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GOT - おすすめドラマに関する感想の吐き出し(ネタバレしかない)

全8シーズンもある Game of Thrones (GOT)が完結した。

わたしは見始めたの今年に入ってからで、そのためだけにスターチャンネルに登録して、ようやく追いつき、最終話だけ、その全世界同時ライブ・ストリーミング配信を見て「世界?最高視聴率」に貢献した1人である。

ドラマのおすすめといっても普段はネタバレ感想は書かないのだが、こればかりはどうしても書いておきたくなったので、吐き出すことにした。

以下、まだ見ていない人は読まないで。見るつもりのない人も、いつか見たくなったらいろいろ知らないほうが楽しめると思うから、読まないで。


↓ ネタバレ込みで

↓ わたしの独断と偏見による

↓ 主に最終章のレビューを書きます

↓ まだ見ていない人は

↓ スクロールしちゃだめよ


(1)白くて強くて美しい女

最終シーズン(Season-8)の最終話の一歩手前で、デナーリスが感情に任せて大殺戮をしでかしてしまった。一部のファンからは、「荒い!」「裏切られた!」「結末書き換えよう!」という声が噴出しているらしい。

その気持ちは分からなくもない。何年もかけてゆっくり育ってきた主役級ヒロインの闇落ち急展開だったものね。

デナーリスは、その別名「カリーシ」(王女)が米国で新生児の女の子のネーミング・トレンドにもなったくらいの大人気だったらしい。

わたしもそうなってほしくなかったが、最終的に、彼女が、誰の目にも明らかなラスボスになった。それが、焼き尽くした王都の灰が雪のように降るシーンで、ドラゴンの翼を背負って、見事に表現されてたよね!ねー!

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多くの作中人物も、視聴者も、その白くて美しい魅力的な外見と、奴隷開放というクリーンな大義名分に引っ張られて、決定的な惨事が起きるまで、まあまあなことをやらかしていても、彼女を信じ続けた。実際には、「わたしに跪くか、ドラカリスか」という柔軟性のなさや王座に取りつかれた姿はそれまでにもちょいちょい表現されていたなあと…振り返ってみるとわかる。

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自分の欲望最優先で他を顧みないところはサーセイと同じなのだが、デナーリスにはその自覚はなく、跪く者には慈悲を与え、我こそ真善美の体現者であると信じていた。だから最後までイノセントなかわいらしい表情で、”なんにもしらないジョンスノウ”にプスッと刺されて、死んでしまった。

ちなみに、デナーリス闇落ちのエピソードを見た直後は、わたしも「ダースベイダーのそれは納得できたけどデナーリスの闇落ちは急展開すぎるなあ・・・」と言う比較が思い浮かんだ。が、追いかけるように、漫画「ベルセレク」のグリフィスも思い出した。

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グリフィスはダースベイダー的な選択肢のなさにより闇落ちするのだが、その結果の白くて強くて美しい姿と一見救世主的な輝かしい行為は、まさに大衆を魅了するデナーリスなのである。しかし、読者はその禍々しい出自を知っている。主人公のガッツ(見た目はこっちが闇)に寄り添う気分はあるものの、グリフィスを捉えかねたままに物語は進む。デナーリスも実はドラゴン誕生の経緯からして禍々しいのであるが、もともと白くて美しく弱っちかった少女が時間をかけて、ある意味の正義を為しながら強くなってきたことで、グリフィス以上にその禍々しさが忘れられた。

彼女の死後、呪いのアイアンスローンは、彼女の子供ともいうべきドラゴンの炎によって溶けてなくなるのだが、デナーリスは、まさにそれを”終わらせる”ために遣わされた設定だったのか、と思った。

(2)黒くて強くて美しい女

さて、こちらは、顔立ちの美しさという意味ではデナーリスに負けない美女設定だったサーセイ。なにしろ最初から分かりやすい悪役で、自分の腹黒にも自覚的だった。

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やることなすことエゴの塊。その底意地悪そうに歪んだ口元で、見事に視聴者の反感を煽っていた。ホワイト・ウォーカーとの死闘が終わってからデナーリスがやらかすまでの束の間は、誰もが彼女がラスボスだと思った。

それまでの極悪非道に照らすと安楽死か!と言いたいような終わりかただったが、振り返ると、彼女はシーズン6で、すでに終わっていた。その人生はまさに生き地獄。すごいバイタリティで悪行をなし、カルマ・リターン・トゥ・ユーな人生パンチで満身創痍、味方もマッド・サイエンティストと改造人間だけになり、それでも「私は、そうするのが気持ちいいから嫌いな奴を殺すし、双子の弟と寝るのよ!」と言い放つわ、最後まで懐胎して「死にたくない」と言うわ、アナ雪も真っ青なありのまま。

