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「UXデザインの法則」まとめ。ディレクターが知るべき10のデザイン法則とは

UXデザインの法則ー最高のプロダクトとサービスを支える心理学」を読みました。

この本は、Jon Yablonski氏が運営するwebサイト「Laws of UX」に掲載されている内容をもとに構成されているとのことで、UXデザインに活用できる心理学の10の法則を紹介しています。

カラフルで読みやすく、ボリューム的にも覚えやすい!とても勉強になったので、掲載されている法則を紹介しつつ、学んだことをまとめてみます。

最初に:なぜUXデザインに心理学が必要なのか

この本によると、そもそも著者がLaws of UXを立ち上げた背景として「定量・定性データがない中、デザイン上の意思決定をプロジェクトの関係者に納得してもらう上で心理学が役立つと思った」ことがあるようです。

「意思決定者に対していかに納得感を与えるか」という点、私自身が現在クライアントワークをしていることもあり、身にしみました…!

担当者の好みでデザインが決まったり、その後の社内承認のプロセスの中で、これまた承認者の好みで方針が全然変わったり…こんな風に振り回され続けないためにも、こちらの軸を示すことが必要だと感じます。

そして、その軸のひとつになり得るのが心理学。プロジェクトを前に進めるためにも、デザイナーだけではなく制作に携わる方全てがデザインの法則を知るべきと思いました。

前置きが長くなりましたが、いよいよこの本で紹介されているデザインの法則10こを紹介していきたいと思います。

①ヤコブの法則:ユーザーは慣れ親しんだ挙動を期待する

たとえば、リンクテキストは青色や下線だとリンクとして認識されやすい。これは、青色がブラウザのリンクテキストのデフォルトで、一般的に広まっているからです。

独自性や新しさを追求しすぎるのは、UXデザインの観点ではよろしくない。オリジナリティよりも、分かりやすさを大切にしたいです。

②フィッツの法則:ターゲットに至る時間は、ターゲットの大きさ・距離で決まる

「リンクボタンは押しやすい大きさになっているか?」「リンク同士に充分な余白があるか(誤タップにつながらないか)?」webサイトのデザインをチェックする時にも必ず確認するポイントです。

推奨サイズは団体ごとにいろいろな説があるようですが、最小でも1cm×1cm程度は確保することが望ましいようです。

③ヒックの法則:意思決定にかかる時間は、選択肢の数と複雑さで決まる

24種類のジャムと6種類のジャムを試食て高倍率を比較した時、前者が3%、後者が30%だったというコロンビア大学の実験があります。

選択肢が多いほど選べない。だからこそすべての機能を盛り込まず、ユーザーにとって本当に必要な機能を残すようにします。

④ミラーの法則:短期記憶で保持できるのは7(±2)個

本によると、これは「選択肢を7つに留めましょう」という話ではないとのこと。ポイントは「保持できる記憶に限りがあるからこそ、情報のチャンク(かたまり)化を意識するべき」という点のようです。

たとえば、電話番号を記載する際、下のようにチャンク化された方が覚えやすいですね。
・0123456789
・(01) 2345-6789

テキストも、同じ大きさで羅列するのではなく、見出しは大きく、本文は小さくなどしてまとまりがわかるようにすることが大事です。

⑤ポステルの法則:出力は厳密に、入力は寛容に

さまざまな言語や方言、言葉づかい、質問の仕方を認識できること、テキストや音声、顔認証などのあらゆる入力形式に対応することを含め、多様な入力方法でのアクセスを可能にすることが期待されています。

一方で、ユーザーには明確なフィードバックを提供することが必要です。たしかに、フォームのエラーメッセージで「パスワードは○文字以上で入力してください」くらいピンポイントでフィードバックがもらえるとありがたいです。「ユーザーかパスワードが間違っています」「エラーが発生しました」とかだと、モヤッとする…!

⑥ピークエンドの法則:経験の評価は、ピーク時と終了時で決まる

これをユーザー体験に応用する例として、たとえばフォームを送信する瞬間、送信した瞬間にポジティブで安心感を与えるメッセージやビジュアルデザインを表示するなどが挙げられます。

逆に、ネガティブになり得る体験(404エラーページなど)では、ユーザーのネガティブな感情を軽減できるようなメッセージなどを表示することなどが可能です。

⑦美的ユーザビリティ効果:見た目が美しいデザインは使いやすいと感じる

本によると、同じ機能で見た目の異なる携帯電話で被験者に操作をさせたところ、見た目が魅力的な携帯電話で操作をした方が、タスクの完了時間が短かったという実験があるそうです。

機能だけではなくビジュアルの美しさも大切なようです。ビジュアルの美しさについては、また今後別の記事でまとめたいと思います。

⑧フォン・レストルフ効果:似たものが並んでいると、異なるものが記憶に残りやすい

「ボタンや通知など、注意を促したい要素が明確にわかるか?」このような情報は、大きさや色のコントラストを利用して視覚的に強調することを意識しましょう。

⑨テスラーの法則:どんなシステムにも、それ以上減らすことのできない複雑さがある

たとえば、Eメールでは宛先のアドレスと差出人のアドレスが必要になるように、目的の達成において必須の要素が存在します。

このとき、途中まで入力すると候補のアドレスが表示されるようにするなど、いかにユーザーの負荷を軽減できるかを考える余地があります。

⑩ドハティのしきい値:コンピューターとユーザーが生産的になるのは、応答が0.4秒以内のとき

技術的に読み込みが早くなるよう実装することはもちろん、デザインによって素早いレスポンスを表現することが大事です。

たとえば、プログレスバーを設置して経過がわかるようにする、画像以外を先に表示するなどして、処理の間もユーザーを引きつける工夫をしましょう。

最後に:デザインの法則を活用する上で留意するべき点

この本では、これまで読んできたUXデザインの手法の本ではあまり触れられていなかった「UXデザインの負の部分」にも触れられています。訳者あとがきには、以下のように記載されています。

本書で紹介された行動経済学や認知心理学の知見はとても強力で、ユーザーを良い方向にも悪い方向にも導くことができます。

「悪い方向」は、ダークパターン(ユーザーが意図しない行動を行わせる技術。例:ECサイトで在庫が僅少であることをほのめかして購買を煽る)のように意図的に設計される場合と、そうでない場合があるようです。

Nielsen Norman Groupのポッドキャスト「Ethics in UX」では、デザインは、デザイナーが予想もしなかったネガティブな使われ方をされる可能性があると述べています。

ポッドキャストの中で上がっていた事例はAirbnb。日本ではあまり耳にしませんが、アメリカでは特定の人種のゲストに部屋を貸さないホストが発生したなど、人種差別的な問題があったとか…

だからこそ、デザインが招き得る最悪の結果を考え、どのように対処するべきか、またそれらの発生を防ぐために何をするべきかを考えることが大切だとポッドキャストでは述べられています。

UXに取り組んでいると「ユーザーのため」という前向きな側面に目が行きがちですが、それだけではなく周囲がもたらすさまざまな可能性を意識する必要があることを強く感じました。

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