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避難所

冷たい雨。

気を抜いたら
道を間違え いつのまにやら遠回り。
凍えた身体を 緩めたくて。
目についた喫茶店に飛び込んだ。


小さな空間に 
みちみちと人が詰まっていた。

ゆっくり過ごしたいときには
出直すところだけれど
凍えたわたしには あまり時間もなく
次の用事までに 少しでも復活したかったのだ。

カウンターの隙間に収まる。

年配の女性が
なんでもないことみたいに
さらりと淹れた珈琲が すぐさま届く。
カップで凍えた手を温めながら
今日 はじめての珈琲を摂取する。

ふー。
身体が だんだんと 緩んでゆく。

隣の常連らしき お客さんとの会話が
聞くともなしに 流れてゆく。
カウンターに飾られた小さな飾りが 
照明に反射してキラキラしている。
柱に貼られた絵なのか写真なのか
女性の横顔?が妙に気になるけれど
覗き込む図々しさはない。
あの前に座った人だけが 見つめられるのね。


ふー。
頭痛は まだ こびりついている。

頭痛の理由を 考えてもみるけれど
考えたところで 治るものでもないのだから。
そう。
自分の心身に聞いてあげることは大事だけど
どうにもならないこともある。
こうして 避難所に逃げ込んで
少しひと息つけばいい。
大丈夫。

束の間の滞在。
こんな 避難所みたいな 関わり方もある。

もしも
また近くに来たならば
気になる彼女の前で
甘いものでも食べながら
もうちょっと ゆっくり過ごせたらな。


強張りが いくらか緩んだ身体で 外に出ると
雨は 上がったようだった。


頭痛も一緒に。
さて ゆくか。

サポートしていただけたら とっても とっても 嬉しいです。 まだ 初めたばかりですが いろいろな可能性に挑戦してゆきたいです。