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組織フェーズごとに考える、スタートアップのデザイナー採用 後編

スタートアップのデザイナー採用について、今回は後編です。前編を読んでいない方は是非読んでみてください。

前編では創業期の採用について、ハードスキル/ソフトスキルの両面から整理しました。後編ではシリーズA〜シリーズB以降の採用要件について整理していきたいと思います。※各フェーズの規模は便宜上置いているものになるので、ご自身の置かれた環境に応じて適切に読み替えてください

①創業期 : 創業者+数名規模
②シリーズA : 10〜30名規模
③シリーズB以降 : 30〜100名規模

②シリーズAのデザイナー採用

この規模になると、個の高い能力を活かし属人的に担保してきた速度や質を、徐々に仕組み化していくフェーズに突入します。おそらくは2人目もしくは3人目のデザイナー採用に向かう規模になると思います。2人目以降のデザイナー採用をすることを前提とした場合、既に所属している1人目のデザイナーがどのような人物かによって要件を変えるため、以下の3パターンに分けて解説します。

🐓1人目のデザイナーがシニアクラスの場合
🐥1人目のデザイナーがジュニアクラスの場合 
👤フルタイムデザイナーが不在の場合(今回が1人目の採用)

🐓1人目のデザイナーがシニアクラスの場合

例えば、1人目が前編に書いた要件を満たす、幅広い実務スキルも保持しており、経営や事業レイヤーでのコミュニケーションも問題なくこなせるデザイナーである場合、2人目は以下の要件になります。

1.  UI設計やグラフィックデザインを高速/高品質にアウトプットできる力
2. エンジニアリングへの理解(できればフロント実装も)
3. 高い自走力
4. 学習意欲の高さ、素直さ

体験設計や事業との接続などの抽象度の高い業務に関しては、基本的には1人目のデザイナーに任せてOKなので、より現場に近い能力を重視して採用します。4の学習意欲の高さは素直さについては、多くのデザインワークをこなす中での成長速度に直結するため重視しますが、成長を見越した上で採用することは避けましょう。アウトプットが未熟なジュニア層を雇い、そのメンバーを手厚く育成する組織体力が無いフェーズなので、採用時点でのアウトプット品質は慎重に判断する必要があります。

このパターンであれば、主体的にデザインを実行できるメンバーがひとり居る状態なので、副業デザイナーと契約するのも良い選択と言えます。ただし、デザイナーもしくはプロダクトマネージャーのディレクションコストがどの程度増えるのかを試算した上で、バランスが取れる場合のみ契約しましょう。

🐥1人目のデザイナーがジュニアクラスの場合 

創業期の要件とほぼ同じになりますが、プレイヤーとしての能力に加えて、リーダー/マネージャーとしてのパフォーマンスも求められるようになるため、マネジメントの実務経験があることが望ましいです。シリーズA前後でのこの層の採用は、より広い範囲のスキルが求められることや、提供できる報酬とやりがいの良いバランスを取ることも難しいため、皆さんが最も採用に苦戦しているのはこのパターンではないでしょうか。

1. マクロな体験設計からUIやグラフィックデザインまでこなせる幅広いデザインスキル
2. エンジニアリングへの理解(できればフロント実装も)
3. プロダクトマネジメントの経験
4. 不確実な状況に対応できるアジリティやメンタルの強さ
5. デザインワークへの執着の低さ
6. デザインチームのマネジメント経験

創業期と異なる点としては、優秀なプレイヤーでありながら、この先の急成長を見越した仕組みづくりや採用活動にも自ら取り組む必要があります。プロダクト以外のテーマにも目を向ける必要が出てくるため、自分自身の価値観や経験を適切にアンラーニングしながら、創業期よりもさらに柔軟に変化することができる人物が適しています。

具体的な採用アクションとしては、拡大を見越した母集団形成などのアクションも実行しながら、並行して。ここで求めているレベルのデザイナーは、一般的な採用媒体にはあまり登録しない傾向があるため、デザイン会社のGoodpatchが運営していて確かな目利きが期待できるReDesignerや、副業スタートになることが多いものの優秀なデザイナーの転職意欲の変化をキャッチできるYOUTRUSTなど、特定層に高い確度でアプローチできるサービスを利用するのも有効だと思います。

