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『ドイツの思い出、半熟卵2023』

   すごく久しぶりに半熟卵が食べたくなった。
よく、ラーメン屋などで
”無料”と書いてザルに入ったゆで卵が
テーブルに置いてあるが
食べようと思ったことは一度もない。

それがどうしたことか
昨日あたりから”あの半熟卵”が食いたくなった。

”あの”と言うのはドイツ生活をしていた
”あの時代”の半熟卵だ。

もう、50年ほども前のことだ。
すっかり大昔のことになった。
es bar einmal(昔々、あるところに)だ。

よしえさんが倉庫にしてる部屋から
あの頃のエッグスタンドを探し出してきた。
「おお、これは懐かしいな」
まだ元気でいたのだな。

塩と胡椒ミルも出てきた。
どれもあの頃のケルン(ドイツ)で手に入れた物だという。
久しぶりに見るこれらはいい感じの飴色になっている。
買った当初は白木だったのだ。
年月がこのしっとりとした色合いにしたのだろうか。

1970年代にドイツ・ケルンで買ったもの。飴色になっている。

 ケルンでの音楽生活はとても楽しかった。
音大生だった頃はKlettenbergの寮にいたのだが
食事は全て自炊だ。

だから、勢いみんなの朝食は
出来るだけ簡単にドイツパンとハムにチーズ、
そしてコーヒーでOK!!が定番なのだが。
俺はそれにサラダと半熟卵をつけて
ベートーベン・パークに続く庭を眺めながら
のんびりと食事するのが大好きだった。
「ああ、俺はヨーロッパで生活してるんだなあ」
そんな気分を味わっていたかったのだ。

ま、それも最初の1年目くらいだったな。
オペラハウスや教会からの仕事が来るようになると
日本のオケではやったことのない曲ばかりなので
朝起きたらドイツパンにハムとチーズを乗せて
フォークとナイフで切り刻みながらカフェオレを
ガブ飲みしたら、大急ぎで部屋に戻ってさらう(練習)のだ。

だから、
ケルンでの2~3 年目は半熟卵をボイルして
エッグスタンドに立てて庭を眺めながら、、、。
なんてえ生活はどっかに行ってしまった。

それも、4年ほどすると
すっかりケルンの生活にも馴染んでしまい。
オペラのレパートリーも教会での曲目も
大体を把握できるようになっていた。

オペラハウスはワグナー、モーツァルト、R.シュトラウス、ベルディ、
たまに、ベルク「ヴォツェック」やヘンツェなどの現代物。
教会ではモーツァルト「レクイエム」、バッハ「カンタータ」、
あとはオルガンとトランペットの演奏だ。
これは自分から曲の提案も出来たので楽で楽しかった。

そうなると気持ちも時間にも余裕が出てくる。
すると朝食に。
そう、サラダと半熟卵が久しぶりに登場してきた。
そんな頃、よしえさんがケルンの寮にやって来たのだ。

これは今朝のサラダ。当時はサラダ菜(Kopfsalad)とニンジン位だった。ドレッシングもオリーブオイルとワインビネガーをサラダに回しかけて食っていた。今は贅沢になったもんだ。

俺も歳をとったと言うことなんだろうか。
(この稿は、歳を重ねた。というほどの話しではない。)
時折、ふっと
ドイツでの生活を懐かしく思い出す時がある。

昨日がそうだったのだ。
何やら、ドイツ時代の味が懐かしくて
さっき半熟卵をスタンドに立てて食った。


トロ〜リと半熟卵。


立てた卵の頭の方はナイフでゴリゴリと切る。
そして塩や胡椒などふりかけて
小さなスプーンですくって食うのだ。

美味い。
あははは、
あのクレッテンベルクの寮時代を思い出す。

あれから、
帰国しての俺は音楽界での関わり方が随分と変わった。
一度はオーケストラの仕事も受けていたのだが
どうも日本のオケに馴染めない耳になってしまっていた。

それで、
今では亡くなった兄の残したエアジンを引き継ぎ
すっかりと演奏家からプロデューサーへと変貌している。

まあ、どちらの立場も楽しい日々だ。
そして、最近では
『ライブ配信』などという仕事も増えた。

とにかく、色々とやることは多い。
ま、「得意なこと」と「頑張らねば」のことはあるが、
相変わらずのんびりとガンバって楽しんでいる。

遂に、
あのエッグスタンドが出てきたのだから
明日も半熟卵付きの朝食だな。

さあて、
今日もエアジンへ行くぞ。

  うめ。2023.6.8
・・・・・・・

ライブハウス
『横浜エアジン』公式HP.
https://www.airegin.yokohama

茹で時間をネットで確認。笑
ごちそうさまでした。







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