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あたたかい、美味しい、幸せ。




ご飯を買うために外に出たときは、お昼休みの時間はもう残り僅かだった。ドラッグストアで買い物も少ししたい。

急ぎ足で敷地を出て、止まってくれた車に一礼して道路を渡る。ドラッグストアを出て、また道路を渡ろうとしたとき、時間があまりないから近場のお弁当屋さんにしようと、数10分前の自分が思い立ったことを思い出して、踵を返す。

3人くらいがお店の前で待っていた。おじさんが注文する傍らで、メニューをまじまじと見る。

「迷ったらこれ」は間違いないやつ…
でもカルシウム足りてないから、しゃけ…
別の魚もあるな…
でも前に一時期ここの何が美味しくって食べてたっけ…

あ!
メニューの5行目にしてやっと見つけた。
のりから弁当。
これこれ。

実は他人からの紹介で、ここののりから弁当を一時期食べていたのだが、あれからおおよそ一年しか経っていないのに、忘れてしまった自分に少しショックを受ける。
思い出したのでよしとしよう。。

510円。お腹いっぱい食べれるのに安い。
パッと見100円玉5つ以上ありそうなのに、実際のところ4つしかなくて、シュンとしながら1000円札と10円を渡す。
何事も過信しないことね。。

おじさんふたりと、私、3人がそれぞれ別の場所に立って、呼ばれるのを待つ。
お店の中からいそいそとお弁当を作る厨房の音や、人の話し声が僅かに聞こえる。比較的閑静な場所のため、そのかちゃかちゃした人の営みを感じさせる音が妙に優しく、柔らかく耳に響く。

私は寒さに首を縮めて、腕を組んで、フォルムをできるだけ丸くして、空気との接触面積をできるだけ小さくしようと努めていた。

そのとき、左にある電柱の後ろにある太陽の光が影をこえて、私の顔を照らした。

あたたかい。

ちょっとだけだが、少し泣きそうになってしまった。泣きそうになるくらいお弁当屋さんの音と、太陽とがあたたかかった。やっぱりこういうあたたかい瞬間を見つけるのが好きだなと思った。大事にしまっておくために、ここに書いて残しておこう。

「のりからのお客様!!」

「..!はい!」

「お待たせいたしました!」

「ありがとうございまーす」

のりから弁当もあたたかかった。
(余談だが、この「あたたかかった」っていつもカムんだよね。言いづらくないか?)

あたたかい、美味い、幸せ。


2024.1.9   星期二   快晴

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