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No.17 高田みかこの好きな屋久島〜下を向いて歩こう〜

屋久島のフェリービルディングで、「一湊珈琲焙煎所」を営みつつ、記事の取材執筆や単行本の編集をしています。

今回は著書『Hello! 屋久島』(アノニマスタジオ)には、遠慮して書けなかった極私的「私の好きな屋久島」を。

それは、コンクリート。
中でも、昭和のコンクリート。
コンクリートが好きすぎて、今のフェリービルディングに移転してきたといっても過言ではありません。タイル貼りの床や、ひんやりとしたらせん階段に毎日うっとりしています。

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つるんとしたぜいたくなビルもいいけれど、屋外の堤防や道路のごつごつとしたコンクリートもまた良し。下を向いて歩いていると、年代や目的によって、骨材(混ぜもの)に違いがあることがわかります。

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新しいものは砕かれて間もない砂利や粒子の均一な砂、古いものには河口で水に揉まれて自然に角が取れた不揃いの石。そして、海辺ならではの骨材が、サンゴと貝殻とシーグラス。ざっくりと適当に作られたものほど、これらを見つけることができます。ひとつの堤防でも、増築や修繕など、コンクリートの年代は部分によってまちまち。より古い場所を探しながら、堤防をとぼとぼ歩くさまは、確実に不審者。
たまには、コンクリートの隙間に茂るど根性グリーンの写真を撮ったり、海をのぞいて魚を撮って、怪しさカモフラージュ。

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旧道や林道にかかる橋も観察しがいのあるスポットです。
中でもシンボリックなのが、昭和5年架橋の「宮之浦橋」。来年、制定から100年となる「屋久島憲法(屋久島国有林経営の大綱)」の名残といわれる。「森は誰のものか」という島民の長い闘いの歴史の末に、時の政府から勝ち取った「屋久島憲法」。ここに記された「島の周辺を連結する道路についても〈中略〉費用分担上相当の考慮を加うること」によって、架橋されたといわれています。

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今の県道にかかる宮之浦大橋が開通してから、歩行者専用となった「宮之浦橋」は、取り壊されることなく、「古橋」と呼ばれ、夏の夕涼みや釣りスポットとして、地元で親しまれています。長年の雨風で洗い出された黒光りする玉砂利は、粒ぞろいで、この橋にかける当時の人々の期待を感じさせます。

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猫の足あとや子どもの落書き付きの私道、コンパネがない時代に型枠として使われた杉の木目、ほんの少し前に暮らしていた先人たちの熱々の気配。まだまだ語りたいとこはたくさんあるけれど、今日はこの辺で。


一湊珈琲焙煎所
https://issou-coffee.com/

Hello! 屋久島
https://www.anonima-studio.com/books/travel/hello-yakushima/


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