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ヴァージニア・ウルフ『ある協会』

エトセトラブックスから刊行されている短編。

男性の方が女性より優れている。
そんなこれまでの「常識」は、ある女性の叫びでひっくり返される。
どの本も、歴史書も詩も伝記も、改めて読み上げてみると酷い出来なのだった。
どれも、著者は男性。

集まっていた女性たちは、世の中のあらゆる領域において、男性たちの業績は本当に評価できるのか調べることを決める。
「人生の目的とはよい人間とよい本を生み出すこと」(9頁)とし、協会を設立。
納得できる答えが得られるまでは一人の子どもも産まない、と誓うのだった。

2021年に書かれていたとしてもおかしくない設定。
でも実際は、1921年発表だ。
100年以上経っていても読ませる出来であると同時に、男性優位の社会はあまり変化していない、その両方を示しているのだろう。

問題提起に近い書とはいえ、なかなか賑やかな文体で、過剰だったり唐突な展開はギャグっぽい少女漫画を思わせたりもする。
海軍、裁判所、芸術家団体、大学と、幅広く調査に行く様子は冒険活劇に近い。

脱線していく話し方や、誓いを破り妊娠する女性の存在も、語りを複雑にしていて分かりやすい糾弾だけでは終わらない。

「有害な男性性」の行き着く先が戦争だと思うが、今作の背景にも第一次世界大戦(1914~1918)がある。

学び、知性を身につけ、自分の頭で考えられる材料を得て、自ら判断し意志決定する。
能動性、主体性こそが自らを助けるのだ、と読んだ。


詳細な訳註と解説で、いくつか分かりづらい箇所も読み解きやすくなっている。

隠さずに白状するとヴァージニア・ウルフを手に取ったのも初めて。
推薦してくれたのはまたもラジオ番組「BOOK READING CLUB」だった。

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