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やさぐれ野郎の半日

このクソ暑い中、海岸まで歩いて来た。
グリーンのサングラスを上にずらすと眩しい光が瞳孔を射貫く。
波の破片が銀色に輝き、生温い風が潮の香りを乗せて鼻腔を擽った。
俺は熱された堤防の上に腰掛け、手提げ付きの保冷バックを開いた。
中から使い捨てのプラスチック製のコップを取り出し、その中へ山盛りのロックアイスとウォッカを5分の1、タッパーに詰めてきた櫛切りのレモンを3つそしてソーダを注ぎ込む。
一気に3分の1ほどを呷ると、全身の毛穴から汗が吹き出した。

片手で麦藁を押さえながらジッポで煙草に火を点け、唇の端に咥える。
サングラスをかけ直し、浜辺で水を掛け合う若いカップルを眺め昔を懐かしんでいると、紺地に赤い花の模様が入ったアロハシャツの上に灰がポトリと落ちて、慌てて手で払った。

3杯目の酒を飲み干して視界からカップルが消えると、俺はサングラスを外しアロハシャツを脱ぎ捨てて浜辺へと走り出し、そのまま海水に飛び込んだ。
いちど頭まで潜り、それから海面に寝そべって浮かんでいると、砂浜から不思議そうな顔でこちらを見ている1頭の犬と目が合ったから「そんな目でヒトのこと見るんじゃねえよ」と言ってやったが、犬は理解していないようだった。

暫く海水に浸かってから浜へ上がるとさっきの犬が尻尾を振って近づいて来た。
落ちていた枝を投げてやったら取りに行かないので俺はその犬に興味をなくし、堤防へと戻った。

グレーのタンクトップとモスグリーンのショートパンツは黒く濡れて水を滴らせていたから、タンクトップを脱ぎショートパンツは軽く絞った。

アロハシャツを肩に掛け、また酒を作り呷る。
グレーのビーチサンダルを脱ぎ堤防に叩きつけて、入り込んだ砂を落とした。
煙草に火を点け、口に咥えたまま堤防の上に寝そべり、どこまでも深く続く水色の空を見上げる。
空の奥の奥まで覗こうとすると、宇宙まで吸い込まれそうになって恐くなったので、目を逸らした。

そしてなんだか恥ずかしいのと人恋しいのとで、「こんな場所、俺には似合わねぇや」と嘯いて、昼から呑める贔屓の飲み屋へと向かうことにした。

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