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一人原稿合宿レポ



はじめに

 原稿合宿のレポとは謳ってますが、道中のことや原稿執筆と関係ないこともわり書いています。原稿合宿に関する部分だけ読みたい方は旅館滞在中の見出しを選んで見ていただくのがよいかなと思います。

決行に至るまで

 一月下旬、ちょいとばかし休職というか休養をとることになった。その経緯についてはこちらの記事参照。

 そんで私は温泉に入りたくてたまらなかった。こんなに身体が湯を求めたのは初めてといってもよい。とにかくつま先から肩までじわぁ~っと温かいお湯に包まれてみたい。一度芽生えた欲求は脳内をどんどん圧迫し、もうそのことしか考えられなくなった。

 そこで、温泉宿に一人で泊まってやろうじゃないかと思い立った。それまで一人でどこかに泊まるという状況はイベントなどで「日帰りでは遠征が厳しいから」という理由によるものが大半であったように思われる。つまるところ「寝泊りできる場所ならどこでもいい」という考えで、たいていは安さ重視のビジネスホテルに泊まっていた。

 しかし今回は違う。自分による自分のための自分の旅行なのだ。なるべく外に出ず、宿そのものを満喫できるところに行こうではないか。…もちろん、お財布とある程度の相談はしたが。行先を考え始めたところで、ふと以前どこかで見た「原稿執筆パック」のある宿を思い出した。

 …ええやん…!当時私は2月末のイベントに出す新刊用の漫画に着手したころだった。ぴったりだ。地元からのアクセスも悪くない。

 しかし原稿作業というものはドーパミン分泌ドパドパのそれは楽しい趣味であるとともに、自分の限界を味わい打ちひしがれる苦行でもある。休むために行くのにそんなことしちゃって大丈夫なのか…!?そんな心配が一瞬頭を過るも、「温泉もYogiboもあるしキツかったら全力で休む方向に舵を切りゃーいいんじゃ!!」と予約ボタンをポチィーッと押したのであった。

一日目

出発~チェックイン

 当日、地味な新幹線駅・三河安城駅からこだまに乗車し1時間半ほどで熱海へ到着。道中、窓から富士山がくっきり見えて感動。

新幹線の窓越しのわりにはよく撮れたのではなかろうか


 目的地の湯河原へは熱海からたった一駅である。今回私は静岡方面から来たわけだが、東京方面からのアクセスも比較的良いと思われる。
 熱海で既に温泉郷の空気感を感じつつ、さらに東へと進む。

 実のところ同じ宿に二泊して日中も籠って作業したかったが、どうやら私が指定した日程は連泊ができないようだった。夕方来て翌朝おさらばするのは寂しいヨ…!
 というわけで、初日は近隣の別の温泉旅館をとって翌日 THE RYOKAN TOKYO YUGAWARAさんに泊まることにした。初日の宿もワークスペース付きのお部屋がとれたので原稿合宿にうってつけである。

 湯河原駅からの送迎バスを予約していたので、約一時間前に着いた私は昼食をとることに。
 失礼な話、近隣に食べ物屋があるのかどうか心配していた(調べりゃいいのだが)。というのも以前とある温泉地に住んでいたことがあったのだが、そこはバブルの残り香が色濃い、やっているのかいないのか分からない廃墟とも見紛う宿や飲食店が軒を連ねる場所だったのである。「温泉地=さびれている」という先入観が知らず知らずのうちに形成されていたようだ。ほんとうに失礼な話だ。

 その心配は全くの杞憂であった。改札を抜けるとコンビニや喫茶店、土産屋などが見え、ほんの一、二分歩けば蕎麦屋があった。その蕎麦屋に入り「大海老天そば」を注文する。宿では夕食も出ることだし、蕎麦ならそこまで重くはならずちょうどいいだろう、海老天といっても一尾でかいのが載ってるくらいだろう、と考えた。その結果がこれである。

