映画メモ:2012年

過去のツイートから、映画関連の投稿を抜粋しまとめました。
2012年分は結構観ていて、ズラッと全39本。

ちなみに、ツイッターはこの年の3月ぐらいから使い始めていたので、それ以前の記録は紙に書き出したメモ類を見返すしかない。いずれ機会があれば回顧録をつけるかもしれない。

多くはDVDで観ていたもの。
たまに隣町の「千葉劇場」という単館で、サービスデーに行くのがささやかな楽しみだった。今もあるかなぁ。




2012年05月29日(火) 
チャン•イーモウ『初恋のきた道』(1999)。恋愛ものだが実直さが胸を打つ。主演のチャン•ツィイーも適役。これは良い映画。


2012年06月01日(金)
アレクサンダー•ペイン『ファミリー•ツリー
家族の愛憎と再生を描く、大人の映画。全篇ハワイの自然と音楽で彩る。ジョージ•クルーニーの好演も光る。お勧めします。

 
2012年06月21日(木)
アスガー・ファルハディ『別離』(2011)。離婚、介護、失業と、イランはテヘランの家族が抱えるものは、もちろん我々も無関係ではない。主題は重いが、脚本の秀逸さで魅せる。観終わった者同士で、語り合いたくなる映画。


2012年06月28日(木)
ラオール・ウォルシュ『ハイ・シエラ』(1941)。いつだって我々が気になるのは、はみ出し者。ボガートにしかできない表情。やや定式化された演出もあるが、古い映画に裏切られることはまずない。


2012年07月05日(木)
ジム・ローチ第一作『オレンジと太陽』(2010)を観た。児童移民という国家スキャンダルが題材だが、語り口は丁寧で落ち着いている。映画として詰めの甘さを感じた点もあれど、一気に観終えた力作。


2012年07月12日(木)
マーク・フォービー『プリンセス・カイウラニ』(2010)。19世紀末、ハワイ王朝最後となる王女を描く。その短い生涯で、強く変わらなければならなかった姿は、哀しくもまた清々しい。役者陣の好演が光る佳作。衣装デザインも良い。


2012年07月22日(日)
サム・ペキンパー『昼下がりの決斗』(1962)。西部劇を懐かしむ西部劇。脚本は無骨だが、作家の美学はすでに刻印されている。登場人物が皆、イイ顔してます。特に悪役が。シネスコだし、ポータブルじゃなくて名画座とかで観たい。


2012年07月27日(金)
映画メモ:ダニエル•ブルマン『僕と未来とブエノスアイレス』(2003)。群像劇の形を採りながら、ある青年の内的成長を描く。政治、宗教、父との葛藤、恋愛なども、笑いを誘う軽い演出で見せる。やっぱり家族の映画なんだな。爽やかな後味。


2012年08月01日(水)
映画メモ:ベルトラン•タベルニエ『ラウンド•ミッドナイト』(1986)。主役のデクスター•ゴードンが快演。物語はややコシが弱いが、贅沢な出演者たちの生き生きとした表情がいい。演奏シーンも多く、大らかなジャズを楽しめる。


2012年08月03日(金)
映画メモ:ハル•アシュビー『ウディー•ガスリー わが心のふるさと』(1976)。米国が生んだ放浪の音楽家による自伝的小説を映像化。厳しい時代に、それでも生き抜く人々。あまり馴染みがなかっただけに、背景が見えてくるし、大切なものを教えてくれる。


2012年08月06日(月)
映画メモ:古沢憲吾『ニッポン無責任時代』(1962)。植木等が歌って暴れて、楽しませてくれる。予測不能な展開。奔放さの中に、粋な流儀を垣間見た。「C調」って今言わないよなぁ。


2012年08月15日(水)
映画メモ:フェルナンド・E・ソラナス『スール その先は…愛』(1988)。軍事政権に囚われた男が5年振りに戻った一夜。舞台劇的演出で、現実と想像を行き来する。パリに亡命した監督自身の心情も透けて見える。もう一つの主軸となる感傷的なタンゴは、名匠アニバル・トロイロ、ピアソラによる。


2012年08月16日(木)
映画メモ:マノエル・ド・オリヴェイラ『家宝』(2002)。没落した家系の娘が政略結婚に甘んじたと見せかけーーという筋書きもさることながら、抑制されたテンポ、ぐっと引いて動かない絵画的なカメラ、と演出面が光る。理屈っぽい台詞の応酬、宗教モチーフなどなど、映画好きなら楽しめる。


2012年08月29日(水)
映画メモ:ルイス・ブニュエル『忘れられた人々』(1950)。メキシコの貧民街で少年たちは荒れ、大人たちも退廃している。救いのない展開だが、スローモーションを含めた鮮やかな編集と、役者陣の躍動する身体が際立つ。なかなかお勧めしにくい作品だ。


