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会計学の基礎

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繰延税金資産に関する理解を深めよう

繰延税金資産に関する理解を深めよう

1. 税金の支払いは、当期純利益を押し下げる

繰延税金資産は、税金の前払い部分を資産計上しているものです。法人所得税は費用ではありませんが、税引前当期純利益から差し引かれて、当期純利益が求めれられることを考えると、収益から差し引く点において費用と同じ性質を持っています(収益を押し下げる効果があります)。なので、繰延税金資産のことを考えるときに基本知識として理解しておくべきなのは、前払費用の

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その資産は本当に資産として相応しい?費用化の意味と「のれん」について考えてみよう。

その資産は本当に資産として相応しい?費用化の意味と「のれん」について考えてみよう。

財務会計論で使っている講義用の資料からの転載です。一部手直ししながら載せておきます。

今回のポイント:
 ・資産性と償却(費用化)の意味を考えよう。
 ・「のれん」の会計処理を巡る考え方の違いを理解しよう。

1. その資産は本当に資産として相応しい?

資産とは企業が支配し、便益を享受できる経済的資源です(概念フレームワークを確認しましょう)。しかしながら、貸借対照表の項目においては、「

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自分の2つの柱を確認する:会計プロフェッショナルへの貢献×社会インフラとしての会計の整備

自分の2つの柱を確認する:会計プロフェッショナルへの貢献×社会インフラとしての会計の整備

2020年の振り返りを今一度していこうと思います。

2020年はコロナの年として記憶されることになるでしょう。

私にとってはコロナは何を変えたのか?

なかなか語り切れないところはありますが、自分のスタイルを変えざるを得なかった年であったといえます。

色々とお付き合いいただく中で、コーディネーターとしての仕事を主にしたのが2019年でした。

多くの人とお付き合いさせていただく中での多くの気

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事業モデル、業界全体の状況を意識しながら数値をみる:会計数値、指標の活用術

事業モデル、業界全体の状況を意識しながら数値をみる:会計数値、指標の活用術

なかなか難しいと感じるのは事業モデル、業界全体を意識して、そして会計数値、指標をみる、ということかもしれません。

ここではヒントとなる考え方を示してみましょう。

1.事業モデルを意識してみるまず、前提条件とすると事業モデルを大まかでよいので思い浮かべて整理しておきましょう。

企業が企業に対する取引がメインなB to Bか、それとも直接、消費者、利用者に届ける B to Cか、を考えてみるとよ

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企業分析をする上での最低限の簿記知識は?:最初の簿記一巡の取引までマスターしよう

「企業分析をする上で最低限の簿記の知識はどれぐらいか?」

これ、なかなか難しい問いです。

というのも簿記の知識、スキルはあればあるほどよいからです。

正直、私は簿記自体はそんなに得意ではないです。

仕組みは知っていますが、たとえば、簿記、会計士試験の連結の問題を出されてても時間内に解けないと思います(答えをみれば全部仕組みは分かりますが)。

試験問題で出される問題は、総合的な簿記力を問う

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仮説⇔検証の往復こそが仮説思考:仮説思考×事業モデルの企業分析法

仮説⇔検証の往復こそが仮説思考:仮説思考×事業モデルの企業分析法

仮説って自分が思いたいことを思ってその証拠を探せばいいんですよね?

こんな質問が来ました。

これたまに(よく)ありますよね。

自分が実証したいことのデータを集めて、都合の悪い情報は入れないで実証したりすること(もしくは限りなくその影響を無視して行うこと)。

理論は単純化されていますが、現実は複雑です。

つまり複雑な現実を映しだすためには、他の情報ではなく注目したい情報にフォーカスを当てる

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会計学の基礎的なスキルセット:学習曲線を意識しながら我慢強く学ぼう

会計学の基礎的なスキルセット:学習曲線を意識しながら我慢強く学ぼう

会計学を学ぶためのスキルセットって何でしょうか?

