「土産話」みんな聞いてほしい

先日、Creepy Nutsがフルアルバム、「case」を発売した。すでに既出曲が六曲あり、それってどうなん?って思っていた。アルバムとして聴けるのか?と。ところがこれがえげつないアルバムになっており、全編解説した文章を書く気満々だったのだが、ラストの「土産話」だけでクタクタなってしまった。ということで「土産話」の感想をぶちまけていきつつ、好きな韻も書いてきます。





なぁ相方、大事になったな
わりと大事になったな

まずはこのパワーワードから始まる歌詞。これは、今のCreepy Nutsの現状を俯瞰的に見てるので、ファン心理として絶対泣けるようになってる。ずるい。




そしてここから、2人が結成した新大久保での話を"シケた結成秘話"と表す。シケてるしインタビュアー泣かせだし何回も話してるのに秘話なの、最高な言葉遊び。


上板のワンルーム大晦日
ガキ使見ながら食うドミノピザ
ライムスター武道館DVDの裏
眺めながら話してたもしもが…

そしてこの固有名詞の嵐。作品で固有名詞が多めに出てくると、一気に身近に感じ感動しやすくなるのは人間の性ですかね。年末、R指定がDJ松永の家に泊まり2人でピザを食べたのが情景としてパッと浮かぶし、かつ最後に匂わせる感じ最高すぎる。
上板とガキ使(aiia)も踏んでます好き。



振り返れば
イカれた土産話が溢れ出る山のように
俺に言ったって
お前に言ったって
ウソみたいと鼻で笑い飛ばしそうなstory

当初この曲のタイトルは「踊り場」だったこと、そしてR指定もラジオで語っていたことから、今一度、今までの歩みを振り返る歌詞になっている。至る所で、R指定は自分の人生は突飛なものではないので、歌詞になるようなことではない。と語ってきた。しかし、Creepy Nutsとして活動してきたこの数年を振り返ることで歌詞になることを証明したのがこの楽曲であることは間違いない。




沈む覚悟で乗り込んだフリースタイルダンジョン
回り始めた歯車の音
例のふたりとダブらしたたりない所

UMB(MCバトルの大会)で3連覇してもワンマンはガラガラ、当時バトルで有名だったからといって曲が売れるわけでもライブで客が入るわけでもなかったこと。そしてフリースタイルダンジョン(MCバトルの番組)で世間の認知度がかなり上昇したこと。「たりないふたり」というアルバムを発売し、山里亮太と若林正恭に見つかり今に至るまでのつながりができたこと。これらの出来事が二人にとってあっという間で、”噛み締める間も、味しめる間も”なかったことを、”やっと生業”と認められること。これらすべてを含めて、

今じゃ誰も思わねえ俺たちを助演と

というパンチラインに繋がる。「助演男優賞」は、彼らの代表曲として長らく使われてきた曲である。それをここまで真正面から言及するのがあまりにもかっこいい。
あと、"噛み締める間も 味しめる間も"(aiieuao)で韻踏んでるの好きすぎる。



バトルじゃなくワンマンで埋めたリキッド
zepp tokyo 新木場コースト

言わずもがなLIQUID ROOMはUMBが開催された会場。zepp tokyo、新木場コーストはフリースタイルダンジョンの会場。UMBで三連覇しても売れなかった時代を経て、歯車が回り、これらの会場がワンマンでsold outするにまでなる。





ここから怒涛のふりかえり激エモゾーンに入るのでバーっといきます。


お前が誘導のバイトしてたフェス
俺ら今トリ前でかましてる
この人の前ではただのヘッズ
そんなキングとバースを分け合ってる

DJ松永が誘導のバイトを2015年にしていたDEAD POPに今年、アーティストとして出演したこと。(泣ける。)
RHYMESTERと一緒の舞台で歌ったこと。(文脈ラップとスクラッチ最高でした。)



擦るその指は世界奪ってる
大きな玉ねぎの下に立ってる
見上げた客席が円になってる

DJ松永がDMCで優勝して世界一になったこと。
武道館でワンマンライブを行ったこと。
”大きな玉ねぎの下”とは、「たりないふたり さよならver.」でR指定がオードリーのことを”あの大きな玉ねぎの下 2万人集めたコンビ”と形容したことから武道館と解釈できる。”客席が円になってる”のも、武道館ならではなので。



「書くことがねぇ」嘆いてた人生
振り返るだけで歌になってる

これは先述のとおり、人生をふりかえっただけで歌詞になるようなラッパーではないけれど、活動を始めてから今までを振り返ってみると歌になっていたこと。



なぁ相方、じゃこの先は?
ホールにアリーナ? またデカい山
ガキ使にピザ? カウントダウン紅白
まぁ今年も年末空けとくわ…

そして最後、この先を占うような歌詞。紅白なのかなんなのか。もっと大きい場所を目指すのか。そして冒頭の"もしも"につながる感じも曲として一貫性があって好き。




ここまででも、正直泣けるポイントだらけで、言うなればR指定からのDJ松永とファンへのラブレターとしか思えない。
これを受け取ったDJ松永が最後スクラッチで

マイク1本で形勢逆転
俺の格言 地で行く危ねえヤツ

を入れてきた。これは、R指定のソロアルバム「セカンドオピニオン」に収録され、トラックをDJ松永が担当した「R.I.P」のサンプリングである。こんなの絶対泣く。ここまで振り返っておいて最後に昔二人で作った曲のサンプリングなんてズルすぎる。当時のR指定が綴った”マイク1本で形勢逆転”がこの曲の歌詞全てを含んでいて今この歌詞を引っ張り出してきたDJ松永に踏みつけられた。天才。



やっぱりR指定は、韻を踏んでなくても踏んでるように聴かせる技術があるから、もしかして全部踏んでる??ってなる。
DJ松永のトラックも、毎曲毎曲明確にイメージがあるかのように種類が変わるので聞いてて楽しい。聞いてる人を飽きさせないという点では、使える楽器が限られていないことを踏まえても飛び抜けている。


最後に

ほんとは「俺より偉い奴」のトラックが風の又三郎みたいなこととか、15才の歌詞が希望でしかないこととかもっと書きたいことはあるけど今回はこの辺で終わり!
雑誌、MUSICAでかなり詳しく二人が語っているのでおすすめです。
これまで書いたことは私の邪推、希望、全てまぜこぜでしかもかなり浅い知識なので間違っていることも多いと思いますがおおめに見てもらえるとありがたいです。ではまた。