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夏の甲子園、2つの安心感


昨年で100回目を迎えた夏の甲子園。令和最初の夏の大会も、今日の試合でベスト8が出揃う。どこの学校が優勝するのかは誰も分からない。

「野球は9回裏2アウトから」と言われる言葉の通り、どんでん返しな展開が起こることがある。強豪校・優勝候補とささやかれていた高校が負けてしまったり、知名度が高くない学校が最後まで残ったり、”まさか”の展開が待ち受けている。両校の思いを想像すると胸が熱くなる。試合では勝者と敗者が決まるけれど、(もう全員優勝にしてあげてほしい…)と言いたくなるのは彼らの年齢をとっくに追い越したからかもしれない。

甲子園という場を通して、高校生たちの人生の節目を見ることになる。冠婚葬祭と呼ばれるものに入らないけれど、甲子園は間違いなく彼らが過ごしてきた生活の大きな節目になっているに違いない。選手はもちろん、応援している生徒や親にとっても同じだろう。陳腐に聞こえてしまうけれど、出会うことのない人たちのドラマが、一人の人生が垣間見える、これは甲子園ならではの特徴だと思っている。

誰かが生きている場面を切り取っているものが好きだ。テレビで活躍している芸能人たちのオフの姿とか、イベントの裏側とか、憧れのクリエイターさんの1日の様子とか。NHKのドキュメント72時間も好きだ。3日間同じ場所で撮影を行い、その場所で出会った人たちにインタビューをするこの番組。

「なぜこの場所に来たのか」を聞くことが多いんだけど、そこから彼らの生活やバックグラウンドが見えてくる。悩みを抱えた人や深い事情を抱えた人も登場するけれど、その後どうなったのか知ることはない。その場所に訪れた人たちの現実を見る。そこからは自分の想像力に身を任せる。身を任せたところで、どうにかなるわけでもないんだけどね。

知らない誰かの生活を見ることもこの番組の魅力だが、もう一点好きなポイントがある。それは自分のことを全く知らない誰かがいる、言い換えれば、自分のことを見てくれている人がいるということ。どちらの事実も安心感がある。思っていた以上に周りは自分のことを見ていないし、反対に見てくれている人は誰なのかを認識することができる。

周りの目は気にしすぎなくていい、ただし自分のことを大切にしてくれる人の言葉には少し耳を傾けること。SNSが普及したことで友達の概念がより曖昧になった今、このことを頭の片隅に置いて過ごしたい。そして、できたら自分が大切にしたいと思う人たちの人生の節目を、自分の目で見届けたいと思う。甲子園の中継をしているラジオから大きな歓声が聞こえた。



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