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香港発「マーケティングを腰を据えて行わない(できない)のはどうしてなのか」

■A社様(大手の飲食店チェーン)とのやり取り

WEBサイトから問い合わせをいただく、メールで2回ほどやりとりをした後に電話でお話しさせていただくことになりました。

<電話にて>

●弊社「それで今回はどのような案件なのでしょうか?」
○A社担当者様「弊社のソーシャルメディアがコロナの期間、ほとんど展開できなかったのですが、ここでリポジショニングをして復活したいと思っています」
●弊社「これまでの活動の評価ですとか、どのようなリポジショニングをされたいのか伺いたいので訪問させていただけますでしょうか?」
○A社担当者様「特に評価は無くて変えたいのです。来ていただく必要はないので、いつご提案いただけますか?」
●弊社「?」「方向性やゴール、ご予算や展開の規模については?」
○A社担当者様「オープンです。いつご提案いただけますか?」
●弊社「???」

という会話になったので、こちらからも明確なご返事はできずに一旦切らせていただいたのですが、何だかとっても残念な気持ちになりました。

何が残念かといって、ソーシャルメディアのリポジションングを行うなんて、もう絶対にがっつりと組んで汗流して取り掛かる(ボキャブラリー)べき大変なプロジェクトなはずだと思うのです。

誰もが知る大手チェーンでもありますし、課題をきっちり伺って、コンテンツの作り方、出し方、一貫性を持った提案をしたいのですが。全てオープンでいいよということではあまりいい提案ができそうにありません。

オープンというのは別の見方をすれば、仮説の設定からコンセプト、実施方
法まで丸投げということでもありますね。

香港の人々のライフスタイルもどんどん多様化している

- 上司からの指示なのか?
- この方自身の進め方なのか?
- そもそも本当に課題を感じているのか?
- あるいは簡単に解決できるものだと思っているのか?
- ブランディングとは(ソーシャルなら尚更)時間のかかる話だという認識を持っているのか?

なぜこのようなアプローチになるのでしょう?
→僕はその答えは香港で多くの人が共有している価値観にあるのだと考えています。

香港では

物事を素早く済ます

ことが多くの人が共有する最も大切な価値だと思います。

  • じっくり考える

  • コンセンサスを作る

  • ディテールにこだわる

  • 繰り返し行い、改善する

というやり方は、もちろんケースバイケースですが共感してもらえないことがあります。

”広告とはつまらない商品やサービスの為に支払わねばならない対価だ”
(ジェフ・ベゾス, Amazon)

では、どうして物事を素早く済ますことがいいのか?

それは香港という場所の成り立ちにも関わることだと思うのですが、次のような特徴があると思っています。

  • ヒト・モノ・金が世界から集まってきて、どんどん消費するか流していかなければならない

  • 自ら作り上げなくても商売のタネも資本も外から入ってくる

  • ヒトは、新しくて報酬のいい場所にどんどん移っていく

  • ヒトがいなくなれば新しい人をどんどん採用すればいい(市場にはどんどん資金が回っている)

ある意味、ものすごく恵まれた市場なのです。もちろん前提として関税のないフリーポートであることは言うまでもありません。

「ハイ!」

そして事業を行う方もダメならどんどん手を替え品を替えていくことになります。(なかなか日本人には難しそうなやり方ですよね)腰を落ち着けてじっくりとりかかろうとはなかなかならないのです。

例えば飲食チェーンなら、このブランドを展開する権利を外から買い付けてきて、儲けていればいいけれど儲からなかったら、別にブランドを買って来ればいいやと言うことになります。

もしそうであればブランド側のマーケターとしては腰を据えて頑張らなくても、数社のエージェンシーにオープンで課題設定から解決策、実施まで任せてしまう方が賢明なのかもしれません。ましてや自分達もどのくらいそのブランドにいるかも定かではないので。

刹那的。と言えるかもしれません。

でも、それでビジネスはきちんと回っていて、成長しているのですから面白いです。

マーケティングのバイブル。コトラー先生の「マーケティング・マネジメント」

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