勝って泣こう

 この前は負けて泣いた。最近は悔しくて泣くことばっかりだ。悲しい時には思いっきり泣けばいいと思う。男は簡単に泣くもんじゃないっていう考え方もあるんだけど、僕は泣きたい時に泣ける人間でありたいし、生徒にもそう言ってる。なよなよしてんなって思われてもいい。泣くくらいに感情が動くって言うのは人間の特権だと思うから。その時間を大事にしてほしい。

 トーナメントが発表されて、対戦相手も決まった。高校3年生の最後の試合には特別な意味がある。

 それぞれの事情があるにせよ、ここまで一つのスポーツに仲間と取り組んできた集大成がこの大会。多くの高校生は大学で体育会系の部活に入らない。時には家族よりも長い時間を過ごしてきた仲間たちと、損得なく目標に向かって頑張る機会は一生にもうないかもしれない。そういう意味で、そのスポーツが一つの区切りを迎える。

 スポーツの世界はある意味でとても残酷な現実を突き付けてくる。小さい頃に目指したプロ選手や全国大会への出場、自分が誰よりも上手い選手になれる、という夢は少しずつ形を変えてくる。そして、朧げにそうなれる人はほんの一握りなんだということを知る。大舞台で自分が30点取ってチームを勝たせる、スタメンになる、ベンチメンバーに入る、少しずつ夢は現実に変わっていく。

 僕もそうだった。バスケットボールが大好きだったけど、高校生になって自分のプレーヤーとしての限界に気が付いた。全国大会にはバケモノみたいな選手が沢山いたし、チームメイトもそうだった。逆立ちしても勝てない。

 身長や身体能力に恵まれた人もいれば、努力を積み重ねた人もいた。そんな人たちを目の当たりにして、子どもは少しずつ大人になっていく。そうやって挫折を知る。でも、バスケットボールはいつでも僕に答えをくれた。適当に流すこともできたけど、僕はただバスケットボールが好きだった。だから真摯に向き合うことにした。そうすると、答えをくれた。

 高校生の青春は何物にも代えがたい。そんな時間もあと少し。この前は負けて泣いた。最後は勝って泣こう。

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