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お宝出てきた。Jacob & Josef Kohn

曲木の椅子でよく知られているのはトーネット社。
この名前は世界で曲木の椅子の代名詞として知られています。
無垢材を蒸気で曲げて大量生産できるタイプの椅子で、
座面の多くは籐を編んだものでできていることが多いのが特徴でもあります。

曲木技術は座面の縁、背や脚と全てのパーツに見られることもありますが
そこから派生して
座面のみ、または座面と脚のみ、など、いろんなデザインを可能にした技術です。

修復作業では、ネジを外して完全に分解するのが可能な上に
角のない丸い筒状の無垢材なので
作業がしやすいありがたい椅子でもあります。

さて、そんな世界中で知られているトーネット社と肩を並べて
同じく曲木の椅子を生産していた会社があります。
オーストリア・ウィーンのJ.J. Kohn社。
正式にはジェイコブ&ジョセフ・コーン。

今回はそのJ.J. Kohn社のオリジナル椅子のお話。

工房をオープンする3年ほど前、使われていない民家を借りて修復作業を始めていた頃
とりあえず手始めに師匠・フリアの工房からいくつかの家具を譲ってもらい
それらの家具を蘇らせて、アンティーク市や骨董市で売っていました。

そんな中にあった椅子。
汚れた合皮が張られていて
アンティークには見えないし
クラシックなラインなのでヴィンテージとしてもイマイチ通用しない。
どうしようもなく中途半端な状態でした。
でもその背の曲木のカーブが妙に美しく、フリアがずっと捨てられずにいた椅子です。
このカーブ、触ると違いがわかるんです。


アンティークでもない、ヴィンテージ感もない。微妙な状態。

とりあえず、合皮を剥がせば何か可能性が見えてくるかも、

合皮を剥がしたらびっくり、

中から現れたのはJ.J. Kohn社の特徴でもあるスタンプされた座面!!


JJ Korn特有の美しいスタンプ柄が!

ゾゾゾっと鳥肌に立つ瞬間です。

座面の裏についていたラベル印でJ.J. Kohn社のものと分かりました。
ウィーンとの記載もあり生産No.も推されています。


しっかりと社名が刻まれています。
製造番号らしい。
脚と座面のナンバーはしっかり一致。

以前の持ち主は、何がどうなったのかわかりませんが
この美しすぎる座面にドリルで穴を開けて(しかも三箇所!)
さらにその後座面に合皮を貼ったと見られます。
なんということだ・・・。

穴はパテで丁寧に埋めてスタンプに沿って柄を写し修復。
なんとか見られる状態になりました。



派手ではないんです。
でもしっかり価値を漂わせる美しさがあります。
今でも工房のお宝として自分のオフィス椅子に使っています。

修復屋冥利に尽きる体験でした。


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