冬の晴れた日

 雪原の上に広がる空は晴れ渡っていた。
 陽光を浴びてキラキラと光る雪も、青空も眩しい。
 空気がキインと冷えている。防寒しているが、唯一露出している頬が痛いくらいだ。
 雪道を歩くと、シャク、シャク、と音がする。気温によって足音は変わるらしい。
「良い天気……」
 空を見上げると、吐いた息が白い煙になって空へ昇っていく。

 どこまでも歩いていきたいと思った。どこまでも歩いていけると思った。
 肌を刺す寒さも、却って嬉しいくらい。
 
 冬の日は嫌いではない。花粉や粉塵のひどい春より好きだ。
 冬は空気が澄んでいるから。
 雪の白も、空の青も、どこまでも透明になっていく。心まで透明になる。
 一番素直な自分になれる。
 死ぬならこんな日に死にたい。

おしまい

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