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「現金給与報酬」か「株式報酬」か - 就職/転職先や起業はこの視点をしっかり考えることが大切

こんにちは。ようた@英語コーチ&フィンテック(Fintech)アドバイザー& FP (Financial Planner)です。

20数年前、私が大学で就職活動を行っていた時の私の頭の中には起業という考えはありませんでした。私が、少しだけ持っていた起業的な考え方でいうと、ちょうどパソコンでアフィリエイト広告というものが流行り出した頃で、(野球のイチロー選手がバリューコマース社に投資したなんてニュースもありました)自分でHPを作ってアフィリエイト収入を得る程度の考え方でした。今で言う副業という部類でしょうか?

月日が流れて、今、私は外資系企業で働きながら、起業準備をしていますが、就職することで得られる現金収入と株式報酬について、この記事では少しまとめておきたいと思います。この記事は、就職活動をしている学生の皆さん、転職活動をしている社会人の皆さん、起業を考えている方全ての人に参考になるかと思います。

就職するということ

就職するということはどういうことでしょうか?「仕事を通じて自己実現する」というような回答が模範解答のように私が就職活動をしていたときは記憶しています。しかし、一般社員の立場からすると、会社と労働契約を結んで、それに対する対価=給与報酬をもらうというすごくシンプルな理解の方が一般的だと思います。

就職する=働く=対価となる報酬をもらうということはおそらく多くの方が理解しているかと思いますが、この対価となる報酬については、一部日本のやり方や我々日本人の考え方が古くなってきている点がありますの、この記事では掘り下げて考えます。なお、「やりがい」、「社会貢献」、「SDGs」なども会社からの報酬の一つとして考えられるかもしれませんが、この記事では、給与など金銭報酬と株式報酬に限定して考察していきます。

報酬の種類

給与など現金報酬

日本企業の多くは従来この「現金報酬」を労働の主な対価として設定してきました。毎月の給与はこれだけ払いますよ、頑張ったらこれだけボーナスを支払いますよ、年功序列で長い年数働いてくれれば、これだけ増えていきますよ、退職金はこれだけ支払いますよ、という設定です。

これに加えて、日本の大企業と呼ばれる会社は、福利厚生として、保養所などの施設を有していたり、保険制度の一部として、生命保険への加入であったり、テーマパークやホテル利用の費用の一部補助があったりします。

また、日本においては社会保険制度と給与や賞与の支払いが源泉徴収という仕組みで結びついており、健康保険料や年金保険料の支払いも一部会社負担になっています。

労働者として大企業、中小企業、スタートアップをとわず企業に就職して、会社と労働契約を結ぶと、上記のような「現金報酬」が労働への対価として直接的、間接的に支払われるのです。

日本においては、新卒時にモデル月収や福利厚生みたいな情報(のみ)が公開されている事実が金銭報酬をベースにした労働契約を結びますよということを如実に表しています。

しかし、世界の報酬制度はすでに次の段階に進化しているのです。

株式報酬

会社と労働契約を結ぶことによるもう一つの報酬の仕組みが株式報酬です。株式報酬の詳細をお話しする前にアメリカと日本の賃金の上昇率について確認しておきましょう。

アメリカの給与水準は増加しています。社会保障局のデータでは1991年から2019年までの28年間で、中央値は約2.3倍、平均値は約2.5倍に上昇。具体的な数字でいうと、1991年の給与は平均額「20,923.84ドル」、中央値「15,075.94ドル」でした。それが2019年にはそれぞれ2.48倍の「51,916.27ドル」と2,27倍の34,248.45ドルに増加しています。

ちなみ同期間の日本の給与は、平均値が1991年の約425万円から2018年の422万円に微減となっており、中央値にいたっては1993年の約388万円から2018年の359万円へとハッキリ減少していることがわかります。

https://wm.openhouse-group.com/columnから引用

ここで言うアメリカの賃金とは、現金報酬による賃金であると考えられます。アメリカでは少なくとも現金報酬部分においても過去30年で2倍以上になっているわけで、ここに多くのテック系企業を中心に株式報酬が上乗せされています。(日本との比較という意味ではインフレ率なども考慮しなくてはいけませんので、単純に可処分所得が2倍になったとは言えないと点は注意してください)

さて、GAFAMなどを中心としたアメリカのテック系企業やスタートアップ企業は、株式報酬も含めたTotal Compensation(総報酬)制度を採用しています。これは、現金報酬+株式報酬=総報酬で個々人の報酬を計算する考え方です。例えば、現金報酬1000万円+株式報酬200株(1株100ドルなら$100*200=$20,000=約270万円)=総報酬1270万というような形で計算されます。

ソフトバンクグループ2022年3月期決算資料より引用

上記のグラフは1994年から2022年までの世界の時価総額の推移を示しています。1が2400になっているのはちょっと意味がわかりませんが、過去10年くらいを見ても10倍から15倍くらいになっているイメージでしょうか。

Amazon 株価推移

上記はAmazon個社の株価の推移です。2012年からの10年で比べると11ドルが188ドルに17倍くらいになったものが今はだいぶ下がってますがそれでも9倍くらいになっています。

ここで注意が必要なのは、先ほどの例であげた総報酬の計算で200株という数値です。例で挙げた200株というは株式は、株式として持っておくことも売って現金とすることもできます。先の例で、もらった日の株価で売ればその年の報酬は1270万と確定することもできますし、10年後に上がると思えば、10倍や20倍になった株価で売却することで、実質その年の報酬は未来から遡って考えれば2000万円でも3000万円にもなるということです。

