数ヶ月ぼくは平然とバイトを辞め、しばらく無職をやっていたのだけど、口座残高は底を尽きそうだし、世間の目もいよいよ痛いということで、あたらしく面接を受け直すことにした。 応募したのは事務系のバイトだった。ネットで偶然見つけた。 PC入力、ワードやエクセルが使えればとりあえずOKみたいなところ。 翌日、指定されたオフィスに着いて、すぐに悟った。 自分はあまりにも場違いなんじゃないかという気がした。まわりを見渡してもスーツ姿ばかりだった。 人けのない会議室に通され
朝は遅刻してばかりいます。 朝というか、昼間でも夜でも、遅刻は多い。ひどい悪癖です。 絶対直したほうがいいのに、直せない。でも、本当に直せないんでしょうか? 直す気がないんじゃなくて? 例えば行きたい場所があるとして、着替えたり何やらしているうちに、気づくとギリギリになってる。 ギリギリになってくると、最寄り駅まで疾走しなくちゃいけないこと、ずっと時計を見て行動しなくちゃいけないこと、満員になった会場にそろそろと遅れて入らなきゃいけないこと…とか考え始めて、何だか
ここ数ヶ月、朝日を見た記憶がありません。理由が自分でもわからないのですが、どうしても午前中に起きられないんですね。 睡眠時間にかかわらないようで、例えばしっかり前日の19時に寝ようが、当日深夜の4時に寝ようが、どちらにせよ目が覚めるのは正午を過ぎたあたりです。アラームを止めた記憶もない。どうしてなんでしょうか? 思えば、わたしは小学生のころからずっとそんな感じで、早朝の登校時間を清々しい気持ちで過ごせたことが一度としてありませんでした。 毎日、心底嫌な気持ちで通学
コンビニバイトを辞めたとき、人生終わった、と思った。 コンビニ店員すらできないのに、じゃあ、ほかに何ができるんだろう、という気がしたんですね。セブンとかファミマとか、日本にはコンビニが5.7万軒あるらしい。だいたい一店舗につき10人くらい勤めているので、単純計算で57万人。実際は、たぶん、もっとたくさんいると思う。「辞めます」って言った瞬間、ぼくはこの57万人からあぶれたわけです。 それで、「ほかに何ができるんだろう」という予感は的中して、その後、ぼくは本当に何もで
遠くでピアノの音が聞こえる 誰もいない教会で君は祈りを捧げる 「誰に許しを求めているの?」 「遠くの街で死んだ誰か」 娼婦がゲームに負けて この街に冬が訪れて 君の吐息が雪になって 犬と猫の区別がつかなくなって 僕の兄さんが戦争に駆り出された頃、 君は命を授かった もう死にたいだなんて言わないでね いつかそこには花が咲くから (古い新聞を閉じる) 何年も前にできた傷跡からは 時々 焦げた砂糖のような匂いがするんです そんな時 私はその傷跡をえぐって 溢れ出た血を 紅茶
人の死体を見て、なんて思えばいいのかわからない。世間的には、どういったリアクションが望ましいのでしょうか。 そういうとき、だいたいの参列者は泣いていたり、逆に穏やかな様子で笑っていたりします。「きれいな顔だね」と言葉をかけたりすることもあります。棺桶の開いた小さな扉から覗き込んで、誰も彼もがうなだれている。もう死んだ人を大勢が取り囲んでいて、それはある意味では異様かもしれません。 わたしは、何もしなかった。小学校の制服を着せられて、三十分ほど車に揺られているうちに、
昔、コンビニで接客のバイトをしていたのですが、それがなかなかしんどくて耐えられなかった。 次々やってくる客に対する恐怖というか、高圧的な人と当たる度に過去のトラウマがフラッシュバックするので、正直レジを打てるような精神状態じゃなかった。そのうち(比喩ではなくマジで)泣きながら仕事するようになったんですが、そのせいで客からも先輩からも不気味がられていました。 これは結果論ですが、涙を流すのって身を守る一種の方法だったんですよ。理由もわからず延々と泣いてる店員に向かって怒