2012年09月02日(日)
映画メモ:クリント・イーストウッド『バード』(1988)
ジャズ界の伝説、チャーリー・パーカー。誰も成し得なかった創造と、その代償のような自己破壊への道。34歳で亡くなるまでを、フォレスト・ウィテカーが繊細に演じる。根底に親しみを持った、中立的な視点がある。


2012年09月15日(土)
映画メモ:溝口健二『近松物語』(1954)
江戸前期の京都を舞台に、誤解から生じた無実の罪を背負い、逃げ続けた先に本当の愛を知った男と女。一族の体面を保つのか、命を賭してまで自分たちの心を貫くのか。役者、カメラ、音楽、脚本と全てが整っている。生きてるうちに観れてよかった。


2012年09月16日(日)
映画『ボブ・マーリー』観た。通史として丹念に作られているので、新しい発見も多く、また改めて魅力に気づかされる。抜粋ながら力強い楽曲の数々に感動させられる。DVDも出ますが、ぜひ重低音響く劇場で。21日まで。


2012年09月20日(木)
原宿VACANTでモットザフープルのドキュメンタリー上映会。モーガン・フィッシャー氏とピーター・バラカン氏のトークもあった。仲良しコンビ。映画もバンドのやぶれかぶれさがよく描かれていて笑えた。


2012年09月25日(火)
映画メモ:ホウ・シャオシエン『悲情城市』(1989)
戦後間もない台湾の「二・二八事件」を物悲しい色調で描く大作。情勢に巻き込まれていく一家を静かに見つめることで、直接的でない穏やかな表現になっている。日本から中国への返還、束の間の希望と大きな挫折。そんな歴史も知らなかった。


2012年10月01日(月)
映画メモ:ルネ•クレール『自由を我等に』(1931)
いわゆるスラップスティックだが、あくまで形式として借り、痛烈な皮肉を利かせる技量がまず鮮やか。ミュージカル調の演出で、台詞を意図的に少なくしている分、ジョルジュ•オーリックの作曲する音楽が映える。幸福な映画体験を保証します。


2012年10月06日(土)
映画メモ:クリント•イーストウッド『グラン•トリノ』(2008)
人としてどうあるべきか、何をなすべきか。そんな一見道徳臭い主題を、最後の映画作家と呼びたいぐらいの安定した重厚感の中で描き切る。観る人それぞれの解釈を許す脚本も秀逸。これも観終えた者同士で語り合いたくなる。


2012年10月07日(日)
映画メモ:オリヴィエ•ダアン『エディット•ピアフ~愛の讃歌~』(2007)
フランスが生んだ不世出の歌手の生涯を描く。演出面がやや類型的だが、やはり力強い楽曲の数々とその背景に胸打たれる。主演のマリオン•コティヤールを筆頭に役者陣の熱意を感じる。新たに彼女の歌を聴き返してみたい。


2012年10月10日(水)
映画メモ:ラース•フォン•トリアー『ヨーロッパ』(1991)
1945年、終戦直後のドイツにやって来た米国青年。物語の運びや演出は陰鬱だ。カラー/モノクロの行き来や合成など映像面での実験が、逆に古い作品に見せているのが面白い。映画を観て作っている映画ではある。その点で自己言及的。


2012年10月11日(木)
映画メモ:ルイ•マル『ビバ!マリア』(1965)
西部劇になるとは思わなかった。美女二人の競演に鼻の下を伸ばしてもいいが、数々の大人の諧謔を楽しむのもいい。アンリ•ドカエの撮影が多大な貢献をしている。それにしても、どんなジャンルも撮れてしまうのは才能か器用さか?


2012年10月12日(金)
映画メモ:ビレ・アウグスト『マンデラの名もなき看守』(2007)
差別制度が残る南アフリカでの実話。凶悪な犯罪者とされていたネルソン•マンデラ氏を担当することになった主人公は、やがてその見方を改めていく。正しいと思った仕事が歴史の過ちに加担してしまうとき、答えは簡単には出ない。


2012年10月13日(土)
映画メモ:山本嘉次郎『エノケンのちゃっきり金太』(1937)
「ちゃっきり」とは、「巾着きり=スリ」のこと。常に走り逃げ回り、一息ついては能天気に歌う。見どころは主役の運動能力か。とても素朴でのどかな笑いだ。ところどころ話しが飛ぶのは、フィルムが失くなっている箇所があるのでは。

映画メモ:ルネ•クレール『沈黙は金』(1946)
初老の映画監督と撮影所で働く青年は、女優として活躍し始める同じ女性に恋することに。彼女は監督がかつて恋した女優の娘でもあった…。年の離れた三角関係を牧歌的に描くが、老いの自覚が脚本を引き締め、味わい深い作品になった。さすが名匠。