もはや天ぷらの盛り合わせ

 美味い…でも胃が…だがうま胃……となりながら完食した。いい時間になったので駅へ戻り、コンビニでちょっと買い物をしてから送迎バスに乗車する。


「ゆがわら風雅」滞在

 泊まったのはこちらのお宿。岩崎弥太郎の旧別荘跡地なのだという。

 一番早い時間でチェックイン。外観はタイミング逃して撮れなかったけど、レトロな雰囲気ながら清潔感があり、内装から溢れるクラシカル感はきっと多くの人が引き込まれるのではないかと思う。チェックインはQRコードとタブレットを使った現代式でした。好きな柄の浴衣が選べるのでテンションが上がる。

 お部屋!キングサイズベッド!!一人なのに贅沢すぎ!!!は~…大の字で寝っ転がってもまだ余裕あるよ…。部屋の「ワークスペース付き」というのはこの写真の左端に見えているやつです。おそらく、一般的な旅館では鏡とかがあるドレッサースペースになっている部分ですな(反対側にちゃんと洗面台と鏡あり)。コンセントが使えてwi-fiも繋がるので、ウム、特殊なプランではないけど作業できる…!

 ちなみにこの旅館、全室テレビがありません。また、お子様(中学生以下だったかな?)は宿泊できません。大人の休日を大事にするコンセプトゆえ、籠って作業したい人や読書に集中したい人にはぴったりの環境。

 まずは疲れを取るため温泉へ。比較的早い時間だったためか誰とも被らずゆったり入れた。あ~コレコレ。いい。とてもいい。早くも追い求めていたものが満たされてしまった。原稿を頑張ることに目標をシフトチェンジし夕食まで作業をする。

 利用時間が限られてはいるが、フリードリンクがあるので紅茶やコーヒーには困らない。私は紙のカップで部屋へ持ち込んだが、ラウンジスペースで飲む場合は棚から好きな茶器を選ぶことができる。オシャレだ…。

今回やらなかったけど、醤油作り体験とかもできるらしい
茶器が選べるドリンクコーナー

 ちょっと疲れてきたな~というところで夕食の時間になったのでレストランの間へ行く。料理は創作っぽいオシャレなコースだった。まあまあ品数あるのに食べ切りサイズでちょこちょこ出てくるので自然と胃に入っていくマジック。内容よくわからないけど全部美味しかった!!(繊細さの欠片もない舌で申し訳ない。)撮り忘れがあるので写真は一部です。

前菜。なんかオシャレなのがいろいろ。
鰆だったかな?のパイ包み。サワークリームと合う!
デザートのほうじ茶プリンパフェ

 夕食後も作業。以後はフリードリンクコーナーが利用できないので部屋に用意があるお茶やコーヒー、持ち込みの飲み物で過ごす。

 あまり進まないわりに遅くなってしまったので区切りをつけて寝る。中途半端な時間に目が覚めてしまい持参してた漫画を読んだが、宿にも漫画や本が置いてあるため自由に読めるのだ。読みたいのめちゃくちゃあったのに我慢しましたよ…。コンビニで買ったおやつもこのタイミングで食べちゃった。

時間が足りない

一日目の進捗:ペン入れ4Pほど。

二日目

 朝六時の解禁と同時に温泉で朝ブロ。朝食もうま。

健康的でちょこちょこした盛り付けがかわいい


チェックアウト~神社巡り

 同じエリアとはいえ別の宿に泊まるのでチェックアウトしなくてはならない。そして次のチェックイン時間まで待たなくてはならない。というわけで送迎バスで湯河原駅まで送ってもらったあとは、手荷物を預け(観光案内所にて一つ四〇〇円で預かってくれる。利用時間に注意。)神社めぐりをすることにした。そのつもりでご朱印帳も持ってきたのである。
 御由緒などもきちんと紹介したいところですが今回は割愛させていただきます。

