見出し画像

謎の種が送られれてくることで思い出したもの@繁栄の花

 身に覚えのない「種」が中国から送られてくるというらしい。不気味だなと思ったのと同時に、星新一の「繁栄の花」というショート・ショートを思い出した。

 ざっと「繁栄の花」のあらすじとしては、ある日突然宇宙人がやってきて植物の種子をくれるところからはじまる。

 軍隊を持たず、植物などを輸出して穏やかに暮らすメール星人。ある日、地球と交易したいといって特産品「繁栄の花」のサンプルを送ってきた、と。とても美しい花だったので地球人はこの花を勝手に増やしていきます。いたる所でこのキレイな花が咲き乱れ人々はハッピーになりますが、この花には不思議な特性があり、どうやっても枯れず、つまりは増え続ける一方。まさに地球中がこの花で埋め尽くされる勢いで増え続けるわけです。そこへ、先のメール星人が再び現れてこう言います。「花を枯らすには、メール星にしか居ない花を食べてくれる蜂が必要で、その蜂が必要なら我々から定期購入してほしい」。結果的に、メール星人優位の貿易を提携せざるを得ないという話になります。地球人は未来永劫その蜂を輸入し続けるしかないのです。つまり、この花はメール星人が繁栄するために名付けられた花だったということがわかって、オチという話。

 メール星人は軍事力のない平和主義で非暴力的な設定なのだが、武力よりも知力、戦略が勝るというメッセージも含まれているように思う。おそらく「繁栄の花」が書かれたのは1963年頃で、キューバ危機やベトナム戦争に対する皮肉もあったと思う。

 きれいな花が咲くという一見ポジティブにしか思えない事柄が、どうしようもない、取り返しのつかない負の要素を孕んでいることもある。この謎の種が、誰かの一方的な繁栄に繋がらなければいいなと思った。

 最後に、この「繁栄の花」という話は中学の国語の授業で習ったのだが、そのときの教科書の挿絵も印象に残っている。主人公であるメール星人のイラストだ。そもそも僕はこのメール星人のイラストが一目で好きになって、以後星新一を読むようになったし、「繁栄」という日本語をしっかり頭に焼き付けたという思い出もある。が、その後これだけネットでありとあらゆる画像が拾えるようになっているにも関わらずメール星人の画像、教科書のキャプチャ画像を目にしたことがない。非常に残念である。ちなみに僕の記憶の中のメール星人はこんな感じです。多分だいたい合ってるはず。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?