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日本のキャッシュレス決済の現状と今後の展望

先日、経済産業省からキャッシュレスの将来像に関するレポートと、キャッシュレス決済比率の数字が公開されました。
2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました(2023/4/6 経済産業省)
「キャッシュレスの将来像に関する検討会」のとりまとめを行いました(2023/3/20 経済産業省)

すっかり間が空いてしまいましたが、私の前回の記事で触れた政府のFintech政策のKPIの1つ、「キャッシュレス決済比率」についてのフォローアップを兼ねて、これらを見ていこうと思います。

キャッシュレス決済比率の現状

2022年の日本でのキャッシュレス決済比率は36%。目標は2025年までに約4割ですので、概ね順調と見て取れそうです。
ここ数年の傾向としては、紫色のコード決済の比率の増加が目につきます。コンビニなど利用頻度の多いところでよく使われる決済手段ですので、体感としても納得感がある方も多いかなというところです。
ただ、額として見るとやはり比較的高額な決済で使われがちなクレジットカードの優位は揺るがず、引き続きクレジットカードの決済額も伸びていることも押さえておく必要がありそうです。

(出所)経済産業省「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」より画像引用https://www.meti.go.jp/press/2023/04/20230406002/20230406002.html

キャッシュレス決済はどこで使われているのか

「キャッシュレスの将来像に関する検討会」の中では、消費者に対する調査結果も報告されています。
決済金額が大きい時はクレジットカード、金額が小さくなるとコード決済や電子マネーが使われるといった形の傾向が、以下の調査結果からも見て取れます。私自身の体感とも一致するのですが、みなさんはいかがでしょうか?

(出所)経済産業省「キャッシュレス将来像の検討会(概要版)」より画像引用https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/pdf/20230320_2.pdf

業種別の支払い手段についても調査されており、比較的少額な決済の中でも、個人店などでは現金の比率が多くなるといった点など、つぶさに見ていくと面白い示唆が色々と得られるのですが、そのあたりはぜひ報告書本編をご覧ください。
例えば、個人店については、単にキャッシュレス決済の利用環境が整っていないということだけではなく、仮に利用可能であったとしても店舗側の決済手数料負担が申し訳ないといった心理も現金支払いを選ぶ理由に関係しているといった結果も紹介されていました。

(出所)経済産業省「キャッシュレス将来像の検討会(概要版)」より画像引用https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/pdf/20230320_2.pdf

事業者がキャッシュレス決済を受け入れる理由

また、キャッシュレス決済を受け入れる側の事業者についても調査が行なわれています。
キャッシュレスを導入する理由としては、機会損失の回避が上位であり、オペレーションの効率化といった理由は上位にはほとんど出てきません。

(出所)経済産業省「キャッシュレス将来像の検討会(概要版)」より画像引用https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/pdf/20230320_2.pdf

また、導入後に実際に感じた効果についても調査されていますが、メリット無しとの回答が約半数という状況です。

(出所)経済産業省「キャッシュレス将来像の検討会(概要版)」より画像引用https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/pdf/20230320_2.pdf

こちらの事業者(加盟店)向け調査も、他にも面白い結果が紹介されていますので、ぜひ本編ご覧ください。

キャッシュレス決済の今後の展望

こちらも検討会のとりまとめ内容の一部をまずご紹介できればと思います。BtoC領域だけでなく、BtoBやCtoC、あるいは行政との間でもキャッシュレスの活用を推進すべきとの方向性が示されています。
また、決済データを連携、活用することによるイノベーションの創出や、行政の効率化、効果的な政策立案・推進への期待感なども示されています。

(出所)経済産業省「キャッシュレス将来像の検討会(概要版)」より画像引用https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/pdf/20230320_2.pdf
(出所)経済産業省「キャッシュレス将来像の検討会(概要版)」より画像引用https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/pdf/20230320_2.pdf

こちらも、やはり本編をご覧いただくとそれぞれの要素についての具体的な説明や考察、また今後の取り組みの方向性などについても丁寧に記載されています。

最後に

今回ご紹介した「「キャッシュレスの将来像に関する検討会」のとりまとめ」は非常に充実したレポートだと思っています。紹介しきれませんでしたが、キャッシュレス決済比率の現在の定義についての課題なども丁寧に考察されていて、新たな指標の設定もしています(新指標では、2021年のキャッシュレス決済比率は約54%となるそうです)。
(もはや古巣の宣伝をする義理はないのですが、)このテーマにご関心の方はぜひ目を通されることをおススメします。

私たちマネーフォワードは、まさにデータの連携、活用を軸として、家計簿サービス『マネーフォワードME』や、会計、確定申告、経費精算などのバックオフィスSaaS『マネーフォワードクラウド』を提供しています。「とりまとめ」の中でも、家計簿サービスや会計サービスとの決済データの連携について触れていただいていました。
しかし、現状では、残念ながら一部の電子マネーやコード決済などとのデータ連携は実現できていないのも事実です。

今回のとりまとめを1つの契機として、キャッシュレス決済の更なる普及に留まらず、その先にあるデータの連携、活用を通じたより豊かなユーザー体験や社会の発展に向けて、官民で取り組んでいけることを期待していますし、私たちも努力をしていければと考えています。

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