  • 伊豆山神社

 JR東海道線にて熱海駅へ、熱海駅からバスで伊豆山神社前まで。

 旅先で路線バスに乗ることはあまりないのだけど、歩いていくのは難しいと判断し無難なルートで向かった。道中、バスはずっと坂を上っている。まるで巻貝の上を走っているかのようだ。地元のお年寄りらしき人々が多く乗車していたが、おそらく鉄道を敷けないこの地形ではバスが重要な交通手段となっていることが窺えた。短い間隔でバス停が点在していたのも利用する住民のためなのだろう。

 バスを下車し百四十四段(確か)の階段を昇った先に本殿がある。この場所は源頼朝と北条政子の逢瀬の場といわれ、縁結びのスポットとされている。一昨年の大河にハマった身としては訪れることができて嬉しい。
 境内の奥にはひっそりと郷土資料館があり、こぢんまりとしていながらなかなかに見ごたえがあった。

本殿
頼朝と政子の腰掛け石
境内からの眺望が素晴らしかった
縁結びを猛プッシュしてます


  • 來宮(きのみや)神社

 熱海駅へと戻ったあと、今度はJR伊東線にて来宮駅へ。ここへも一駅くらいで近い。降りて前にいたカップルのあとをつけて歩くと、ほ~らやっぱり來宮神社へ着いた。なかなか規模の大きい神社で、観光名所としての色も強いようだ。
 しかしそれだけの規模を誇るだけあって、古くから地元の信仰を集めた由緒や樹齢二千百年ともいう御神木の大楠の迫力には圧倒されるばかりであった。

本殿
樹齢二千百年の大楠

 そして現代ナイズドされた社務所がすごい。もはやカフェやんって思ったら本当にカフェ併設だったし、敷地内にもいくつか映え~なメニューが味わえるスタンドがある。あんまりこういうの食いつくほうではないんですが、小腹が空いてですね…ゴニョゴニョ。

ス○バとも見紛う社務所。自動ドアである。
御祭神へお供えしたところとても喜ばれたという逸話から、橙を使ったメニューがあちこちみられる。団子にも橙ジャム!


  • 五所神社

 湯河原駅へと戻り、徒歩で十五分くらいだったかな?五所神社へ。天智天皇の時代にこの地域の総鎮守として神々を祀ったとされている。観光地というより地元の人々が散歩で訪れるような、地域に馴染んだ神社という印象を抱いた。こうした地元民の憩いの場となっていることは、地域を見守るという鎮座の意義を全うしているのかもしれない、と他所者ながら思う。
 周辺には七福神の像があちこちに配されており、誰がどこにいるか巡るのも楽しい。

石造りの鳥居


「THE RYOKAN TOKYO YUGAWARA」滞在

 さて再び湯河原駅へと戻り、預けていた荷物を回収しタクシーで次なる宿「THE RYOKAN TOKYO YUGAWARA」へ。当初はこちらも送迎バス利用の予定だったが、都合により交通手段を変更した。チェックイン開始は十六時だが着いたのは十四時ごろ。チェックイン前もカフェスペースで作業できると伺っていたため利用させてもらうことにした。

色とりどりのインクが並ぶ。プランによってはインク調合体験などもできるらしい。

 エントランスはまさしくイマドキな感じのフォトジェニック感。ワイが入っても大丈夫か…?スタッフの方に案内をしていただき、スマホで宿泊者情報を入力する。ちなみに進捗確認、感想など「原稿執筆パック」の希望制オプションを利用する場合はこの時に伝えることをおすすめする。自分の場合申告を忘れており、特に聞かれなかったので思い出した頃にはもう夜で「ま~いっか!」となった。私はさほどこだわってなかったが、このオプションを求めて利用する人もいるかもしれないので一応…。特に字書きさん。

