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憲法記念日に寄せて

5月6日は、アメリカの思想家H.D.ソロー(1817年7月12日 - 1862年5月6日)の命日です。

1846年、合衆国はメキシコ戦争を始めますが、戦争に反対の立場から人頭税の支払いを拒否し投獄されたことで知られています。その思索と実践は、「市民的不服従」の思想としてガンディーのインド独立や、マーティン・ルーサー・キングの公民権運動に大きな影響を与えたことでも有名です。

人間の良心こそあらゆる外在的権威に優先されるべきという考え方が20世紀の流れを変えたと言っても過言ではありません。

国家が個人を、国家よりも高い、独立した力として認識し、国家の力と権威はしべて個人の力に由来すると考えて、個人をそれにふさわしく扱うようになるまでは、真に自由な文明国は決してあらわれないであろう。
(出典)ソロー(飯田実訳)『市民の反抗 他五篇』岩波文庫、1997年、54頁。

人間あってこその共同体。共同体あってこその人間では決してないということは、国家と個人だけでなく、夫婦間でも親子間でも同じで、こうしたように相手を扱うことできるようになるまでは「真に自由な文明国」の人間では決してないことを強く自覚することが今こそ必要ではないかと僕は考えています。

カントに習えば、人間を手段として扱うのではなく目的として扱うということにほかなりませんが、権力の暴走を防ぐはずの憲法を容易に変えてしまえだとか、デモには意味がない、国家に従順たれという言説がにわかに力を怯えてくる最近の世相に戦慄するがゆえに、ソローの言葉、すなわち「国家が個人を、国家よりも高い、独立した力として認識」するように後押しする努力を継続して参りたいと思います。

遅くなりましたが、憲法記念日に寄せて。

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氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。