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煙の影


世界は突如、真っ白な煙に覆われてしまった。

一寸先も見えない煙の中で人々は混乱し、世界の秩序は壊れ、先の見えない現実に絶望した。

「一体この煙はいつ晴れるんだ!」急遽避難した小さな交番の中で避難者5名のうち一人の男が声を荒げて言い放った。

交番に避難してきたのは男を含めて、交番に勤務していた警官2人と近所に住んでいるという若夫婦。突然現れた正体不明な煙に3人は警察は助けてくれると同じような考えを持って交番にきたわけである。しかし、この警官2人も煙に関して本庁からの連絡は何もなくお手上げ状態であった。

「とりあえず、ここにいれば煙から逃れることができますので、落ち着いて救助を待ちましょう!」1人の警官が3人を慰めるようにいうが、極限の緊張状態である3人は警官の言葉に耳もくれず変わらずパニックに陥っていた。交番の扉を閉め切り、外では濃い煙が風に流れるように扉を撫でて、風が落ち着いたと思えば急に様子を変え荒ぶりだしまるで獣が扉を壊さんと叩いているようだった。

いや、実際には本当に獣が扉を叩いていたのかもしれない。

目の前で先程まで怯えていた3人組が青ざめた表情で扉の方を指差している。一体なんなのか、警官2人も恐る恐る振り返る。

するとそこには巨大で真っ黒な影がこちらを見つめ中の様子を伺っていた。すりガラスでぼんやりとしか見えないが、中から体格の一部しか見えないほど大きな体躯は熊や他の動物とは比べ物にならない。昔見たパニック映画でおなじようなシチュエーションでその怪物に見つかってしまい殺されるというシーンがあった。何故今こんなシーンを思い出してしまうのか自分でも分からなかった。

だが確かに感じる異形な雰囲気と目の前の現実が頭の中に現実離れした思考を巡らせてしまう。

「食われる、、、」

誰もがそう覚悟し、息を呑む。

一瞬世界が静止したかのように静まり返り、次の瞬間大きな破裂音と共に目の前は真っ黒な何かで覆われた。




寝ている時、身体がビクッとなったり、落下しているような感覚になるのは「ジャーキング現象」というらしい。自分の意志とは関係なく起こる不随的な筋肉の痙攣ことを指す。


寝る前にパニック映画2本立てはやめよ。

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