2012年10月14日(日)
映画メモ:バート•ケネディ『大列車強盗』(1972)
この頃には西部劇も様式化してしまっていたのか。緊張感は薄く、むしろ脚本の洒脱さが目立つ。ジョン•ウェインがどっしりと軸になっているが、紅一点アン=マーグレットに振り回されることに。寂れきった駅のセットや、安定したカメラも良い。


2012年10月15日(月)
映画メモ:フェデリコ•フェリーニ『甘い生活』(1959)
精神の荒廃した都市ローマで、形骸化した享楽に溺れる人々。主人公のゴシップ記者も、夢は破れ女性関係でだらしなさを露呈する。完全なる映像、役者、音楽を持つが、それもあってか重苦しい。逃げ場のない感覚、閉塞感ばかりが残る。


2012年10月19日(金) 
映画メモ:ジャン=ピエール&リュック•ダルデンヌ『息子のまなざし』(2002)
罪を犯した者を人は許すことができるのか。セリフをできる限りそぎ落とし、映像に語らせる。主人公にずっとまとわりつくような手持ちカメラも緊迫感を保たせている。僕が映画にやってほしいことはこういうのだ。


2012年10月23日(火)
映画メモ:リドリー•スコット『ブラック•レイン』(1989)
舞台は80年代末期の大阪。アクションとしては優れているかもしれないが人物造型にもう少し深みが欲しい。暴力的なのは苦手だが、さすがと唸らせるシーンがいくつかある。ハンス•ジマー独自のリズムの強い音楽が全体を引き締める。


2012年10月25日(木)
映画メモ:園子温『希望の国』(2012)
まだ早過ぎるんじゃないかと危惧していた。福島の原発事故を取り上げるのは。けど今の日本でこれ以外に撮る題材はあるか?と思い直している。正面切って描いてくれた。熱量は高いが冷静な語り口。内部で揺さぶられるものを丁寧に見つめていけばいいと思う。


2012年10月31日(水)
映画メモ:デルバート•マン『マーティ』(1955)
自分は冴えないブ男だと思っている主人公は、同じように考えている女性と偶然に知り合う。応援していた周りが、いざ恋人ができそうになると反対するのが面白い。心優しい、控え目な中篇。主演のアーネスト•ボーグナインは今年亡くなったのか。


2012年11月01日(木)
映画メモ:エリック•トレダノ&オリヴィエ•ナカシュ『最強のふたり』(2011)
境遇も出自も全くの対極にある二人が、介護を通じて本当の友情を見つけていく。障害が主題の一つではあるけれど、「大人」の良識を軽く笑い飛ばす痛快さに好感を抱く。実話を基にした脚本も秀逸で、これはおすすめ。


2012年11月06日(火)
映画メモ:クリント•イーストウッド『ブロンコ•ビリー』(1980)
大道芸の団長である誇り高きカウボーイは、子供や弱者には優しく、悪を挫き、仲間たちの信頼は篤い。そんな人間臭いヒーロー像を、主演も兼ね楽しく作り上げるコメディ調の異色作。子どもの心を思い出せる「古き良き」作品。

2012年11月19日(月)
映画メモ:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ『ある子供』(2005)
盗みでその日暮らしの主人公は、いざ子供ができても全くの他人事。ほんの思いつきのつもりだった行動は、周りを巻き込み自らを追い詰めていく。緊張感を失わない構成と演出で、ある一点に向かう。これが本物の作品か。


2012年11月21日(水)
映画メモ:バリー・レヴィンソン『レインマン』(1988)
幼さの残る青年は絶縁状態だった父の死をきっかけに、自分には隠されていた兄がいることを知る。彼は自閉症ゆえに施設で暮らしていたが…。好対照の主演二人が哀しくもおかしい。ハンス・ジマーの音楽も抑制されていて、よく合っている。


2012年11月22日(木)
映画メモ:クリント・イーストウッド『硫黄島からの手紙』(2006)
日本軍指揮官の手記を元に、この作家らしい冷静な視点で描く。暴走する愛国心への違和感、敵味方とも共通する家族への思い。人としてどうあるべきか。戦場にいる誰もが、私たちと寸分違わない人間だということを教えてくれる。


2012年12月31日(月)
映画メモ:ワン•チュアンアン『トゥヤーの結婚』(2006)
中国は内モンゴル自治区。牧畜民として過酷な環境で生きる主人公が、家族を守るために選んだ道とは。脚本が良い。演者たちの存在感もある。荒ぶる自然を捉えたカメラと、素朴だが説得力ある音楽。一般受けしないだろうが、質の高い作品。

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