これといったオチはないのだが

「あなたは幸せですか」
絵に書いたような白髪の頭と髭の男性から
正面切って、大声で聞かれたことがある

一瞬怯み、カルトならまずいと
「分かりません」と逃げようとすると
「瞬時に幸せと答えない人に幸せは来ない」と
これまた大声で言われてしまった

24歳の秋、小さな美術館にて

内心「余計なお世話だ」と思い
駆け足でその場を離れたのだが
後から
その白髪の男性が美術館に華を添えた画家と知り
大変、驚いたことがある

名前は忘れたが
なぜ画家は私に声を掛けたのか

24歳といえば、楽しい盛り
周りがぼちぼち結婚する中、大きな悩みはなく
気の向くまま生きていた

24歳の私は写真で見ると、茶色の髪を緩くウェーブ
下着が見えそうなぐらいのミニスカート、量産系
青白い顔は、幼く儚いより薄幸そうだ

確かに、あまり食事はせず
24歳から暫くは一切の飲酒もしなかった
何をエネルギーに生きていたのか思い出せない
外野からは、覇気のない子に見えたのだろう

別の切り口で幸せかと訊ねられたら
幸せだと、言い切る自信はなかったかもしれない

これと言ったオチはないのだが
美術館、それも大きな声で
「幸せですか」なんて聞かなくていいじゃん
なんて、可愛げのない私は今でも思う