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映画「告白、あるいは完璧な弁護」「Pearl パール」のこと、「ものごとのかたち」展のこと、

7月×日
シネマート新宿で「告白、あるいは完璧な弁護」(ユン・ジョンソク監督)
殺人の容疑をかけられたIT企業の社長を担当することになった敏腕弁護士が、容疑者の社長から話を聞いて事件をたどり直す中で、思いがけない真実が・・・みたいな話。

序盤の、次第に事件のアウトラインが見えてくる辺りまではかなり面白く見ていたのだが、だんだん集中力が無くなって来た。
これは単に趣味の問題なのかもしれないが、ウソの回想シーン・・・登場人物の誰かが「あの時はこうで」みたいに話す(そしてそれを映像で見せる)のだがそれが実は嘘で・・・っていうやつがどうにも苦手で、それをやられるとシラケた気分になってしまう。
ミステリー小説とかで「あの時は○○だった」と誰かが嘘をついている場合、それはその誰かの証言、とか手記とかで表される。決して小説の「地の文」で「あの時は○○だった」とは書かれない。当たり前だ。
しかし映画でウソの回想シーンがあると、小説の「地の文」でウソが書かれたような感じがしてシラケてしまうのだ。
「羅生門」みたいにいくつかの食い違う証言があるけれどもどれが本当かわからない、みたいな趣向ならいいんだけど、単なる偽証を映像にされるのが苦手・・・ということでこの映画もちょっと乗れなかった。
ウソの回想シーン?別に気にならないけど、という人には楽しめる映画かもしれない。
なかなか色々考えられているなあ、という感じはした。
韓国映画はそんなに見ないので役者の名前は全然わからないが、皆なかなか存在感有り。

7月×日
TOHOシネマズ日本橋で「Pearl パール」(タイ・ウエスト監督)

去年観た「X エックス」という映画の前日譚、ということらしい。
前日譚なので、前作を観ていなくても特に問題ない。
「X エックス」はアメリカの田舎に映画撮影のために行った若者たちが殺戮される、という話。
年を取ってくると、人がひどい死に方をするのを楽しむみたいな映画が昔より苦手になって来て、前作もちょっと辟易する、というところがあったのだが、雰囲気作りとか、場面転換のセンスとか、「オッ、いいね」と思わせるところはあった。

「X エックス」は70年代が舞台だったが、今回の「Pearl パール」は第1次世界大戦の頃だから前作より50年以上前の話。

救いのない話だし、主人公のパールはイカレているし、ウジ虫が蠢く様をしつこく見せられるし、あまり楽しくないのだが撮り方は実に良い。
技法的にも、ワイプとかアイリスアウトとか使われていて古き良き映画っぽいし、特に最後の殺人のシーン、被害者が先に家から出て、そのあとゆっくりとパールが家から出てきて斧を手に取り、ってあたりの撮り方/呼吸が抜群に良かった。

前作もそうだったが、目をそむけたくなるような内容を、非常にセンスの良い撮り方で撮ってくれる感じ、うーん・・・。

まあ良いか悪いかで言えば良い、のだが・・・。

7月×日
初台のオペラシティにあるNTTインターコミュニケーションセンターで「ICCアニュアル2023ものごとのかたち」展

「拡張された現実世界としての仮想世界が、私たちの生活環境として浸透しつつある現在、物事や出来事のかたちはどのように変化するのか、私たちの記憶、ふるまいはどのように表されうるのかを、さまざまな異なるテーマの作品から考察します」
とのこと。
何のことやら、という感じだが、確かに実際に見て回っても多種多様な作品があって説明は難しい。
でも「全然興味がわかない」という作品は無くて、全般に楽しく見ることができた。

なんと言っても空いているのが良かった。
この展覧会が来年の一月までずっとやっているということもあるのだろうし、もちろん平日の昼だったということもあるのだろう。夏休みに入れば少しは混むのかな?
ともかく快適だった。
入場料500円だし、もう一度行ってみてもいいかな。

一番印象的だったのは無響室というところで体験するサウンドインスタレーションの作品。
無響室に一人で入るので、人が多いときは整理券を配るらしいが、この日はすぐに入れた。
作品はいくつかあって、とりあえず一番短い作品(5分程度)を選ぶ。
小さな部屋の真ん中にイスが一脚あって、そこに座る。

係の人が「気分が悪くなったらこのボタンを押してください」といって椅子の座る部分の下にあるボタンの説明をしてくれる。
係の人が出て行くと明かりが消える。

本当に真っ暗で何も見えない。
まったく音もしない。

何も見えず何も聞こえない場所に一人で座っているのはちょっと怖い。
たしかにこれは苦手な人はダメだろうな、と思っていると耳の後ろ、あるいは頭の中でなにやら紙をくしゃくしゃ丸めるような音がする。あるいは人の息づかいが。あるいはまた他の音が・・・。
最初に5分くらい、と聞いていたからよかったが、時間を聞かされていなかったらけっこうな恐怖だったと思う。
なかなか得難い経験だった。

これは拷問に、あるいは洗脳にも使えるんじゃないかな、なんてこともチラッと考えた。

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