーデン的アイコンに。ジョジョ第6部にも刑務所ファイト・クラブのシーンがあるなど、各分野に影響を与えた。

消耗していくマッチョたち

その一方。ヴァン・ダムは名作続編「ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン」でを仮想世界ではなく、現実の世界を戦ったがマトリックスのスケールアップした世界観を前に目立てない。シュワが不死身の悪魔をグレネードランチャーで始末しても、スライがベッドではなく床で寝るスタローン・イン・マイ・ハートを見せてもダメ。
2000年代に入ると魔法使いに指輪物語とファンタジーが人気となり、さらに隅に追いやられる男達。彼らが集結して一揆を起こすのはまだ先の事。

この記事が参加している募集

読書感想文

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?