 基本的に館内での過ごし方はフリーダムで、その分説明もあっさりめなので気になったことは積極的にスタッフさんに聞くのがよいかと思われます。快く教えてくれます。

 カフェスペースには紅茶・コーヒーのフリードリンクとちょっとしたお菓子があり、自身の作業のほか棚から雑誌や本を取り出して読むこともできる。作業に飽きたときは気分転換に読んでいた。

 時間になりチェックインするとそこには畳とYogiboが!!迷わずダイブ。こんな陽の当たる畳の部屋でYogiboに寝っ転がるシアワセよ…!しばし戯れの時を過ごし、気合を入れるために温泉に入る。やはりいの一番に風呂に入る人はあまりいないようで、再び貸切状態を満喫した。

落ち着く和室…!


 さて作業。ここはTVがあったけど翌朝ニュースを見たくらいで特に点けなかったな。この宿の魅力は貸出グッズにもあると思う。スタンドライトやタイプライター風キーボードなど創作意欲の上がるモノのほか、複数人で泊まった時に盛り上がりそうなカードゲームやカラージャージなど。あ、ここも浴衣がいろいろな色柄から選べます。部屋の中では紅茶のティーバッグなどが種類豊富に置かれていてありがたい。

もうちょっと整えてから撮ればよかったとは思っています

 だんだんと外が暗くなってくるとスタンドの明かりが作家気分(気取るな)を高めてくれる。

 このプランでは食事が定食メニューとなっており、夜はアジなど三種の魚のフライがメインだった。サックサクで美味しいーーー!!デザートのチーズケーキも絶品。ちなみに食事はお部屋ではなく、時間になったらカフェスペースまで行くスタイル。

 もちろんこの後も原稿作業したけど眠くなったので無理せず寝ることにした。ふとんはセルフ敷きです。

 二日目の進捗:ペン入れ6Pほど。

三日目

相も変わらず六時半ごろ朝ブロを堪能する。朝食も堪能する。干物が骨までパリパリで美味い。

続・「THE RYOKAN TOKYO YUGAWARA」滞在

 普通なら午前中にチェックアウトしてバイバイなのだが、このプランはチェックアウト日の昼食も付いている。部屋は十時までに出ることになるが、引き続きカフェスペースで過ごすことができるのだ。

 ちなみに湯河原駅行きのバスの時間は午前中を過ぎると十五時半と十六時半なので結構な時間居ることになる。ここまで滞在できない、という人はタクシーを利用するか昼食を諦めて午前中のバスで帰途につくことになるだろう。私は十五時半のバスに乗車した。ペン入れ作業にちょっと飽きがきてしまい、表紙を進めたほかは館内の本を読んで過ごしていた。

 あと、日中に窓際の席に座る場合は日当たりに注意。最初は陰になっていても、時間の経過とともにだんだん眩しくなってくるということもある。カーテンは無いが席の移動はOKとのことで私は途中で移動しました。

 昼食はお茶漬け。いろいろな具でカスタマイズできる。昼にお茶漬けは質素と思うかもしれないが、ろくに動かず机にかじりついていた人間にとってはこのくらいあっさりしているものがよい。少なくとも私にはありがたいメニューだった。出汁が効いていて美味しい。

透明のポットに入っているのがお出汁

最後に

 そんなこんなで私のプチ湯治兼原稿合宿は無事終了。

 尤も、締切に対して切羽詰まってないからこうやって旅行の一環として楽しめているのである。正直劇的に捗ったとは言い難いわけだけど、憧れの館ヅメ体験ができたし、家にいるより集中して物事に取り組めた気がする。

 とはいえ普段と違う環境に身を置くからいいのであって、この行動が「普段」になってしまうとまた見えなくなるモノが出てくるんだろうなぁと感じた(当然ながら「普段」これをするほどの財力は無い)。

 また気持ちを切り替えたくなった時、逃げ出すようにこういうことをやってみたいと思う。いい体験ができたという記録でした。


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