株式報酬の種類

株式報酬の種類を大別するとStock Option (ストックオプション)と呼ばれるものと、Ristricted Stock Unit(制限付き株式)と呼ばれるものに分けられます。

前者(ストックオプション)は、事前に株式を安価に購入することができる権利を購入もしくは付与される形になります。例えば、Amazonの株式を$1で購入できる権利を持っていた場合、この権利を行使すれば($1を払う必要はあります)、いきなり含み益が$100を超えた状態でAmazonの株式を保有することができるのです。売るタイミングがそれぞれが自由に決めることができます。

後者(制限付き株式)は、一定の条件を満たした場合に、株式自体を(一般的に無償で)取得することができる制度です。例えば、会社との間で、勤続1年後に200株を取得できるというような約束をします。200株は将来もらえる権利になりますが「勤続一年後」という条件がありますのでその間は保留され、1年後に従業員のものになります。(これをVestといいます)Amazon株のような時価がついている株式をVestした場合は、その日の時価で給与所得として確定申告をする必要があります。Vestされた株も従業員が売るタイミングを自由に決めることができます。

株式報酬におけるとっても大事なポイント

ストックオプションにしても、制限付き株式にしても、理解しないといけない大事なポイントは、1) 企業の成長=株価の成長は賃金(現金報酬)の成長を上回る可能性が高い、2) 現金報酬だけを労働対価にしている企業においてはこれら株式報酬で見られるようなアップサイドを期待することはできない。という点です。

優秀な人材を採用しなければいけない日本の企業側もそろそろこの事実に気づかなければ、優秀な人材はどんどん株式報酬制度がある企業に取られてしまうでしょう。(とは言っても、日本の株式市場は冬眠状態なので、レガシー系大企業(多くのしがらみがある大企業)では難しいかもしれません)

ただ、(いい傾向として)国内においても以下のようなメルカリのストックオプションの事例や株式報酬制度をサポートするNstockのような企業を見つけることができるようになってきています。

メルカリでは、ほぼ全ての社員にストックオプション(株式購入権)を与えているとも聞きました。どういった意図からでしょうか。

「私自身が、何もないときに何億円も投資してもらったり、育ててもらったりしてきました。その経験があるので、自分も創業者利益がどうこう、というよりは、会社として得た利益をみんなで分かち合いたいと思ったからです」

メルカリ社長 山田進太郎氏インタビュー
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO07621720W6A920C1000000/より引用

就職や転職で考えるべきポイント 

ここまで書くと、株式が下落した場合はどうするんだというコメントをいただくかもしれませんが、ソフトバンクの孫さんが言っているような「短期的な下落はあるかもしれないが、成長企業の株価や市場全体の時価総額は長期的には成長する」という現在の資本市場の真理のようなものを信じられるかどうかだと思います。

アメリカでは優秀な学生が就職する時に考える順番は以下のようになっているという記事をどこかで読みました。(弁護士や医者などの資格系以外の仕事における整理です)

1) 自分で起業
2) いけてるスタートアップの創業メンバーで株式報酬がもらえるところ
3) いけてるスタートアップで株式報酬をもらえるところ
4) GAFAMなどの大手テック企業などで株式報酬がもらえるところ
5) 金融機関、ファンド、投資銀行、証券、コンサルなどの現金報酬が高いところ

このうち、1)の「自分で起業」というのはまさに100%の株式を自分でコントロールするところから始まります。2)、3)、4)については株式報酬が見込め、成長の余地や裁量権が高い順い順になっています。一般的に大企業と呼ばれる従来型の企業はこの優先順位の考え方では5番目のグループになってしまうのです。(多くの日本の大企業や中小企業への就職や転職ではこのグループしか選択肢がないのが現状です)

改めて自分で起業という選択肢を考える

自分で起業という選択肢は、新卒時だけではなく、30代、40代、50代になればなるほど、重要な選択肢のような気がします。起業といっても、イコールIPO=株式上場というわけではありません。大企業に買収される(M&A)という選択肢も今後は全然考えられると思います。最初は個人事業から始めて、軌道に乗り始めてからスタートアップ(会社化=仕組み化)してもいいわけです。

例えば、月の利益が100万円でる会社を仕組み化できたとします。このレベルだと大企業からすれば無視できる水準ですし、株式上場できるレベルの企業でもないかもしれません。それでも、毎年1200万円の利益をしっかり出せる会社であればM&Aの相場では1億円前後(8倍)の評価額がついてもおかしくないと思います。

毎月安定した給料(現金報酬)をもらうというのも非常に堅実で、右肩上がりの経済が期待できたバブル崩壊までの40年くらいは成り立ったのかもしれませんが、もうこの考え方は変える時期に来ているような気がします。

まとめ

この記事では、労働の対価としての、「現金報酬」と「株式報酬」についての考え方をまとめてきました。これまでの特に国内企業においては、「現金報酬」部分のみを比較対象にして、年収などを比較してきましたが、今後は「株式報酬」の視点がとても大事です。
起業もリスクがあるなどと一括りにするのではなく、「株式報酬」にウェイトをおいた働き方の一形態と考えることができるのではないでしょうか。


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