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矢稼ぎニギライズってローグライクか? - 風来のシレン6レビュー

風来のシレン6の良さ

風来のシレン6、めちゃくちゃ面白い

子供の頃に風来のシレンGB2※を遊んだとき以来の復帰で、楽しめるか心配だった。しかし、まったくの杞憂だった。私のような、シリーズ経験者 (またはゲーム配信で知っているだけ) で、最近遊んでなかった層にとっても、かなり楽しめるゲームだと思う。

※いま調べたら20年以上前のゲームだった。鍛えまくった秘剣カブラステギをロストして、もう二度とシレンは遊ばない、と当時は思った。

追加ダンジョンが楽しみすぎて、前作・風来のシレン5にまで手を出し始めた。アイテムのバリエーションや昼/夜の要素など、シレン6で採用されなかった様々な要素があって、これはこれで楽しい。
その一方で、このような要素を削ぎ落として “風来のシレンらしさ” を追求した最新作は、なかなかの英断だったと改めて思う。実際、シンプルで (シンプルだからこそ) 十二分に面白いのだから驚きだ。

特にメインのシナリオについては、武器や盾を鍛えて、しっかり準備をして挑むぞ!という感じではなく、毎回新たな気持ちで手ぶらで挑むような、初代『風来のシレン』のような気軽さを考えています。

『風来のシレン6』開発者インタビュー。長き時を経て新作が出る理由、ローグライクゲームとしてのこだわりが熱く語られる - AUTOMATON

基本は手ぶらでダンジョンに挑んで、取捨選択しながら物資を集めて、ハプニングに対してアドリブを駆使しながらクリアするのが醍醐味だと思う。
(もちろん、鍛えた装備を持ち込むダンジョンもあって、それはそれで面白さがある)

何度も敗れてきた経験や知識を駆使しながら、なんとか一時しのぎして乗り越えるのが、いかにも風来人っぽくて楽しい。インタービューをみると、そのような風来のシレンの本質とも言えるゲーム体験を大切にして作り上げてくれているのだと思った。

稼ぎ要素の是非

さて標題の件だ。

本シリーズには熟練プレイヤー達が編み出してきた稼ぎテクニックがある。うまくモンスターに矢を打ち損じさせて、あるいは罠をうまく作動させて矢を稼ぐテクニック。アイテムを食料に変えてくるモンスターを逆手にとって食料確保・満腹度上限の強化を行う “ニギライズ” というテクニック。クリアには必須ではないのだが、99階まである最終ダンジョンにおいてはクリア率がかなり違ってくる。この手の稼ぎテクニックの他にも、店で売買する値段からアイテムの識別を行っていく手法もある。

抜け道的で面白いテクニックではあるのだが、ゲーム性としては議論の余地があるのでは、とも思う。違和感を覚えるポイントは2点ある。

1点目は、これらのテクニックはゲーム外から引き継がれたものである点だ。
本作のようなローグライクゲームは、リトライを繰り返していくうちに蓄えられた経験や知識を駆使するのが楽しい。しかし、これらの伝統的なテクニックは、ゲーム内でプレイヤーが気づいていくものというよりは、口伝 (攻略サイトともいう) で他プレイヤーから仕入れることが多いだろう。
プレイヤー自身の成長を楽しむローグライクのゲーム性においては、少し邪道な感じがするのだ。

2点目は、時間をかければリターンがあるという点だ。
ローグライクでは物資の取捨選択が非常に重要になる。困った時に物資を使うという行動は、将来への備えを減らすリスクをとり、現在の状況を改善するリターンをとるべきかという駆け引き要素・ゲーム性がある。しかし稼ぎテクニックはそういった駆け引き要素が小さい。時間をかければかけるだけ状況が改善する。リスクとして犠牲にしているのは、ゲーム内の物資ではなく、ゲーム外の資源 (プレイヤーの時間) が主だ。それ自体が悪いわけではなく、一般的なRPGではよく見られる構造だとは思うが、それをローグライクに取り入れるかは議論のあるところだろう。

色々と理屈を述べたが、いちプレイヤーとしてのシンプルな感想は、稼ぎは時間がかかって面倒という感じだ。もともと出来ないようにしてくれれば苦労しないのに、とも思う。つまりテクニック自体に否定的な印象を持っているというわけではなく、むしろ実行できてしまうのであれば稼がない手はないと思っている。
それゆえに、ゲーム側から制約されたたほうが、ローグライク的な面白さに集中できるのではないかと思ったのだ。

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