2024年2月4日(日)の300字小説

「うわあ~、迷っちゃうなあ」
 都内の大型書店に来ている。僕の恋人秋子は読書が趣味で、断然紙派だ。だから部屋はいつもすごいことになっている。いつか雪崩が起きるんじゃないかと気が気ではない。
「あんまり買い過ぎるなよー」
 と、僕がそう言っても籠の中にはもう何冊も本がある。
「えへへ、つい」
「もっと絞ったら?」
「すぐに絶版になったら買えなくなるじゃない。その後悔をするくらいなら、私は散財する」
 堅い決意が聞けたところで、彼女の会計を済ませた本を一緒に持って、カフェに入る。
 秋子が楽しそうに本の話をするのをきくのは好きだ。ずっとずっと楽しそうにしていてほしい。
おしまい

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