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ライターとして書く

ライターはアーティストではない

「これ、どう思う?」
私が街ぶらの記事を連載している地域情報誌の編集長が、1通のメールを見せてくれた。
メールの主は、同じ地域情報誌の別コーナーを担当している若い女性ライターで、文面は「私の想いを込めた原稿を修正されてショックでした」と。
思わず吹き出した。編集長も「そうやろ? 笑うでしょ?」と呆れている。

ひとくちにライターといっても、インタビューをして書く、資料を調べて書く、イベントやセミナーのレポートを書くなど、さまざまなジャンルの書き手がいて、執筆スタイルもさまざまある。いずれにも共通していることは、素材が自分の外にあること。インタビューは聞いたまま、資料は読んだまま(複数を突き合わせて裏付けを取るのは常識)、イベントならありのままを、読み手に伝わるように書く。それが“ライターの仕事”である。

「ライターと作家と、どう違うのですか」と尋ねられることがよくある。そんなときはライターの仕事を、以上の如く説明するとたいてい納得してくれる。
ライターが書く原稿は“事実の伝達”であって、そこにライター自身の想いは求められていない。クライアントから特段の要望があれば話は別だが、ライターがアーティストを気取る必要はないのだ。したがって「私の想い」なんて、むしろ邪魔である。

そうはいうものの、ライターもクリエイターという大きなカテゴリーに含まれる職業だ。
クリエイター(Creator)には「創作者」と「制作者」という、おおきく2つの意味があるらしい。ライターは創作者ではない。だったら制作者かというと、これも違う気がする。制作には主観が入るが、ライターが書く原稿には原則として主観は要らない。
じゃぁ何なのだ? と考えているときに見ていたあるWEBサイトに、クリエイターの定義としてこう書いてあった。

クリエイターとは「自分のもっている力をアウトプットして、それを仕事にできるプロ」。

これなら「ライターがアーティストではないこと」も暗に示唆していると解釈して、腑に落ちたのである。
(了)

文:平藤清刀

※クリエイターの定義(出典)https://staseon.com/library/article_75/

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