👤フルタイムデザイナーが不在の場合

一方で、このフェーズに突入した時点でフルタイムのデザイナーが1人もいない組織も少なくないはずです。その場合、この時点からの1人目の採用は苦労することを覚悟したほうが良いかもしれません。その大きな理由のひとつとして、デザイナー採用が後手になっている事などからも分かるように「社としてのデザインに対する投資優先度が相対的に低い」事が挙げられます。その結果、提供可能な報酬や経営層のデザイン理解においての採用競争力が低くなり、デザイナーの採用難易度は上がります。候補者目線で見ても、過去のアウトプットや文脈を知ることさえできれば、その企業の。

それを解消するために、無理に創業期からデザイナーを採用する必要はもちろんありませんが、不利な状況であることを前提とした打ち手の組み立てが必要になります。状況を打破するため過剰なSO付与や高額の給与を支払うケースも耳にしますが、長い時間軸で事前に下準備を重ねておけば、金銭報酬以外の打ち手も見えてくる可能性が高まります。採用したくなったタイミングで採用できる優秀なデザイナーは存在しない、ということを念頭に事前の土台作りに時間をさきましょう。

③シリーズB以降のデザイナー採用

この規模になるとデザイン業務の分業化が進み、シリーズA以前の要件とは大きく異なるデザイナーの採用が必要になります。具体的にはスペシャリスト(体験設計、ユーザーリサーチ、UI設計、グラフィック等)を中心にチームを組成することになり、その規模は10〜20名規模になります。要件が細分化する分、採用の難易度はそれ以前に比べて下がりますが、ここで重要になるのはそのチームをマネジメントするメンバーの採用です。

最近ではCDOという肩書でマネジメントする方が増えていますが、この時点で重要なのはデザインのスペシャリストであるCDOではなく、適切にデザイン組織を機能させるためのマネジメントを実行できるVP of Design(またはそれに近いロール)の配置になります。この規模では意思決定に関わるステークホルダーも急激に増えるため、その中間に立ちミドルアップダウン型のマネジメントを実行できるVP of Designのパーフォーマンスが、組織全体のデザインのパフォーマンスに直結します。

VP of Designを採用もしくは配置するパターンとしては、大きく以下の3パターンに分かれると思います。

①創業に近い時期から所属するデザイナーに任せる
②新たに外部から採用する
③デザインのマネジメントを配置しない(事業部長やVPoP直下になる)

どの選択肢も一長一短があるため細かい明言は避けますが、想像の通り①を選択できることが最もスムーズな方法になります。ただし、マネジメントのパフォーマンスが過去の文脈や文化を知っていることに起因するものなのか、文脈や環境に依存せずに発揮されるものなのかの見極めが必要です。

現実的には②の選択する企業が多くなることが予想されますが、実はこの選択肢が最も現実的な選択肢かもしれません。なぜなら、創業期に求められるような幅広いデザインスキルは不要で、マネジメント領域に限定した経験や能力が備わっていいることがミニマムの要件となるためです。当然スーパーマンであるに越したことはないですが、諦めることが可能な要件が増えることで、選択の幅が広がります。また、こちらが用意できる待遇も以前に比べ良くなっており、母集団も創業期に比べると充分に形成されていると思うので、採用の難易度はそこまで高くはないはずです。

③の選択もよく耳にしますが、事業部付きのいわるゆ縦のマネジメントに委ねるパターンや、「プロダクト」という区切りでVP of Productの直下でエンジニアと一緒にマネジメントされるケースが該当します。3つの内で最も取りやすい手段ではありますが、起こりうる弊害も事前に考慮する必要があります。デザインの専門的な観点で評価されることが無くなり、デザイナーのリフレクション機会も減ることで、組織内のハレーションは起こりやすくなります。この場合は、中間にリードデザイナーなどを配置することで、専門的な視点を補間するなどの対策も重要になります。

おわりに

スタートアップでの採用は不確実な要素も多く困りごとは尽きないと思いますが、少しでもこの記事が良いモノサシになれば嬉しいです!Twitterでもたまに発信しているので、よければフォローしてください!

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