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【MBA小論文】横浜国立大学H30の問題から考えるイノベーション論①

H30に出題された横浜国立大学の問題を題材にイノベーション論について考えてみます。

問題は上記のリンクから見ることができますが、概略は以下のようなもの


オーストラリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションを“新結合”として定義した。(中略)このシュンペーターの議論を踏まえて現実の社会において起こったイノベーションの事例を以下の4点に言及しながら説明しなさい。
1) 誰による、どのようなイノベーションであったのか
2) 具体的に、どのような要素の結合であったのか
3) そのような新結合をもたらした要因はなんであったのか
4) 反対に、(当該事例に限らず)そのような新結合を起こりにくくさせてい要因とは何か?


この問題を通じて、イノベーションについて知識を整理していきます。
普段、私たちが何気なく使っている言葉をチクリと刺すような問題だと思います。

「イノベーションの程度」を理解しないまま語ってしまいがち。イノベーション論のルーツを探る

「新しいアイデア」が求められがちな昨今、誰もが簡単にイノベーション論を語っています。しかし、我々はイノベーションについて、本当に理解しているのでしょうか。例えば、イノベーションの”程度”をどの程度まで求めているのでしょう。ゼロから新しいことをやるのか、あるいは部分的に少しだけ新しく変えるのか、イノベーションには程度があります。それに加えて、そのイノベーション”はプロダクトのことなのか、製品開発までのプロセスのことを言っているのか、ごちゃ混ぜに話していることが多々あります。

シュンペーターの定義

問題文にも書いてある通り、シュンペーターは1920年代に”イノベーション”を定義づけしました。定義は以下の5つ。


1.全く新しい商品であること
2.全く新しいやり方であること
3.新しいマーケットを探すこと
4.新しい素材を発見すること
5.新しい組織であること

上記に加え、これらが「非連続的な変化」であることが求められます。
この5つを踏まえれば、横浜国立大学が出題した問いに答えることができるでしょう。ちなみに私はこう考えました。

答案)
具体例「ネスプレッソ」

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1) 誰による、どのようなイノベーションであったのか
⇒ネスレによるネスプレッソのイノベーション。ネスレによる直販ルートを用いて販売した。従来はレストランやホテルでしか楽しめなかったエスプレッソをオフィスや自宅で楽しめるようになった。

2) 具体的に、どのような要素の結合であったのか
⇒コーヒーマシン+カプセル

3) そのような新結合をもたらした要因はなんであったのか
⇒新市場(・エスプレッソ市場・高級コーヒー市場など)の拡大


4) 反対に、(当該事例に限らず)そのような新結合を起こりにくくさせてい要因とは何か?
⇒既存事業への「組織最適化」問題
具体的には
・新技術&新ビジネスモデルは市場予測ができない⇒投資決定の遅れ
・既存事業も人や資源を必要としている⇒新事業への人・資源の配分不足
・組織の既存人事制度や評価基準が合わない

(※上記3点は根来龍之『集中講義デジタル戦略』より引用)

1)~4)を踏まえ、ネスプレッソは従来のコーヒー消費を飲み方(※フィルター+コーヒー豆で淹れるないし、缶コーヒーで楽しむ)と直接ルートを採用する(※従来はスーパーマーケットなど小売りルートを採用)など非連続的な変化があった。

いかがでしょうか。しかし、今回はもう少し深掘りします。

クリステンセンの定義


シュンペーターの理論を踏まえ、クリステンセンは、『イノベーションのジレンマ』のなかで、イノベーションを技術面から解釈します。彼によると”技術”と”イノベーション”の定義は以下の通り。

技術・・・組織が労働力、資本、原材料、情報を、価値の高い製品やサービスに変えるプロセス
イノベーション・・・技術の変化

上記の前提に合わせて、シュンペーターはイノベーションを”持続的イノベーション”と”破壊的イノベーション”に分けて考えました。(以下はクリステンセン他『明日は誰のものか』より引用)

持続的イノベーション・・・製品やサービスの内容を既存のものに比較して向上させることにより、企業を既存の性能向上の軌跡に沿って成長させるイノベーション
破壊的イノベーション・・・
1)本流のマーケットにいる顧客には使いこなせないイノベーション。既存のイノベーションに対して性能面で新しい特徴を導入することによって、今までにない性能向上の軌跡を設定する。
2)無消費者に対して新しい機能特徴をぶつけることにより新しいマーケットを創造するか、あるいは既存のマーケットのローエンドにいる顧客に対してそれまで以上の利便性か低い価格を用意する。

と、ここまで書いてきました。このままヒッペルのユーザーイノベーション論からブルー・オーシャン戦略までを解説しようと思ったのですが、実はここで別の設問につながることがわかりました。というわけで続きは次回。


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