適役のオレナ婆さんも相当悪辣だったけど、そちらが正義に見えてしまうくらいしぶとかった。いい悪役だった。

最終話まで見切ってから、死ぬ時くらい、大好きなジェイミーと一緒で良かったと思い直した。安らかに眠れ。

(3)あの死闘の後の掃除力こそが魔法

GOTのなにを絶賛したいかって、いろいろありすぎるのだけど、呼吸が浅くなり心拍が早くなるような迫真のバトルシーンもその一つ。

その集大成とも言うべきS8-EP3はすごかったね!初めから終わりまで。

先発ドラスク人たちの灯が消えて行く様子も、最後にメリサンドルが独りで歩き出て魔法のチョーカーを外して息絶えるシーンも、セリフはないのに映像に揺さぶられた。

推察するに300年かそれ以上は生きていそうな彼女は、死ぬ心構えはとっくの昔にできていて、生と死の戦いを支えて自分は使命を果たしたと思ったのだろう。

なにしろ、ナイト・キングは次元の違う怖さだった。善悪の埒外にある、本能的な、死の恐怖。そして大量のホワイト・ウォーカー。凄まじい悪臭だろう(凍える大地が舞台なのでそんなににおわないのかもしれないけれど)。戦いたくない。会いたくない。

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対して、人間代表の三つ目レイヴァン(ブランの中の人)は無防備きわまりない。そこまで死ねずに生きていたシオンも、最後にブランに「君はいい人間だ」と言われた時に、為してきた悪の総量を善の総量が超えて、死ぬことを許されたって感じだった。

人は間違える、間違えても命は続く、その後の行動は変えられるというのも、このドラマのサブメッセージだったように思います。

もう絶体絶命だったのに、アリアによるまさかの大逆転で、1話でかたがついた。

引っ張られるとしんどかったと思うので、このスピード感も絶賛したい。製作陣は視聴者のバイオリズムまで計算して設計したんじゃないか。

戦いが終わった時に、大量の死体の後始末はどうするんだって余計な大心配をしてしまったが、次のエピソードの冒頭で綺麗におかたずけされていた。生存者、手際がいい。

(4)スターク家の悲願を叶えた女

最後の最後で、長女サンサは北の独立を勝ち得た。

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個人的には、ここがかなりぐっときた。S1で不本意ながらも王の召喚に応じて無残に殺されてしまった父・ネッドへの、何よりの弔いであったと思う。

アイアンスローンの呪いのもと、皆が悲劇に巻き込まれ死んでいった。刺繍が上手でかわいいお姫様になることを夢見ていた女の子は、いろいろな悲劇の連続の中でも柔軟に立ちまわり(そのレジリエンスこそが、デナーリスとサーセイにはない、サンサの強さ)、押しも押されもせぬ女王になった。

デナーリスに対しても北部はまつろわぬ姿勢を示していたのでこの後どうなるのかとはらはらしたけれど、時には無理なことは手放しながらも生き抜いてきた彼女が、それは絶対に譲れないことだったんだなと思った。

なお、「ラムジーのおかげで自分は成長した」というサンサのセリフの上げ足を取って「レイプは女性を成長させる道具じゃない!」とドラマそのものを批判した有名人もいたようだが、それを言うなら、ヴァリスのやグレイワームの言い分にもつっこんであげてほしい。そもそも、ゲームオブスローンズは全般的に悪趣味で残酷な描写の連続なのだ。

”フェミニスト”と言う言葉が本来は正しい主張をする人たちの呼称であるにもかかわらず、時に揶揄的に使われてしまうのは、めりこみすぎてしまってこういう滑稽なこと言う人がいるからなのかと思う。悲惨な体験を経験した当事者がそれを肯定的に捉え直すことを批判するのはナンセンス。加害者が自分の悪行への言い訳として被害者の言を利用することは許しがたいが、禍福糾縄であっても悪いのは加害者。矛先を間違えないで。

(5)一本の草が示す、未来の兆し

そして、ジョン・スノウ。

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彼は最初から最後までやさしくて愚直でスノウのままで(急にエイゴン・ターガリエンだなんていわれても、おらにはそんなもん関係ねえだ、って感じで)、「なんで自分はまだ生きているんだ?」という顔のままで、野人たちと共に壁の北に去っていく。

ご多分にもれず私も彼のファンだった。2回の恋がともに酷い終わりかたであったので、この後幸せになれるといいなと願う。

ちなみに、GOTの演出陣は、衣装一つもないがしろにしません。でっかい毛皮の襟のついたモコモコの防寒服、ステージによって肩幅とか色味とかを色々使い分けていて「はっ、いつのまにか大きくなって…!」という登場人物の存在感の変化を表現するのに、効果的に使われていた。

それからメタファーと言う意味では、彼の一群が北に向かう様子を引きで映した映像の手前にぴょろんと一瞬だけ映る、一筋の草。

壁の北に、草。

なんということでしょう、永久凍土に雪解けが訪れようとしている!?

という、モノトーンに近い映像で、見落としてしまいそうなほどさりげなく、サブリミナル的に希望を刷り込む演出が心憎いではありませんか。

西へ向かうアリアの口元にも笑みがある。メリサンドルに預言された「3色の目の、グリーンを閉じる」ことはまだ成し遂げていない。きっとこの先にも物語が広がるんだね、と思う。

本当に映像・演出が素晴らしかったです。プロットも本質がよく練られていて、多少のご都合的な無理は枝葉末節に思える見事なエンディングでした。視聴者に媚びたハピリーエバーアフターにならなくてよかった!!!

はあ、吐き出してちょっと落ち着いた。...ここに全く名前が出てきていない登場人物にもいろいろお気に入りがあって、誰かとハイライト上映会しながら語りつくしたいくらいなんだけれど、つまり、まだいくらでも書けそうだけど、この辺で終わります。

大満足したので、しばらくドラマ絶ちします。

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