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ペインティング作品「彼女の家までの残りの道を歩いた」

夜のバイパス沿いの風景を描写した「彼女の家までの残りの道を歩いた」acrylic on panel 841×594×30mm

という作品。


わたしは夜の世界をこよなく愛し、孤独だけどどこかホッとするそんな感覚を楽しむことがよくあります。
アトリエの近くに実際に海沿いにバイパスが走っていて、そのバイパス沿いの細い歩道はとても心が落ち着くのです。
その道を歩いていると頭上だった道路は、だんだんと目線に近づいてきて、バイパス越しに海の風景も重なってくる。
そしてちょうど開かれた先にはパーキングエリアがあり、ライトなどで照り出されている。
孤独であり、寂しさであり、でも守られているような夜の海辺の景色。
ここにこそ、人の心の奥の感覚を刺激するものがあるのかなと思ったり。

タイトルの「彼女の家までの残りの道を歩いた」
その先の小さなストーリーではこんな風に表現をしています。
《 ストーリー 》
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✦彼女の家までの残りの道を歩いた


家を出て国道を走る、細い路地を海に向かって通り抜けると海沿いを走るバイパスに沿った裏路地だった。この頃には僕の体は隅々まで温まり、どこまでも走れそうな感覚になる。
バイパスは擁壁の上を走っていて、その路地を走り続けるとだんだんとバイパスの位置は目線へと下がってくる。ちょうどその辺りまで走ると僕の肺は激しく膨らみ限界を超える。

立ち止まると、目の前のバイパスには右からも左からも光の羅列がひっきりなしに通り過ぎていた。
僕はかがみながら膝に両手を当て、車の流れを目で追った。
どんなに調子が悪くても、どんなに調子が良くても僕はここで必ず止まる。
きっと僕の無意識はここで止まることを望んでいるんだな。自分の肺にそう問いかける。
肺は屈託のない膨張を繰り返しながら「そうだよ」と返事をした。
言葉が聞こえたわけじゃないけれど、確かに肺はそう言った。
次はビールを持ってあの子とここで乾杯をしよう。
それが今の僕にとって最善のアイデアだった。
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この時に主人公は、何を思い何を考えたのか。
どこか話のつじつまが合わないような、思いを感じるかもしれませんが、その足りない部分を補おうとする時に見る人は自分の心の奥に降りていくのです。
絵とタイトルとこのストーリー。それを一つの世界として眺める時に、見る人は何を補間して、何を想像するのか。この絵を見ながら、もう一度このストーリーを読んでみてください。自分だけの心の奥の記憶の世界が浮かび上がってくるはずです。
見る人だけの直感で、このストーリーを自分のストーリーに書き換えていく。その時、その見る人の心の中で何が起こるのか。その起きたことで人生を驚くべきスピードで前へと進ませます。

この停滞感を伴った今の日本の空気を、アートと接することで思い起こされる忘れていた感覚で、再び新しい人生のスタートを切ってみることもできると思います。

アートとの暮らしの中で、新しく、そして元々持っていた人間の力を引き出その感覚を味わう。ストーリー、文脈、記憶、これもアートを楽しむ一つの方法です。

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この作品はベニヤパネルに描かれており、側面にも丁寧にペインティングされています。
額に入れずともこのままお部屋に飾ることも可能です。
額を使わない、パネルでのペインティングは、欧米などではこのようなスタイルが一般的であります。
ガラスやアクリル板などの保護装具を通さず、直接アートのライブ感を肌で味わうこともとてもオススメです。

それでは今日も良い1日を。
https://www.4410art.net/


イラストレーターと塗装店勤務と二足のわらじ+気ままな執筆をしております。サポート頂けたものは全て大事に制作へと注ぎます!