伝説の漫画雑誌「ガロ」(青林堂 長井勝一社長)の発行部数について

「ガロ」がどれだけ世の中に影響を与えた雑誌なのか、ということは多くの漫画家や評論家が語っています。

「ゴーマニズム宣言」の小林よしのりさんが語った言葉が、そのすごさを端的に表しています。

「青林堂は「ガロ」という伝説の漫画雑誌を出していた出版社で、わしも「SPA!」(筆者注・小学館)が掲載してくれなかった『ゴーマニズム宣言』の「かば焼きの日」を、原稿料なしで載せてもらったことがある。何でもいいから、「ガロ」に一回でも載せてもらったことは、わしの名誉でもある。それほど青林堂という名前には伝説的ブランド力があった」(参考「小林よしのりオフィシャルwebサイト」2015.05.14より)

小林よしのりさんはギャクマンガ(「おぼっちゃまくん」)と言論漫画(「ゴーマニズム宣言」)という、相対するジャンルのトップに立った漫画家なので、このコメントは重いものがあります。

「ガロ」の執筆陣はそうそうたる顔ぶれです(漫画以外の作家も)。

白土三平(創刊時の実質的なオーナー)、水木しげる、つげ義春、永島慎二、池上遼一、内田春菊、蛭子能収、佐々木マキ、滝田ゆう、福満しげゆき、みうらじゅん、あがた森魚、辰巳ヨシヒロ、赤瀬川原平、矢口高雄、糸井重里、石ノ森章太郎、安西水丸、荒木経惟、桜沢エリカ・・・

あげたらキリがありません。

画像1

編集長には南伸坊と渡辺和博がいました。

しかも、原稿料をもらっていない作家も多いのです。

経営難で支払えなかったのです。

どれだけの部数を発行していたかですが、正確な資料は残っていないので関係者の証言をまとめます。

創刊は1964年(昭和39)7月24日。

同年の3月17日に「週刊少年サンデー」(小学館)と「週刊少年マガジン」(講談社)が同日に創刊しています。

「サンデー」は30万部、「マガジン」は20.5万部のところ「ガロ」は1万部程だったといいます。

その後ガロは、4号から白土三平の「カムイ伝」が始まり、徐々に部数を伸ばします。

1971年(昭和46)には8万部発行しました。

ここを発行部数の頂点にして、「カムイ伝」の連載も終わり、部数も経営も下降していきます。

後に、経営母体が山中潤の「ツァイト」(ソフト会社)が1990年(平成2)に移り(青林堂は経営不振で買収されました)、起死回生の策で10万部を発行した号がありますが、実売は2万部にも満たなかったといいます。

買収された当時は実売が3,000部程だったので、発行部数も6,000部前後に落ちていたと推測されます。

ちなみに、マガジンは1970年頃に100万部を超え、サンデーも80万部でした。

マガジンは1998年(平成10)に445万部、サンデーは1983年(昭和58)に228万部の最高の発行部数を記録しています。

小学館は一時期、青林堂の買収を画策しています。

目当ては白土三平の「カムイ伝」です。

長井勝一が首を縦に振りませんでしたが、講談社と並ぶ最大手の小学館の資本が入って編集権は長井勝一に残っていれば、とも考えないではありません。

サンデーとマガジンについてはこちらもどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?