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自然と建築、アートが融合するルイジアナ美術館inデンマーク

ルイジアナ美術館は、デンマークのコペンハーゲン近郊、フンメルバエクにある現代美術館。
私は2019年5月にこの美術館を訪れましたが自分にとっては楽園でした。

1958年に開館したこの美術館は、海に面した美しい自然環境の中に位置し、20世紀後半から21世紀の現代美術作品を中心に展示しています。

ルイジアナ美術館を訪問して感じたことは、美術作品よりも美術館の展示のあり方に感動することがある、ということでした。

ルイジアナ美術館の位置するデンマークのフンメルバエクは、エーレスンド海峡(Øresund)に面しており、この地理的特徴は、美術館の魅力の一つとなっています。日本だとベネッセの地中美術館や大塚国際美術館とロケーションが似ています。

ルイジアナ美術館の設計を手掛けたのは、デンマークの建築家ユット・ボー(Jørgen Bo)とヴィルヘルム・ウォルセン(Vilhelm Wohlert)です。1958年の開館以来、美術館は数回にわたって拡張されていますが、これらの拡張作業もボーとウォルセンの監督のもと行われたそうです。
彼らの設計は、自然光を最大限に活用し、周囲の自然環境と調和するよう配慮されているそうで、美術館自体、階段を上がったり下がったりする構造ではなく、割とフラットでした。

ルイジアナ美術館の中庭からエーレスンド海峡を望む



自然光の効果は素晴らしく、鑑賞環境としての美術館では、間違いなく自分が今まで訪ね
た中ではダントツでNo. 1でした。
周囲の自然環境との一体感を保ちつつ、デンマークの素晴らしい照明やインテリア、そして作品展示が三位一体となり心地よい空間を作り出しているのは、あっぱれのひと言につきます。 
優れたデンマークデザインは沢山ありますが、照明器具のデザインは世界一だと思います。
自然光にせよ照明にせよ、光に対するリテラシーが高すぎる。ただ明るければいいとは微塵も考えていません。

ルイス・ポールセンの照明がならぶ廊下


特にアルベルト・ジャコメッティの彫刻作品は大きなガラス窓のあるスペースで作品を鑑賞でき、
まるでジャコメッティのアトリにいき、作業している作品をみているようでした。自然光で作品を鑑賞することは随分な臨場感があるんだと体感しました。

ジャコメッティの彫刻やクロッキーを鑑賞できるスペース


中庭とオブジェ


美術館の庭園には彫刻作品が展示されていますが、庭園が本当に素晴らしかった。日本ではあまり見かけない木々が植えてあるのも見ていて楽しかったです。

自然と建築の組み合わせだけでも感動的なのに、コレクションには、ピカソ、アンディ・ウォーホル、アンリ・マティス、アルベルト・ジャコメッティ、ヤヨイ・クサマなど、国際的に著名なアーティストの作品が含まれています。定期的に特別展覧会も開催されているようです。

美術館にはカフェとレストランがあり、訪問者は美術鑑賞の合間に、美しい海の景色を眺めながら食事や休憩を楽しむことができます。

エーレスンド海峡を観ながらスケッチする人々。同じエリアにカフェがあります。


日本にもルイジアナ美術館に負けないくらい風光明媚な所はあるはずなのに、芸術、建築、そして自然環境が完全に調和した空間を提供し、豊かな芸術体験を与える美術館が少ないように感じました。ルイジアナ美術館のコンセプトのような芸術鑑賞体験は、これから観光に!と国をあげて推進している日本にとって、あるべき姿ではないでしょうか。

ルイジアナ美術館が開館した1958年は国立代々木競技場第一体育館(丹下健三)と東京タワーが竣工した年で、日本はまさに高度経済成長への過渡期をむかえていました。ファッションデザインでは「トラペーズ(台形)・ライン」をディオールにいた若きサンローランが発表した年でもあります。現代美術では、ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコが活躍していました。
いずれも今みても古さを感じないのは1950~1960年代の芸術や文化が普遍性をもっているからかもしれません。

出入り口ほか館内にはルイス・ポールセンの照明が。
自然光で灯りいらず
企画展の最後の展示室にはエーレスンド海峡を臨む大きな窓
自然光が美しい

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