いつまでも根に持つ女
女性は男性よりも悪い出来事をよく覚えている傾向があるらしい。
過去の過ちを繰り返して同じ傷を負わないように、戒めとして残しておく危機管理能力が備わっているとかいないとか。
私は嫌な思い出はすぐに消し去りたい。
酷いことがあった日に着ていた服は捨てるし、現場には近づかない。
悪いことがあったシチュエーションと似たような展開になると、前回と同じ選択は避ける。
私の「女の勘」は当たらない。
6月の天気予報くらい当たらないけど、最悪な予感だけは的中する。
バリエーションを変えたデジャブを何度も味わうことがある。
そのたびに「また罠にかかった」と唇を噛む。
過去のデータベイスと照らし合わせて危機を回避できるようにアンテナを立てているつもりだ。過剰に警戒してさえいる。
恋愛していても、この人も私に対してよくないことをするのではないかと思うと楽しめない。
良くないことが起こると「やっぱり」と思う。
永遠にマジカルバナナをしている。
些細なことが一つあっただけで、過去のことまで芋づる式に引っ張り出してバットエンドを想像して実現させてしまう。
過去に解決したからといっても、古傷は何度も体を締め付ける。
芸能人の不倫のニュースを見ると、彼の浮気を思い出す。
馬が走っているのを見ると、ギャンブルがやめられない彼にお金を貸したことを思い出す。
アイドルの熱愛を知って、他に好きな人が出来たと言って去ってた彼を思い出す。
中山きんに君を見て、落ち込んでる私に筋トレを進めてきた彼を思い出す。
私にとってのトリガーがそこら中に散らばっている。
目の前にいる彼は、今まで出会った彼たちと何の因果関係もないのに、爆弾を持っていないか身体検査を始めてしまう。
彼のことをもっと知らないと判断できない。
彼の過去に何かあったら信用できない。
彼が間違いを犯したのならば再犯するかもしれない。
もっと気楽に生きたい。
もっと許してあげたい。
もっと素直になりたい。
もっと愛されたい。
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