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ファジーネーブルの匂いで

 という歌い出しが特徴的なConton Candyのこの曲をYoutubeで聴いた人もいるかもしれない。時々Youtubeで出会う曲たち。何もなければ知らなかった可能性が高い。

 でも、いきなりに刺さることもある。FINLANDSの「UTOPIA」もそうだった。

 「ファジーネーブルの匂いで」?どこに行くというんだろう。そもそもファジーネーブルに匂いなんかあったっけ。
 サビやメロディーがキャッチーなだけで共感できない曲もたくさんもある。けど、その中で時々自分の琴線に触れてくる曲に出会うことがある。  
 ちょっと大学時代のことを思い出してみたら、ファジーネーブルには確かに匂いがあった。

 まだお酒に慣れていなかった頃、飲み会では先輩に合わせてビールを一杯飲む。なんでこんな苦いものを好き好んで飲むのか永遠に分かる気がしなかった。その後に、酒に慣れていない僕らがとにかく頼む二大巨頭は、「カシスオレンジ」と「ファジーネーブル」だった。

 僕はお酒が強い方ではあるけど、学生の頃はまだまだ弱かった。だから、適当に甘いカクテルを飲みながら、日本の未来について考えるでもなく、騒ぐことが楽しかった。聞き慣れない名前がかっこよく聞こえた。飲めそうなカクテルを頼んで、これ美味しいねとか言いながら、唐揚げとポテトを永遠につまんでた。

 ファジーネーブルは甘い匂いがした。濃いオレンジジュースにピーチのリキュール。だんだん甘い酒を飲まないようになってきた今はほとんど飲むことがない。でもあの甘ったるい匂いはジュースみたいに軽くて、あの頃の僕らの高揚感を表しているようだった。

 


 「ファジーネーブルの匂いで 私どこかに行けそう 許すたび 心まで オレンジ色に染まる ファジーネーブルの匂いで 君とどこか飛んでいけそう 甘い甘い切ない思いを 飲み干してしまいたい」

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