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最後の文化祭

今年、娘の学校で文化祭が開催された。

コロナでオンライン配信での文化祭が続いていて、3年ぶりにやっと学校での対面開催となった。
事前に予約した日程で、人数制限あり時間制限ありの開催だったけれど、
それでも通常開催できて本当に良かったと思う。

娘にとっても最後の文化祭となったから。

来年は高校3年生になり、いわゆる受験期に入る。
文化祭には、創作する側での参加は無く、保護者と同じ観覧する側となる。

高校2年生の今年は、中高一貫6年間の中でも特別。

昨年の12月から長い準備を経て、そして中高まとめ役を担う最高学年、最後の文化祭なのだ。

文化祭実行委員の娘は、夏休みにzoom会議を何度もしていたし、2学期になると先生や生徒とのメールのやり取りも頻繁になった。
帰宅後もタブレットを見つめて、何やら考えている日が多かった。

娘の学校は1学年のクラスも多い。中高6学年の全体人数から考えても規模が大きいので準備期間も長くなる。ましてやまだコロナの心配が残る時期。
コロナ対策面からオンライン開催か対面か、色々な問題も含めて開催方法を決定するまでも時間がかかった。

今しかない青春。

この楽しい中高時代をコロナで規制、自粛と縛られてきたのを見ていたので忙しくも楽しそうに準備している様子は、微笑ましかった。

思いっきり、今を楽しんで欲しい。

珍しく勉強は?と聞かずにいれた1ヶ月だったかもしれない。



文化祭当日、母を連れて参加した。夫も一緒に来れれば良かったが、保護者も2名という人数制限付き。母は一度も学校を訪れたことがない。この機会を逃すと今後学校の中に入る機会はなさそうだった。

私の文化祭の一番の目的は、娘の学校生活の様子を見ること。

事前に娘のタイムテーブルを聞いていたので、クラス企画に参加している娘に「来たよ」の合図で顔を見せる。

クラス内の装飾も細かい所まで手が込んでおり、準備期間の大変さが垣間見える。クラスの子達とも楽しそうに笑いながら、担当コーナーの係りをこなしている。

友達との雰囲気も良さそう。

友達や後輩達との写真が何枚もカメラに納まっているのを後に見ることになるのだが、娘の名前が描かれた手作りのうちわも貰っており、意外と人気があるみたい。

先輩らしい一面も見えて、安心した。

廊下の装飾を見ながら母に学校の校舎を案内していたら、小走りの娘とばったり会う。

「今からツアーだから」

そんな時間か!私たちも慌てて後を追いかける。

ツアーとは、受験生向けに校舎内を案内する見学ツアーのこと。

娘が受験生の時に参加して、きれいな校舎や施設に親子共々感動し、私立ってやっぱり綺麗で、私が入りたいくらいと思ったのを思い出す。


「足元、階段ですのでご注意ください」

娘の見学ツアーが始まった。受験生の親子は5組。
同じ時間帯にも別のツアーが動き出している。私達はツアーには参加できないので、さりげなく不自然に距離を置いて付いていくスタイル。

同じマンションに住んでいる受験生のママが、娘の学校の人気がすごくて説明会の予約も数分で埋まると話していた。今回の文化祭枠も予約できなかったらしい。

娘が受験した時は、そこまでの競争率は無かったように思う。この数年で中学受験する人が増えたのか、学校の人気が高まっているのか。在校生としては、人気がある学校の方が嬉しいから、どちらもと思っておこう。


小さな旗を持ち、案内している制服姿の娘。


小学6年生の時、夫と娘と一緒にツアーに参加した時を思い出していた。

案内してくれる生徒さんの後ろ姿を見ながら、夫にこっそり言ったのだ。

「ここの制服を着て、この廊下に立っている娘が見えた」って。

これは本当だ。
スピリチュアルな話とかではなく、本当に感じたというか映像として心の中で見えた。もちろん娘には受験が終わるまでは、伝えなかった。

ママが言ったからこの学校にした、なんて言ってほしくない。先入観無く、自分で行きたい目指したい学校を決めて欲しかったから。

文化祭から帰る道で「この学校が一番行きたいかな」と娘が言った。
他の学校の文化祭にも行っていたけれど、何となく娘には合わないような、しっくりこないような、ピタっとはまる何かが無かった。

でもこの学校は、違った。イメージできた、という方が正確なのかもしれない。

その日、娘の第一志望校が決まった。

最初から憧れ校がある場合はまた違うと思うが、娘のように受験校が決まっていない場合は、学校との相性というか子供に合う雰囲気のようなものを感じられる学校を選ぶのがいいのではないかと思う。

受験することは、学校に通うための入口であって入って終わりではない。


「こちらは、カフェテリアです」

「お弁当はここで食べるんですか?」

質問にもしっかり受け答えしているようだ。大きくなったな。
立派にこの学校の生徒として立っている。

旗を持ってツアーの先頭に立つ後ろ姿を頼もしく、そして嬉しく感じた。

5年前に浮かんだ制服姿。その制服を身にまとい説明している姿が、ぴったり重なった光景を今年は目に焼き付けて帰って来た。



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