スキルセットとは、職種や役職に必要なひとまとまりの知識や能力を指します。

今や既存の知識、技能だけで勝負するという時代ではなく、最低限の知識を身に着けた後は、学び方を学ぶ能力を培うことが必要である、と感じています。

VUCA時代ともいわれる現代、既存の知識、技能はすぐに陳腐化します。

*VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・

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仮説を立てて、ビジネスモデルを意識して分析を行う:Zoom Video Communicationsを事例に

仮説を立てて、ビジネスモデルを意識して分析を行う:Zoom Video Communicationsを事例に

企業のビジネスモデルを意識するためにはどうしたらよいのでしょうか?

まず必要なのは仮説思考でしょう。

いきなり答えを探しにいってもおそらく混乱します。

この仮説思考は、言ってみれば、コナン君になってください、ということです。

コナン君(シャーロックホームズでもいいですけど)は、事件が起きた時に、色々な見立てを行って犯人を捜しますよね。

犯人を捜すわけではないですけど、物事について自分なり

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投資のリターンと期間の関係を意識する:企業分析・投資分析のための第一歩

投資のリターンと期間の関係を意識する:企業分析・投資分析のための第一歩

1.企業は個別性が強い本当に企業を分析するのは難しいです。というのも各企業が行っている事業の個別性が強いですから。

教科書通りにこうしてください!といっても、

すぐに当てはまりせん!という事例がきます。

企業の事例を、会計情報を通じて深く分析するのは医者の診断に近いところがあります。

個々の置かれている状態や症例、どういったものが絡み合っているのか?

問題(病気)があるとすればどこにある

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キャッシュ化までの流れをイメージする:飲食店をケースに考える

キャッシュ化までの流れをイメージする:飲食店をケースに考える

「事業の投資⇒キャッシュ回収」

事業を続けていく上での基本です。

事業を投資しているにも関わらずキャッシュの回収が出来ない。

それは最悪の事態です。

企業は慈善事業体ではありません。事業の投資をキャッシュとして回収できなければ倒産します。

今、新型コロナかで起きているのは、事業の投資が予定通り回収できなくなかったことによるキャッシュの不足で倒産、もしくは事業の縮小という状態です。

なぜ

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投資の回収を意識する

投資の回収を意識する

投資をあなたはいつ回収しますか?

これ結構難しい問題です。

投資には有限と無限があります。

つまり期間が明確に決まっているものとそうでないものです。

期間が明確に決まっているものは楽です。

有限投資期間です。

投資<回収できるキャッシュの現在価値、

であれば投資をする価値がある、となります。

問題は計画通りいくかどうか、にあります。

また「初期投資」のキャッシュアウトを想定したモ

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良い問い(Why)を立てれば、How(どのように)も見えてくる

良い問い(Why)を立てれば、How(どのように)も見えてくる

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つまり、Who(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)

の構成を意識して文章を書くやり方です。

これは基本の話ですが、論文において意識するのは、WhyとHowかもしれません。

なぜ⇒どのように

の繋がりですね。

なぜ?

それがないと話が始まりません。

そもそも問いを立てられない人は、この辺りの本から入ってみ

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バランスシートの理解の仕方:負債、資本の考え方(資金調達から考える)

バランスシートの理解の仕方:負債、資本の考え方(資金調達から考える)

負債、借金は悪!

とも言い切れないところがあります。

というのは銀行からの借入金を上手くすれば節税効果が期待できるから、です。

また株主からの資金調達にもデメリットがあります。

どんなデメリットかといえば、株式の希薄化のリスクです。

当たり前ですが、株主から資金調達をする、つまり新規の株式発行をすれば株価は値下がりするリスクがあります。

値下がりしないためにはどうしたらよいのか?

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バランスシートの理解の仕方:繰延資産の考え方

バランスシートの理解の仕方:繰延資産の考え方

資産側は、現金化されるものがある、という理解でとりあえずはいいと思います。

例外はつきものです。

例えば、繰延資産のように資金性があるの?という項目もあります。

キャッシュ化できるかどうか?

ここは非常に大きな分かれ目と思います。

企業は保有ししてる資産を通じて収益、つまりキャッシュを獲得しなければならない。

流動資産は1年以内、企業の営業循環の中で現金化されていきますが、固定資産は利

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