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「モンスターズ・ユニバーシティ」に学ぶ演出技法【線をまたぐ】

映画において特定の動作に特定の意味合いをもたせることができます。

作品のなかで世界や状況、立場などを分ける象徴的な存在として「線」が出てきます。

特にこの作品では「線をまたぐ」という行為に特別な意味合いをもたせています。

立入禁止の線

引用元:モンスターズ・ユニバーシティ

子供時代、モンスターズインクで立ち入り禁止の線 = プロフェッショナルの職場とそれを見学する側を分ける線

子供部屋につながるドアの縁 = モンスターズワールドと人間界を分ける線

大学の校門の前にある歩道の縁 = 大学の生徒とそれ以外を分ける線

モンスターズ・インクの驚かせ屋ブースの線(子供の時にみた線) = プロフェッショナルの職場とそれを見学する側を分ける線

これらから線には特別な意味を込められることがわかります。

線 = 世界や立場を分けるもの

線をまたぐ
この映画ではマイクの立場や心情が大きく変化するタイミングで象徴的に線をまたがせています。

引用元:モンスターズ・ユニバーシティ

子供の頃モンスターズワールドから飛び出して、人間界へ行く = プロの仕事を目の当たりにして、夢を抱く
大学へ入学する = モンスターズ・インクへの入社という夢に向けた第一歩を踏み出す(希望に満ちている)

自分には才能があることを確かめに人間界へ向かう = 本当の自分(才能がないこと)に気がつく

夢破れて大学から退学する = 夢破れ、それを受け入れる

郵便物仕分け係から最終的に驚かせ屋までたどり着く = 別の形で夢が叶う


特に印象的なのは物語の最後にマイクが退学になり荷物を持って大学から出ていく際にわざと『歩道の縁の線』を見つめさせたあとまたがせています。
制作者側としてもこの線をまたぐ行為に特別な意味合いをもたせていたと思われます。

引用元:モンスターズ・ユニバーシティ


入学のときは夢を抱いてまたいだ線を、夢破れて同じ線をまたいでいるのです。(サリーは線に気づいていません。マイクは入学時のことを思い出しているように見えます。)

さらにダメ押しのようにモンスターズ・インクに就職し、驚かせ屋ブースまでたどり着いた際にマイクは停止線を見て立ち止まります。

引用元:モンスターズ・ユニバーシティ

ここでは一度破れた夢がついに実現した、プロとしての第一歩を踏み出す象徴的な使われ方をしています。


まとめ
このように背景に線を用意し、そのこちら側と向こう側を違う世界として描くことで、立場の変化などを描くことができます。
今回は出てきませんでしたが、別れのシーンでドアの縁や地面のペイントなどを使い、心や立場が分断されていることを表現することができます。

また、物語上キャラクターになにかの変化が起こるターニングポイントに特定の行為を反復的に行わせることで、ストーリー上の重要さを強調したり、そのキャラクターがその時のことを思出したりしていることを付加することができます。

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