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力強く夜が明けるシーンを描く

力強く夜が明けるシーンを描いたアート。
https://www.4410art.net/
自分が足を止めたくなるようなアートは、自分の内側に意識を向ける力があります。
そして言葉を合わせることにより、さらにずっと心の奥にある記憶や感情を感じられるようなところまで連れて行ってくれる、
不思議な力があります。
五感でアートを楽しんでいただきたくて、わたしはタイトルの他にもこうしたストーリーを作品から感じ取り、言葉にしています。

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《ストーリー》
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✦旅

この窓から見える景色が見たかったから、僕らは毎年夏になるとこの部屋まで旅をした。
窓の先にはホテルにしては珍しく大きなテラスが付いていた。
テラスはそのままプールになっていて、そのヘリは水の中で角度がついていたから、プールのヘリと遠くの海とが境目もなく一体となった。
それ以上にこの窓辺は、夜明けの景色が水に映りとても美しく輝く。
大好きなお酒もここでは飲まず、彼女と向かい合い、ただおしゃべりを楽しんだ。
夜も深くなると、どちらかがうとうとしてくるので交代で仮眠をとった。
僕は椅子にもたれながら目を閉じた。
ぼんやりと鳥の鳴き声が聴こえる。
すると彼女が僕の肩を叩き目が覚めた。もう既に窓の外は白んでいた。
「くるわ」
彼女がそう言ったあとすぐに、金色の帯のエネルギーが現れ始めた。
ここで僕らは初めてビールのプルタブをひねる。
僕らは何もしゃべらず、ただその夜明けに目を奪われた。
彼女は僕の方を向くと唇の端を上げた。
僕は彼女の大きくて艶のある唇が好きだった。
その唇の存在は、僕の今までの後悔を全てなかったことにしてくれているようにも思えた。
彼女が微笑むと、誰だって今ここに居ていいんだ。という自信に満たされるはずだ。
僕は立ち上がり、彼女の隣に椅子を置いた。
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イラストレーターと塗装店勤務と二足のわらじ+気ままな執筆をしております。サポート頂けたものは全て大事に制作へと注ぎます!