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地域のセーフティネットとしてのこども食堂

こども食堂ひみつきちてつやは、多世代交流型の居場所として運営しておりますが、その魅力の1つは、関わるひとのすべての活力向上につながっているというところです。

多世代ですので、小さなお子さんからお年寄りの方や保護者の方など様々な世代が集います。福祉という枠組みで杓子定規に捉えると、通常は、こどもや高齢者は、どうしてもサービスの受給者として設定され、常に受け身になってしまう感が否めません。

しかし、「かくあらねばならぬ」という外発的な規範がこども食堂にはありませんので、お互いに立場を入れ替えながら、つまり、こどもさんがお年寄りさんのお世話をしたり、またその逆の立場に入れ替わることで、「受け身」を超えた活力向上につながっている手応えを感じています。

また、利用者さんに常に体験や参加をして頂くことで、家庭での調理の工夫(食育)につながったり、地域の歴史や防災講話をするなど、こちらに関しても受け身で終わらないように工夫することで、何かを持って帰ってもらいたいという思いで取り組んでいます。

先日は、こども食堂を毎回楽しみにしている94歳のおじいちゃんの送迎に行きましたが、ノックすると、トイレで動けなくなっていました。腰痛からとのことですが、多世代交流として営むことで、そのときは、異変を発見でき、救急搬送につなげることができましたので、こども食堂自体が地域のセーフティネットになっているのではないかとも考えています。

これまで地域を支えていた中間団体、例えば自治会や婦人会といった組織がそれに該当しますが、こうしたコミュニティの衰退が目立ちます。人口減少だけでなく、参加にあたっての義務的関わりや絆的縛りの強さから入会を敬遠される方が増加しているという話ですが、こうした現実のなかで、こども食堂という居場所、あるいはコミュニティが地域の新しい紐帯になっていっているのではないかとも思えます。

これがおそらく人間関係でいうところの、(むすびえの湯浅誠さんのいう)「SNS以上、絆未満」というこども食堂のゆるやかな人間関係が創造している新しいコミュニティなのではないかと考えています。

まだまだ開所して1年弱のこども食堂ひみつきちてつやですが、地域のセーフティネット、また新しいコミュニティへと鍛え上げていくのがわたしたちの願いです。

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氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。