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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【個人練でのすれ違い表現】

「リズと青い鳥」では物語後半まで、みぞれと希美がすれ違うさまを描き続けています。

導入部後の個人練のシーンでは二人の性格や感情、考えていることを説明する演出になっています。

同じセリフを違う意味で言う
個人練で二人で話している際、みぞれは「嬉しい」というセリフを喋ります。これは、希美と一緒にいられて「嬉しい」という意味で言われています。

それに対し希美も「私も嬉しい」と返すのですが、それは本番で演奏する曲が好きな曲なので「嬉しい」という意味で言われます。

みぞれの嬉しい = 希美と一緒に居られて嬉しい

希美の嬉しい = 好きな曲が演奏できて嬉しい

その際に同じ言葉で感情がすれ違っていることをカット割り、レイアウトで表現しています。

希美が「私も嬉しい」と返した際、みぞれの目元のドアップになり、目をうるませつつ見開いています。みぞれとしては『希美も私と一緒に居られて嬉しいんだ』と勘違いし更に嬉しくなっている様子を表現しています。

ドアップ = 感情に寄り添うカメラ

引用元:リズと青い鳥


そこで希美は「これが自由曲なのすっごい嬉しい」というセリフを喋り、その際のレイアウトが希美の引いた画になります。みぞれから見て希美の気持ちが自分を見ておらず、遠くにあることを表現しています。
みぞれにとって、突き放されたような印象をうけています。

引きの画 = 感情を突き放すカメラ

引用元:リズと青い鳥


違うセリフを言う
希美は自由曲「リズと青い鳥」を「早く本番で吹きたい」と発言します。
その台詞に対しみぞれは返答をしないのですが、一人になったみぞれは窓ガラスに向かって「本番なんて一生来なくていい」と発言します。

希美「早く本番で吹きたい」 = みぞれではなく曲に興味がある

みぞれ「本番なんて一生来なくていい」 = 希美と離れたくない

希美が「早く本番で吹きたい」と発言する際、楽譜に目をやりみぞれの方を見ていません。

引用元:リズと青い鳥

その希美を何も言わずみぞれは直視しています。その際のレイアウトはみぞれのドアップであり、目の揺れもないので嬉しい感情が収まってしまったことを表現しています。

引用元:リズと青い鳥

その後一人になり、窓ガラスに向かってみぞれは「本番なんて一生来なくていい」と喋ります。

反射面に向かって心情を吐露させることで、心の中にしまっている本音を吐き出しているカットになっています。

引用元:リズと青い鳥

これは以前「モンスターズ・ユニバーシティ」の演出解析でも出てきた【鏡像】を使った演出です。

まとめ
このように「リズと青い鳥」では二人の気持ちのすれ違いをセリフだけでなくカットの積み上げなどで丁寧に描いています。ドアップのカメラや引きのカメラを効果的に使いつつ、鏡像を使った演出も使い心の距離感を描かれています。

心情表現ではキャラの演技だけでなくレイアウトや感情表現をする演出を効果的に使っていきたいですね。

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