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元日、帰宅がてら海でも見に行くか



〜ただの送り迎えの巻〜

2024年1月1日
00:00        明けましておめでとうございます
1:00すぎ    就寝
5:50          起床
6:50          出発
7:40ごろ    到着
8:00すぎ    見送り
その後帰宅のため乗車


ちょうど最後尾車両で、そこのさらに1番最後の列の、進行方向と逆向きの席に座った。この向きの席が意外と好き。なんとなくだけど。目の前は車掌さんがいるあの小さい部屋だった。

寝不足の目には少し眩しい2024年の陽の光を取り入れながら、ボケーっと、電車の影が街を縫うようにして走るのを眺める。

そうして、2,3駅過ぎたあたりだろうか、道路を挟んで向こう側に座ったおばあちゃんが私の隣の席にやって来た。車掌さんと目があって気まずいらしい。車掌さんはおばあちゃんが座っていた方に立っていた。

せっかくだから、朝早くからどこか行かれるんですかと尋ねてみた。神社の帰りとのことで、自分は見送りの帰りですと。私の乗り換え駅までたぶん10分もしないが、色々とお話をした。お孫さんのこと、おじいちゃんのこと。寂しいけれど、1人の方が身軽なのよねと笑っていた。たしかに。お見送りをした私は期間限定だが、とても身軽だった。しかしその分寂しいのだろう。どちらかを手に入れたらどちらかが失われるところに、巧妙さを感じられる。

マスクで口元が見えなかったが、目元がすごく優しいおばあちゃん。

そういえばと言って、おばあちゃんは手に持っている袋の中からパッと何かを取り出し、どうぞと渡して来た。龍の模様の干支飴だった。あいにく今日はチョコやら飴ちゃんやら、何ひとつお返しできるものを持ち合わせていない。いいのよ、とカバンを焦って弄る私に、おばあちゃんはせっかく会えたのだからと言った。私辰年なんですと言ったら、ならちょうどいいわねとより嬉しそうにしていた。

飴の袋をギュッと持って、何度もお辞儀をしながら電車を降りた。

「良いお年を!」

年はもう明けたが、おばあちゃんとはもう会えないと思うから、出会いに感謝し、別れを告げ、あなたにとって良い一年になりますようにと、心を込めて言いながら、手を振った。

もう嬉しくって、感情の行き先が見当たらなくて、駅のホームでただただその干支飴をしばらくの間眺めていた。


帰りは海を見に行った。

海は帰りの途中にあるから、降りて少し歩けば見れる。早起きして海を見に行くことはあまりないから、少し新鮮だった。

そう、身軽になったんだ。どこにでも、いつでも行きたいように行けるんだ。なんて、そこまででもないけれど、帰り道にある海を気分で見に行くくらいだけど、それでも今あるこの少しの身軽さに感謝しよう。


海原は眩し過ぎるほどに輝いていた。


2024.1.1    星期一    晴れ

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