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伝記(偉人)の取り扱い方 NO1

本シリーズでは、道徳科の授業において、どの学年でも出てくるけど、「なんか上手く取り扱えない」という声が多い伝記(偉人)教材について、私なりに迫ってみたいと思います。これは、完全に私独自の考え方なので、共感できないかもしれませんが、シリーズの最後までお読みいただき、少しでもお役に立てば幸いです。

1 アナロジー思考

前号で、①偉人の生き方(行為)のみに着目するのではなく、その人の考え方や葛藤などにも目を向けることの必要性。また、②視点や観点を変えて考えさせることがポイント。ということを述べました。
しかし・・
どうすれば、そのような視点や観点で教材を読み解くことができるのでしょうか。
それは・・
アナロジー思考を働かせることです。

アナロジー思考とは
日本語で言うと「類推」に近いと思います。
つまり「類似のものから推し量る」ということです。
私たちは、新しい服を買っても改めて「服を着方」から学ぶことはありません。
たいていのことは、これまでの経験からの類推で考えて解決していきます。
そして、このアナロジー思考を意識的に働かせることで、教材を多様な視点や観点から見ることができるようになります。

参考文献:細谷功「アナロジー思考」東洋経済新報社

道徳関係の書籍の中に、教材を読むときに
「教師として読むのではなく、一人の人間として読む」
ということが書かれてありました。
最初はどう言うことだろうとギモンに思っていましたが、
私なり解釈すると、
教材を読むときに、「何が教えられるか」という教師の視点で読むのではなく、主人公と自分の生き方と類推させることで、「あの瞬間は、どんなことを考えていたんだろう」「葛藤はどのように乗り越えたんだろう」とアナロジー思考を働かせることの必要性だったのだと思うのです。
さらに、アナロジー思考には、「欠けているもの」に気付けたり、「新たな視点」へ導いたりすることもできます(図1)。

【図1 アナロジーのメカニズム】

伝記(偉人)教材も、アナロジー思考を働かせることで、偉人の生き方を様々な視点や観点から考えることができるのはないでしょうか。

2 アナロジー思考を用いる際のポイント

とは言われても・・
「簡単に活用できるものではない」と言われそうなので、ポイントを説明します。
ポイントは・・・
「抽象度を上げる」です。
例えば・・・
【マザー・テレサの教材を取り扱った場合】

【内容項目】勤労、公共の精神
【主なあらすじ】
この教材は、ノーベル平和賞を受けたマザー・テレサの生涯を描いた話です。少女時代から修道女になると決めていたテレサは、18才でインドに渡ります。女学校の校長を任されたテレサは、ボランティア活動を始める決心をする。そして、マザー・テレサと呼ばれるようになったテレサは、貧しい人々のために尽くした。最初は一人でボランティア活動をテレサであったが、功績が認められ、ノーベル平和賞を受賞に至ったという内容です。

この教材の主人公マザー・テレサと何を類推したら良いのでしょう。
そう考えると・・・
陥りがちなのが、マザー・テレサに直接的に近いモノと類推したり、子どもの身近なモノと比べたりしてしまうことです。
例えば、以下のようなことをイメージしてしまいます。

そうすると、マザー・テレサとのズレが大きすぎるため、偉大さだけが見えてしまい。「すごいけど・・自分には、真似できない」という結果になってしますわけです。

そこで、もっと抽象度をあげて、以下のように考えてみましょう。

このように、抽象度をあげて考えると、「誰かが誰かにモノを与える」という構造が見えてきます。この構造に当てはめれらるモノでアナロジー思考を働かせるのです。
すると、以下のようなモノと比較することができます。

そして、「テレサが貧しい人へ与えているモノ」と「社長が社員へ与えているモノ」を比較することで、マザー・テレサの価値の本質が浮き彫りになってくるのです。

そして、次のような授業の視点を持つことができます。

以上のことをまとめると、以下の手順になります。
①教材の出来事や関係性の構造を崩さずに、抽象度を上げて抽出する。
②構造に当てはまるモノを探し、当てはめる(アナロジー思考)。
③その違いを考える。
④教材から子どもが学べることを浮き彫りにする。

そうすることで、伝記(偉人)教材でも、子どもの新たな気づきを促すことができるのです。

次号では「伝記(偉人)をいかす発問」について迫っていきたいと思います。

*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。

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